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宇宙人ビンズと超磁石戦士ザンジェット

この物語は、惑星テコヘンがありとあらゆる星々を調査するために結成した「惑星調査団」に所属する能天気な宇宙人ビンズと、その友ベーリッヒの活動報告である。



超磁石戦士ザンジェットのテーマ

作詞・作曲 ザンジェット

遥か遠くの銀河より 助けを求める声がする

弱き命を救うため マッハを超えて駆けつける

最強ボディと決め技で 巨大な敵も薙ぎ倒す

マグネットビーム! サイクロンタックル!

正義から悪を突き放す それゆけ僕らのザンジェット!



おはこんばんちは諸君!私の名前はベーリッヒ、テコヘン惑星調査団の団員だ。今相棒のビンズと共に惑星ゴムチョに来ている。この星の由来はゴムの木が超生えている事からその名がついたというのは嘘だから気をつけろ!まぁ、めっちゃゴムの材料に使われる樹脂は取れるし名産だけども。来た理由はゴム樹脂の品質調査だ。惑星テコヘンではスリングショット、すなわちパチンコブームが来ている。より強度があり、安価な材料を探すためおもちゃ会社から我々に調査依頼が来たというわけだ。うちの相棒は商売に詳しいからな。今も電卓にゴムチョ星人と一緒にゴム樹脂が取れる木をあーだこーだ言いながら見ている。ビンズがゴムチョ星人と話し終えて帰ってくるとどんよりした顔をしていた。

ここのはダメだ。ゴム樹脂の強度はレベル高いが、値段も高い。おもちゃ製品には不向きだ、他の地区を探すぞ。

何という事でしょう!あの仕事をしない事で有名なビンズがちゃんとお仕事をしておりますー!「遊ぶ」という概念大好き男なんだからもう!


我々が歩いて別地区の方へ行こうとすると、1人の女の子が泣いていた。ゴムチョ星人の女の子か。我々が声をかけると、どうやらおもちゃの人形で遊んでいたら壊れてしまったらしい。ビンズが女の子の人形を見ると「これくらいなら道具がなくても直せる。」という。ビンズが女の子の人形を直してあげようとした瞬間事件は起こった。我々の目の前に謎の物体が急速に落下してきた。そこからはやたら凛々しい声で我々を呼ぶ声がする。

お前たち、その子から離れろ!弱きをいじめるのは許さん!

我々の目の前に落ちてきたのは白い機械のボディに赤いラインで紫色の一つ目、体からラインと同様の電流が流れているロボットだった。

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ロボットはポーズをとり我々に名乗る。

正義から悪を突き放す!超磁石戦士ザンジェット、参上!!

えーと、どういう状況だこれ。見たところゴムチョ星の関係者では無さそうだが。ビンズも警戒して光線銃を引き抜く。ザンジェットと名乗るロボットは手から謎のビームのようなものを使い、ビンズの光線銃を奪う。

君!危ないではないか!こんな物騒なものを持ち歩いて!さてはお前ら、誘拐犯だな!その子を連れ去ろうとしているのか!泣いてる少女に何と卑劣な!

あ、違います。なんならあなたの登場でもうこの子泣いておりません。私と女の子はキョトンとする中ビンズは冷や汗をかいていた。そういえば、ビンズがこうも軽々しく武器を取られるなんて事は滅多にない。ビンズは惑星調査団トップクラスのガンマンだ。このザンジェットというやつ、もしかしたら相当な手練れかもしれん。

このザンジェット、悪には容赦しない!君たちには悪いが、私の体は鋼鉄よりも硬いミスリティック合金で出来ており、高純度マグネースパワーでマッハレベルの高速移動が可能!私のマグネットビームは君たちが見たように金属を引き寄せたり、弾き飛ばす事も出来れば、高出力放射で戦艦並みの破壊光線としても活用できる。しかも、体の塗料は厳選されたホワイトを使用し、、、!

めっちゃ喋るじゃんこいつ!するとビンズはその辺の土を彼の目にぶん投げて怯んだ好きに銀河ストロング締めをザンジェットにくらわせる。出たぁ!今は亡きレジェンドプロレスラーであるマッスル・コンフィーがデビュー戦を飾った最強技だぁ!しかしザンジェットは体を分離させて回避し、また合体して身構える。

どうだ誘拐犯ども!私は自分の体を磁石のようにくっつけたり離したりも出来る!これぞ超磁石戦士ザンジェットの真骨頂!さぁ、私をどうやって倒す!?

ビンズは再びザンジェットの顔面に土を投げつけ、彼が怯んだ後に落ちていた大きめの枝で殴る。ダメージは無さそうだったがザンジェットは怒っていた。

さっきから卑怯だぞ君!!やめろ!土は磁石パワーじゃ防げないんだ!!

私はビンズ達が戦っている間に女の子が持っていた人形を直してあげていた。なんだ、思ったより簡単だったな。女の子が嬉しがっている姿を見てザンジェットは戦いの手を止める。

君たち、どうやら悪人では無さそうだな。

おお、どうやらわかってくれたらしい。ビンズ、もう終わったから彼を枝で殴り続けるのはやめなさい。


ザンジェットの誤解も解けビンズは光線銃を返してもらい、少女を一緒に次の地区まで見送る事になった。ザンジェットは孤高のロボットでありとあらゆる惑星を旅して悪者を退治するいわゆるヒーローというやつを勝手にやっているらしい。我々に敵対心を抱いた理由もわからんでもない。しっかし、良く喋るなこいつ。

いやー、面目ない!!話してみたら君たちはいい奴らだ!銀河を巡り惑星を調査する!んん、エクセレント!!私と通ずる何かがあるな!よし、拳を交えたビンズ君に「超磁石戦士ザンジェットのテーマ」CDをあげよう!!

ザンジェットがどこから出したのかCDを手渡すとビンズはニヤニヤしながら思い切りぶん投げ遠くの彼方に飛んでいく。

さすがヒーローのCDだ、良く飛ぶ。

ザンジェット、ショックを受けてうなだれる。

ちゃんとレコーディングもしたのに。

ビンズ、人から貰った物はいらなくてもその場で投げちゃダメだぞ。しかしザンジェットか、やたら感情豊かな奴だがどこの生まれなんだ?私が試しにコンピューターで検索を行なおうとしたところ、何やら焦げ臭い。なんだ、火事か?女の子はビンズに抱きつき泣き始める。

お家が!お家がないの!

我々の眼前に広がるは焼けた村。我々がゴムの調査で訪れようとしていた、女の子の住んでいた村だ。ひどい状態だ、倒れているゴムチョ星人はもう死んでいるのか?我々が村を調べると多くの足跡が向こう側に続いていた。集落の大きさからして、どうやら大多数はどこかへ避難しているようだ。この先はゴムチョ星の都市ムゴワがあったはずだ。私は機械で宇宙船を呼ぶ。何があったかはわからないが、装備は多くあった方が良さそうだからな。ビンズが女の子に話を聞くと、どうやら彼女の家族はここにはいなかったようだが、倒れてるのは皆顔なじみばかりらしい。ビンズとザンジェットがゴムチョ星人の遺体を埋葬しようとすると、傷だらけで、倒れていたゴムチョ星人の1人が銃を向け発砲する。銃弾はザンジェットに当たるが彼はさほど怯まなかったが焦っていた。ザンジェットは銃を持つゴムチョ星人を介抱しようとした。

無事でしたか!?落ち着いてください!我々はあなた方を救いに、、、!

よ、よくも、村を、、、!殺して、や、る、、、!

ゴムチョ星人は最後の力を振り絞ったのかそのまま生き絶えた。大量出血による錯乱状態だったのか、無害なザンジェットにいきなり発砲するなんて。しかし今のゴムチョ星人の口調からして、どうやら何者かに襲われたのは確からしい。ちょうど自動操縦で呼んだ宇宙船も来た。我々は集落の遺体を埋葬したのち、女の子とザンジェットを連れて都市に赴く。


我々が宇宙船で都市を目指していると一本の通信が入った。慌てた声だ、どうやらゴムチョ星人の防衛軍らしい。私はビンズに操縦を任せて応答する。

こちらゴムチョ防衛軍Aブロック地区防衛隊!!近く戦闘可能な部隊はいないか!?

こちらテコヘン惑星調査団団員ベーリッヒ!少数ではあるが戦闘員が2名!民間人の子供を1人保護してただ今都市ムゴワに向かっています!そちらの状況は?

テコヘン惑星調査団!まさかこの星に調査へ来ていたとは!とにかく戦えるなら助けて欲しい!マグネロイドを名乗る連中が突如として集落を襲い始め、今は都市を襲撃している。数は我々の方が上だが、こちらの武器が全く通用しないのだ!!あぁ!危ない!!ふせ、、、!

通信がいきなり終わった。どうやら向こうはかなり切羽詰まってるようだ。我々は急いでムゴワに向かう。


ムゴワを上空から見渡すとひどいものだ。軍隊たちはひたすら空飛ぶ何かと戦っている。黒煙で何も見えないな。私は念のためロボットスーツを着用する。これを着けると機械の手足が延長され鋼鉄のボディも追加される。これを着るのはあまり好きではないが、身を守るためなら仕方ない。ビンズが安全そうな場所に宇宙船を停めようとした瞬間、機体がいきなり傾き始め高度を落とし始めた。

ビンズどうした、いきなり傾いたぞ!!

俺のハンドルミスじゃない!!何かから攻撃されてる!!

するといきなり宇宙船の装甲が離れ私と女の子とザンジェットが外に放り出される。おぃいい!!ロボットスーツを着ててもこの高さは着地するのは無理だ!ああ、宇宙船が遠のいていく!ビンズも心配だがそれ以上にこちらがまずい!!ロボットスーツにパラシュート機能があったはず!!どれ、どれだっ!?慌てていたその時ザンジェットが高速スピードで飛んで駆けつけ、私と女の子をマグネットビームを使い磁力の力でスッと地面に着地させた。

大丈夫かベーリッヒ君!!

ザンジェットォオオオ!!君のCD3枚は買うよぉおお!!

安全に着地したのはいいが、ビンズとはぐれてしまった。彼は無事だろうか。ビンズの操縦テクニックはピカイチだ、死んじゃいないだろうが、無事である保証もない。私がロボットスーツの機能を確認していると、砂煙の中から声がする。

おい、ここにも誰かいるぞ。

我々がその方向を見ると見慣れた造形があった。

黒い機械のボディに赤いラインと一つ目、体からラインと同様の電流が流れているロボットだった。それが3体。ザンジェット?いや、何か変だな。ザンジェットとは異質な感じがする。

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するとザンジェットは興奮した様子で私に話す。

ベーリッヒ君!!仲間だ!!私にも仲間がいたんだ!!

え、あの黒いの初対面?知り合いじゃないのか?

当たり前じゃないか!私は孤高のロボットだと言っただろう!!しかーーし、それも今日で終わり、こんなに嬉しいことはない!!今日からは彼らと宇宙の平和を守るのだ!おーーい、君たちも正義の戦士だろう!私たちと一緒にゴムチョ星を守ろうじゃないか!

ザンジェットは同種のロボット達へ走り寄る。ザンジェットの素性はまだわかっていない。彼自身に危害がないのはわかっているが、あちらの3体は形は同じでも不気味な雰囲気を出している。本当に同じと言えるのだろうか、嫌な予感がする。

待つんだザンジェット!!何かおかしい!!近づくのは待つんだ!!

ザンジェットが喜びながら黒いロボット達に近づくと、彼はものの2秒で殴り倒され足蹴にされる。

な、なぜぇ。私は、味方、、、。

何が味方だ愚か者、マグネロイドの面汚しめ。

ザンジェットは黒いロボット達のマグネットパワーで私の方まで吹き飛ばされ戻ってくる。マグネロイド、ゴムチョ星を襲っている奴らだ。ザンジェットは怯えながらもマグネロイド達に呼びかける。

待つんだ君たち!!マグネロイドといえばこの星を襲っている連中の名だ!嘘だと言ってくれ、君らがそんなことする訳ないだろう!私と同じタイプのロボットじゃないか!

マグネロイド達はザンジェットを嘲笑う。

貴様、本当に自分が何者か知らないようだな!ロズギウェルめ、無駄な抵抗をしおって。覚えておけ不良品、我々の名は「マグネロイド」!邪悪AIプログラムを搭載した、磁石の力で宇宙を征服する超知的戦闘兵器だ!!

私はロボットスーツからマグネロイド達に向かってスモーク弾を発射しザンジェット達とその場から撤退する。ザンジェットの戦闘技術に頼るべきなのだろうが、まずは彼の気持ちを落ち着かせる事、ザンジェット達の素性を探ることが大事だ!


我々は戦闘がない廃墟の下まで逃げる事が出来た。ザンジェットはその場にしゃがみ込みロボットなのに泣きそうな声で悔しがっていた。

私が、兵器?邪悪AI、、、?一体何の事なんだ?

私は不安がる女の子とザンジェットをなだめつつ端末で検索する。まずはロズギウェル。かつて頭脳惑星イデルでロボットを作る事業を行っていた会社の研究員だったようだ。だが、行方不明で死亡扱いになっている。次に邪悪AIプログラム、これは検索せずともよく知っている。宇宙海賊や宇宙犯罪組織がこぞって使う兵器用人工知能。使用した機械の戦闘能力を飛躍的に向上させるが、同時に自我も芽生えやすい。その自我が人の悪い部分に最も似ていることからその名が付けられた。また企業が作った安全なAIでも劣化や過剰な学習により似たような性質に変化する事がある為、人に危害を加えるAIの総称としても使われる。危害を加えられるのは兵器の所持者も例外ではない。我々の上司達も以前邪悪AIプログラムによる大反乱を経験した事があるらしい。ビンズや私も似たような奴と戦闘になった事もあるしな。そして、ザンジェットだが、彼の性格に似た「飛行戦士ザンジェット」なるヒーロー番組が遥か昔にあったようだ。ロズギウェルとヒーロー番組ザンジェットの情報は同じ200年前のもの。ロズギウェルは訳あってザンジェットをはじめとする「マグネロイド」という名の兵器を作り、搭載されていた邪悪AIプログラムが暴走した、ということだろうか。だが不思議だ、なぜザンジェットは正義の思考を持ったロボットになったんだ?私は落ち込んでいるザンジェットの背中を機械でスキャンすると、彼には接続端子があるらしい。ロボットのデータをリプログラミングする時のものだろうか。どうやら開けるタイプらしいな。私がフタを開けて接続端子を出すとザンジェットは混乱していた。

え、君、何やってるんだ?

ロボット開発者っていうのは自分の作ったロボットの説明映像を組み込む事があるんだ。自慢話をする人もいれば、万が一の備えとして用意している人もいる。君に搭載されているAIがもしかしたら特別な何かかもしれないから確認するんだ。

私が端末に接続し内蔵フォルダを漁ると映像ファイルが格納されているのがわかった。私はすぐさま再生してザンジェットと端末越しに見る。すると緑色の皮膚をしてやたら頭のでかい異星人のビデオメッセージが再生される。彼がロズギウェルのようだ。


私の名はロズギウェル。惑星イデルのAI研究員だ。これを見ているという事は、私の作ったマグネロイドを調べてるという事だろう。私は自身が開発したマグネロイドのデータと一緒に犯罪組織の手によって誘拐された。単に量産して売り捌くだけかと思ったが、奴らお遊び半分で闇ルートから仕入れた邪悪AIプログラムまで全機に組み込みおった。おかげで早くも5体のマグネロイドが暴走し、犯罪組織が根絶やしにされかけている。

画面の向こうで大きな爆発音がした。博士は爆発音にさっと振り返りすぐ話に戻る。

不謹慎だがいい気味だ。しかし脅されてたとはいえ量産に協力した私にも責任がある。奴らももうじきここへ来る。私は2つの抵抗を試みる事にする。私が今いる遊星型要塞の格納庫に収容されたマグネロイドは495体、起動を待っている状態だ。暴走したマグネロイド達に起動させられる前に、即席であるが一種のワクチンプログラムをインストールした。目覚めた時に邪悪AIに対し反作用を起こし、私が本来望んだ救助兼防衛ロボットになるよう作った。ワクチンは息子が好きだった番組のヒーローのデータを元にしている、本当に即席だから効くかはわからないが試さないよりはマシだろう。そして格納庫に用意できるだけの爆薬を仕掛けた。囚われの身でここまで集められたのは褒めて欲しいな!後はわかるだろう、こいつを使って破壊できるだけ破壊する。壊れ損ねたマグネロイドが各地で暴走するかも知れんが、多く集まる方がもっと厄介な事になるのでな、、、。

画面の向こうでさらに大きな爆発音が聞こえる。

私は時間稼ぎをしたに過ぎない!これを見たものは悪なるマグネロイドは処分するよう徹底してくれ!そして正義に目覚めたマグネロイド達には、どうか優しくしてやって欲しい、、、。以上だ、この映像を撮り終えたら、私は最後の仕事をする。さらばだ。


映像はこれで終わりだ。私が機械の接続を解除してザンジェットに確認したところ、彼が最初に起動したのは80年前らしい。どこかもわからぬ星での目覚めで混乱したという。なるほど、遊星型要塞とやらの爆発で近場の惑星に飛ばされたんだな。となると、今我々が戦っているのは、邪悪AIプログラムによって悪の自我を持ったマグネロイド、それも長い年月を経て集結した奴らか。流石に全員ではないだろうが。ロズギウェルの作ったワクチンプログラムは、効果が薄かったようだ。しかし、無駄でもなかった。こうしてザンジェットは正義の味方としてずっと活動していた訳だし。しかしザンジェットは相変わらず落ち込んでいるようだ。

どうしたザンジェット。君も見ただろう?君の中の邪悪AIプログラムはロズギウェルの発明によって安全なものとなった。君の優しく正義感溢れる性格がその証拠だ、なぜまだ落ち込んでるんだ?

ベーリッヒ君、マグネロイドの目覚めは皆同じ時間、同じ日だったんだろうか。

え、ああ、先程の映像から推定するに個体差があるようだ。暴走したマグネロイドはかなり早く目覚めた一方、もしかしたらまだ他の星には起動すらしていないマグネロイドもいるかもしれない。それがどうかしたのか?

もしもの話だが、ロズギウェル博士のワクチンプログラムが邪悪なまま目覚めた後に時間差で作用して、邪悪な頃の事を忘れていたらどうする?自我がそっくり入れ替わってる様なものだ、可能性があるのでは?

ザンジェット、何を気にしてるんだ?

もし、私が100年前に目覚めてて、ワクチンプログラムが作用するまでの20年間で人を殺していたらどうする?それを忘れていたら?

ザンジェットが震えている。ここまで来ると最早彼は人間と変わらないのかもしれない。私はザンジェットに寄り添い彼を落ち着かせる。

ザンジェット、今はそんな事考えなくていい。君は今、ヒーローなんだ。

今はヒーローでも過去は?虐殺していた過去があったらどうする?未来は?私の大元は邪悪AIプログラムだ、暴走する危険性だってあるじゃないか!!そんな私が、ヒーローを名乗れる訳ないじゃないか、、、!

すると我々が隠れていた廃墟が崩壊し吹き飛ぶ。幸い我々は無事だが、そこには多くのマグネロイド達がいた。嗅ぎつけられたか!

その通りだ不良品よ!我々に正義の心が植え付けられようと、所詮大元は邪悪AIプログラムだ。そんな奴が、ヒーローを名乗るなど愚か!所詮貴様も悪の一端、我々に協力すれば破壊はしないでやろう!

こ、断る!お前達をもう同胞とは呼ばん!

ほぉ、そうか、残念だ。協力すれば、ガキの1人くらいは助けてやろうと思ったのに。

マグネロイドの1人がゴムチョ星人の女の子にビームを発射すると、ザンジェットは彼女を庇って背中を負傷する。

うぐぅああ!!

私はロボットスーツの拳でマグネロイドを2〜3体殴り倒して破壊するが、残りの連中によるマグネットビームで吹き飛ばされてしまい動けなくなる。何という事だ、ロボットスーツを着ても私は役に立たんのか!マグネロイドは女の子を庇いうずくまるザンジェットを足蹴にする。

貴様、不良品のクセにまだ抵抗するのか?ヒーローを名乗れないと、自ら認めていたのになぁ!

ザンジェットは何度もマグネロイドに蹴られる。

確かに、ヒーローをもう名乗れないのはわかってる。だが、それでも、弱きを見捨てる事は、私には出来ない、、!

まだ言うか!所詮作り物の正義だ!何かを守りたい気持ちも、正義感溢れる性格も所詮プログラム!機械は大人しく、兵器として生きればいいんだよ!!そうだ、良いことを思いついたぞ。

別のマグネロイドがザンジェットを押さえつけ、ザンジェットの端子に接続し目から映像を投影し始める。

このロボットを破壊する前に、本当に邪悪な自我を持ってないか見てやる。いくら忘れていると錯覚してても、カメラアーカイブのデータは消えずに残っている!さぁ、皆んなで見てみようじゃないか!

や、やめろぉ!!

マグネロイドから投影されるのはザンジェットの記録の全て。ザンジェットの予想がもし当たっていたら、彼には邪悪な時期があったのかもしれない。だが、私は逃げずに見ようと思う。根拠はないが、彼を信じられるんだ。映像が始まる。どうやら彼が目覚めた80年前の映像からのようだ。 


んん、ここはどこだ?私は、ザンジェット、ヒーロー、ミスリティック合金のボディ、高純度マグネースパワー、名前と装備はわかるが、どうすれば良いのだろうか。

その後映像の中で彼はひとりの老人を怪物から助ける。

お爺さん!大丈夫ですか!?

おお、助けてくれてありがとう、、、!

一応、ヒーローらしいので。

その割にはあんた黒いし汚れてるなぁ!よくわからんがお礼に白く塗装してやろう!うちの塗料は超一級品だ!!

その後白くなったザンジェットは様々な惑星を飛んで行き来しては人々を助ける。彼に助けられた異星人達の笑顔が何回も映る。

助かったよ!ありがとう!

ありがとうザンジェット!!

ザンジェットさん、いつもありがとうございます!

そして20年前の映像で、彼は都市に攻め入った怪獣を退治した。市民に喜ばれていたが、彼はひとりので怪獣の墓を作る映像が流れた。

本当にすまない。私に力がないばかりに、君を殺してしまった。君もひとりで寂しかったのかい?ゴムチョ星の人は優しいから、君も友達が欲しかったんだろう。私もそうなんだ、目覚めた時からひとりぼっちで、何のために生まれたのかもよくわからない。だけど信じてるんだ、いつか仲間や共に出会えるって。君も生まれ変わったら会えるといいな。


マグネロイド達は何度も早送りしたり巻き戻したりするがザンジェットが悪さしているところは確認できなかった。そして今の映像ではっきりわかった。彼はAIが生み出した産物でもなんでもない、ひとりの人間だと。私は大きな声でマグネロイド達に言ってやった。

これでわかったかマグネロイド!ザンジェットは兵器でも、悪者でもない!!それを認めないお前達の方が、よっぽど不良品だ!!

するとマグネロイド達は私に向かってビームを撃とうとする。

否、我々は完璧な兵器だ!

ああそうかい。何を言ってもお互い無駄という訳だ。だが忘れちゃいないか?うちにもヒーロー並みの強さを持った男がいる事を。我々の後ろから光線がザンジェットを押さえつけていたマグネロイドを打ち抜いた。ザンジェットを足蹴にしていたマグネロイドは辛くも放たれていたもう1発の光線を回避する。

何者だ!!我らマグネロイドに逆らおうというのか!

逆らうぅ?俺はお前らの家来でも子でもねぇ、次にアホなこと言ったら溶鉱炉にぶち込むぞ金属野郎ども。

この口汚さに銃の腕前、私は信じていた。

ビンズ!待たせやがって、、、。

私が振り向くとビンズは明らかに私の物とは比べ物にならないロボットスーツを着ており、両肩にビームキャノン砲、右手に光線銃、左手にマシンガン、足にはミサイル砲、背中にはジェットパックと刀が2本。私はビンズに歩み寄り頭を小突く。

また物騒な物買い揃えやがってこの青魚野郎がぁ!!言え!どこで買った!

通販。クーポン使えたから。

ビンズは私の説教を無視して、未だに女の子を抱えているザンジェットに呼びかける。

ゴムチョ軍も何人か連れてきた、女の子はこいつらが保護する!マグネロイドは俺たちがぶっ潰すぞ。

ザンジェットは少女を離してゴムチョ軍の方に行かせる。ゴムチョ軍は女の子を連れてビンズ達に後を任せる。ザンジェットは安堵しビンズに頼み込む。

良かった、これで私の役目も終わった、、、。ビンズ君、マグネロイドと共に私を破壊してくれ、、、。

するとビンズはうずくまるザンジェットを足蹴にする。コラ!何やってんだビンズ!

聞こえなかったかアホ!俺たちがマグネロイドをぶっ潰すんだよ!

うぐ、、、。だが、私もマグネロイドだ、、、。

やかましい!お前の名前はザンジェットだろ!!自分の名前も忘れたかタコ助!!なら好きなだけそこで座ってろ。俺とベーリッヒでなんとかする!

マグネロイドは我々を嘲笑う。

馬鹿め!たった2人で何が出来る!ムゴワを襲撃していたマグネロイドを全員呼び寄せるのだ!

マグネロイドが空にビームを放つと上空からマグネロイド達が集まり降りてくる。しかし彼らは若干困惑していた。

おい、残っているのはたった40体か!襲撃部隊は70体のはずだ!他のやつはどこだ!

ビンズはニヤニヤしながら逆にマグネロイドを嘲笑う。そうか、ビンズのやつ、ここに至るまでに軍と協力してマグネロイドを撃退してたんだ。するとゴムチョ軍が我々の後方からメガホンで呼びかける。

ビンズさーーん!!あなたがマグネロイドの弱点を教えてくれたおかげで、マグネロイドを多く倒すことが出来ましたー!我々は人命救助に戻りますがー、本当にお任せしても大丈夫でしょうかぁ!?

ビンズもどこから出したのかメガホンを使い軍に呼びかける。

任せろって言っただろうがぁ!邪魔したら承知しねぇぞ!!

あ、今からでも遅くないから何人か来てもらった方がいいんじゃない?ああ、行っちゃった。すると1人だけ軍人が戻って来てメガホンで呼びかけてくる。

ザンジェットさーーん、私は20年前、怪獣からあなたに救われた者です!!あなたの姿に憧れて、防衛軍に入りましたー!!

他にも軍の何人かが戻ってきてザンジェットに呼びかける。かつてザンジェットに命を救われた者たちか。

ザンジェットさん!!あなたがマグネロイドなのは、見た目でわかります!!だけど我々は、あなたを信じています!!最高のヒーローであると!!

ビンズが軍人達に「戻れ」と怒ると、マグネロイド達はその隙を突いてビンズと私に攻撃を仕掛けてくる。幸い軍人達は撤退できたが、我々は数の差で苦戦を強いられた。そしてビンズは戦いながらザンジェットに呼びかける。

ザンジェット!さっきの見たかよ!お前とそっくりな奴らに街がボロボロにされても、お前を信じてくれるやつは沢山いるぞ!それでも自信がないなら、俺たちを悪人と勘違いしたあの時に戻って来い、ザンジェット!!

私は戦ってる最中ロボットスーツの右足を損傷し上手く動けなくなる。

しまった、、、!

死ねぇええええ!!!!

私がマグネロイドに殴られそうになったその時、赤いビームが放たれマグネロイドを吹き飛ばす。そして後ろからヒーローがゆっくりと登場する。

お前たち、彼から離れろ!!傷つけることは許さん!!

彼は前口上を述べながら襲いくるマグネロイド達を軽く薙ぎ払っていく。

助けを求める声に、今日もマッハで駆けつける。宇宙の平和を守るため、磁石の力で正義から悪を突き放す!!超磁石戦士ザンジェット、参上!!!

ザンジェットはマグネロイドの前に躍り出て、体を高速回転させてタックルする。

サイクロンタックルーー!!

マグネロイド達はボーリングのピンのように薙ぎ倒された後、光線によって何体か撃破される。

高出力マグネットビーーームッ!!

あまりの強さにマグネロイド達は驚く。

あり得ない!我々マグネロイドの戦闘レベルは同じはず!

あり得なくないさ。マグネロイドと違って、ザンジェットは目覚めた頃から正義のためにひとりで戦ってきたんだ。あのビンズとも互角に戦うザンジェットが、マグネロイドなんかで太刀打ち出来るわけがない!私もロボットスーツを損傷しながらも光線銃で援護射撃し、ビンズとザンジェットはマグネロイド達を一掃していく。気がつけばマグネロイドは半数の20体に減っていた。するとザンジェットはマグネロイド達に呼びかける。

これでわかっただろう!君たちは我々に勝てない!大人しくこの星を去り、二度と悪事をしないと誓えば君らに危害は加えない!

マグネロイド達はボロボロになりながらも諦めた様子はなかった。

馬鹿め!我々はまだ負けたわけではない!マグネロイドよ、集合せよ!!

なんだ、上空からまた何体か降りてきたぞ。私が望遠鏡で空を見ると小さな機械で出来た星が見える。そうか、あれが遊星型要塞!奴らの基地なんだ!

マグネロイドになぜ分離機能が付いていると思う?ただ敵の攻撃を回避するだけではない。味方と合体し、ありとあらゆる脅威にも対処できるようにする為だ!!いくぞ、100体ドッキング!!

マグネロイド達は体を分離させパーツひとつひとつを合わせていく。気がつけば我々の前には見上げるほど巨大なマグネロイドが形はそのままで立ちはだかった。しかしこれにビンズは嫌味を言う。

何が100体ドッキングだ!単に集まって大きくなっただけかよ、創造力のねぇロボット達だこと。

ビンズはマグネロイドに踏み潰される瞬間に回避する。

大きくなっただけだと?貴様らに100体分のパワーを凌げるとは思えないが?

ビンズに乗じてザンジェットも強気に出る。

確かに攻撃力、防御力はアップしただろう!!しかぁし!君たちは重大な事を見落としている!いくぞビンズ君!

ビンズとザンジェットはマグネロイドの周りをグルグルと走りながら土を転がして巨大な泥団子を作る。マグネロイドはビンズ達を捕まえようとするが上手く攻撃を当てられないようだった。ビンズ達は出来上がった泥団子をマグネロイドの目に使って思い切り投げつける。泥団子はべちゃりと当たり、マグネロイドは目を擦る。そうだ、あれだけ的が大きければ土による攻撃も簡単に当たる。ザンジェットは両手にパワーを集めてビームを放つ。

今だ!くらえマグネロイドよ!ザンジェット〜、マグネットフルパワービーーーム!!

ザンジェットのビームはマグネロイドの右手が防いだ。ダメージあるが軽そうだ。続けてビンズが刀を投げて体に突き刺すが、これもダメージが薄そうだ。しかしマグネロイドはまだもがいている。ザンジェットは慌て始める。

だ、ダメか!私のフルパワービームでも、装甲を貫けない!何も効かないのか?

いや、私はそう思わない。ザンジェットのビームもビンズの攻撃も効いてはいる。それなら、1番ベタな方法で行こう。

3人で同時攻撃だ!!全員、目を狙おう!!

ビンズとザンジェットは頷いて攻撃の用意をする。私は光線銃を持ち、ビンズは全ての遠距離武器で構え、ザンジェットはもう一度手にパワーを集中させる。その時、マグネロイドは我々を踏み潰そうとこちらに突進してくる。

行くぞ!!

私の掛け声と共に我々は一斉に攻撃し、マグネロイドは両手で防ごうとしたが、攻撃は貫通しマグネロイドの目とその周辺を大きく貫いた。

おのれぇ、何故勝てぬのだぁああああああああ!!

断末魔と共にマグネロイドの巨大なボディは爆散を始め、ごく一部のマグネロイドは分離して逃げようとする。そうか、遊星型要塞と共に避難しようというわけだな!私とビンズが追いかけようとすると、ザンジェットは我々を止めた。

戦いは終わった。逃げる者を追うのは、私の流儀に反する。

ザンジェットの言葉により我々は追撃をやめ、偶然巻き込まれたこの戦いに終止符が打たれた。遊星型要塞はどこかへ消え、この星のマグネロイドはザンジェットだけになった。


その後我々はムゴワ市民から表彰され、それなりの歓声を浴び、我々が助けた女の子は家族のもとに帰り、外れの方でザンジェットと一緒にひっそりとマグネロイドの墓を作った。墓作りは我々3人だけの作業だった。


我々は旅立つザンジェットを2人で見送ることになった。戦いが終わり、気がつけば夜だった。不思議なものだな、星がいつもより輝いて見える。

ビンズ君、ベーリッヒ君。君たちには助けられてばかりだったな。これからどうするんだい?

私たちはしばらくムゴワの復興を手助けして、落ち着いたらおもちゃ用のゴム樹脂を探しに行くよ。本来の仕事をこなさなきゃ。

そうかそうか!ではお別れだな。本当は君たちともっと一緒に居たかったが、、、。今回の戦いで私は多くの悲しみを知ったが、希望も得た。私は、正義のマグネロイドを探すことにするよ。そしていつか、宇宙を守るヒーロー部隊を作るんだ。何年かかるかわからないが、やれるだけやってみる。だがもし、私の体に眠る邪悪AIが暴走したら、君たちが破壊してくれるかい?

するとビンズはザンジェットの胸をコンと叩く。

その時はちゃんとスクラップにしてやるさ。だが覚えとけ。それまでは俺とベーリッヒが、お前の友達1号2号だ。

あのビンズがこんなセリフを言うなんてな。ザンジェットはどこか嬉しそうに宙に浮かぶ。

私の名はザンジェット!!宇宙の平和を守る正義の戦士!!友との思い出と感謝を胸に今日も飛ぶ!!いつかまた会おう、さらばだ!!

こうしてザンジェットはひとり空へ飛びゴムチョを去っていく。

流石はヒーローだ、よく飛ぶ。さて、うるさいのが消えたから酒でも飲みに行くぞ。

ビンズ、お酒は復興の手伝いをした後だ。我慢しろ。

こうして我々は輝く星達を背にムゴワへと戻る。私は途中振り返り、赤く小さな星を見た。きっと彼だろうと、どこか嬉しい、そんな気がした。



別れのザンジェット

作詞・作曲 ザンジェット

戦いの日々に終わり告げたくとも 笑顔の終わりは見たくない

時にずっとここに居たいと思っても 行かねばならぬが我がさだめ

泣くな友よ いつかまた会えるさ

泣くな弱きよ 困ったらまた来るから

それまではお互い笑っていよう

さらばザンジェット 別れのザンジェット



正義から悪を突き放す!!超磁石戦士ザンジェット!!皆んな、また会おう!!



宇宙人ビンズと超磁石戦士ザンジェット 


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