星野維人

原稿用紙5枚ほどの掌編小説や詩を書いています。投稿は不定期ですが、読んでいただければ幸…

星野維人

原稿用紙5枚ほどの掌編小説や詩を書いています。投稿は不定期ですが、読んでいただければ幸いです。

マガジン

  • 写真詩

    自分で撮った写真と自作の詩のコラボです。

  • 掌編小説

    原稿用紙5枚の掌編小説

最近の記事

写真詩「遠い輝き」

それはかつて 確かにこの手の中にあったのに 今は失われてしまったもの それはかつて この手で掴もうとしたけれど 果たせなかったもの それはかつて 追いかけることすらしなかった かけがえのない何か その何かは今 手を伸ばしても届かぬほど 遠い彼方へ消えてしまった 思い出にすらできなかった あの輝き 取り戻せない時間の前で 呆然と立ち尽くす

    • 写真詩「予感」

      朝から降り始めた雨が 昼には止んだ 雲間から陽が差して 街はモノクロームから 色彩の世界へと変わる 新しい詩が生まれる予感に 僕は心の扉を開放して待つが 言葉は芽生えもせず 舞い降りもせず 一日の終わりとともに 扉は閉じられる 苛立ちと落胆と わずかな明日への希望を抱き 僕は眠りにつく まるで開店休業の詩人のように

      • 写真詩「手紙」

        木枯らしが吹く寒い日に 遥かなるあなたに向けて 僕は手紙を送った 言葉の代わりに 思いだけを託して 「あなたに会いたい」 郵便ポストは空のまま 季節は知らん顔で 僕の前を流れて行った けれど僕は知っている 路傍に咲く可憐な花が あなたからの返信であることを

        • 写真詩「今を生きる」

          ご無沙汰してます 今年もまた会えましたね あなたたちの姿を愛でることが この季節の楽しみのひとつです 僕ですか? 思い通りにはいかないけれど なんとかこの一年を乗り切りました その間に失ったものと得たもの どちらが多いのか分かりません ひとつ言えることは 余分なものならもういらない と言うこと 今を愛おしく思えれば それで十分だと言うこと 僕はまさに今を見つめ 今に耳を澄ませ 今を生きたい

        写真詩「遠い輝き」

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        • 写真詩
          10本
        • 掌編小説
          16本

        記事

          写真詩「ひそやかな訪れ」

          忘れ物はまだ見つからないのに 新しい季節は足早に巡ってくる 何かに追い立てられるようで 息苦しささえ感じた僕は ひそやかな季節の訪れに耳を澄ます 春の風に乗って 懐かしい声が聞こえた

          写真詩「ひそやかな訪れ」

          紙の本を出版しました

          このたび紙の本を出版しました。 原稿用紙5枚の掌編小説を12編まとめた作品集です。 タイトルは「十二の掌編小説 もういちど」 令和4年の上毛新聞の上毛文芸最優秀賞に選ばれた作品「もう一度」をはじめとして、その前後に入選した作品をすべて掲載してあります。 何本かの作品はすでnoteに発表してありますが、出版化に当たり一部加筆したものもあります。 母親や友達、見知らぬ人、そしてペット・・・自分にとって近くもあり遠くもある忘れえぬ人を題材にして書きました。 中編や長編の小説が一本の

          紙の本を出版しました

          詩「悲しみの心に」         

          肩を震わせて泣いている あの子を目の前にして 君は何もできず ただ涙を流すだけだった あのときの幼かった君は そうするしかなかった けれど大好きだったあの子の 悲しむ姿を忘れることはなかったね 誰かのそんな姿を 君はこれから何度も目にするだろう いつかその震える肩に そっと手を添える人になれたらいいね 悲しみの心に寄り添える人に なれたらいいね 労わりの言葉を言える 優しい人になれたらいいね 君が憧れた ヒーローたちのように 読んでいただきありがとうございます。 少

          詩「悲しみの心に」         

          詩「小さな声で」

          小さな声で 語るもの 言葉少なに 語るもの ひそやかに ささやかに それでいて 確信に満ちた声 なにも押しつけず なにも決めつけず 答えではなく問いかける声 そんな言葉を聴きたい そんな言葉で語りたい いまこの瞬間を

          詩「小さな声で」

          詩「なぜ」

          伝えられなかった言葉が 忘れた頃に目を覚ます なぜあのとき言えなかったのだろう なぜあのとき思いつかなかったのだろう なぜ伝える勇気がなかったのだろう 時の列車は出て行ってしまった 僕の言葉は遅刻の常習犯

          詩「なぜ」

          詩「日々」

          日々の細やかな一瞬が 詩となり 物語となって 昇華してゆく たわいなく ありふれた出来事も わたしにとって かけがえのないもの 喜びだけでなく悲しみさえも 誰にも分け与えたくない それがわたしの生きた証なのだから そう思いながら 日々の重さを 持て余しているわたしがいる

          詩「日々」

          詩「置き土産」

          春一番が吹き荒れ ようやく静寂が訪れようとする午後 読みかけの本をそのままに うたた寝をしている窓辺を トントンと叩く音がした 顔を上げて見ても誰もいない 風の悪戯だろうか ただ木漏れ日が映し出す 光と影がベランダで揺れている 窓を開けると 梅の花びらがひとひら そしてまたひとひら 舞い込んできた きっと春の嵐の名残の風が お騒がせしましたとばかり 挨拶に来たのだろう 春の香りを置き土産に

          詩「置き土産」

          詩「ありふれた今」

          明日を思い煩うあまり 無駄にしてしまった今日という日が いったいどれだけあっただろう 時間のゴミ箱に捨てられた かけがえのない日々は もう二度と取り戻せない もう無益なことはやめよう 僕自身のために 昨日でもなく明日でもない 今この瞬間をときめきたい 喜びも悲しみも憎しさえも 愛おしく思える今があったなら それがどれほどありふれた今だとしても

          詩「ありふれた今」

          詩「料理の話」

          何かが足りない 一味足りない 醤油をかけたり塩をふったり そのくせ大事な出汁を忘れたり 賞味期限の切れた香辛料やら 時には高価なワインやら やたらめったに放り込み ぐつぐつ煮込んで出来上がり やけに奇妙な味わいに こんなはずではなかったと 嘆いたりする 料理の話かって? いや 人生の話さ

          詩「料理の話」

          詩「木漏れ日のような」

          それはとても細やかで よそ見をしてる間に つい見失ってしまうほどのもの 形があるようでないような 色さえあるようでないような うまく説明できないけれど きっと誰でも知っているのに 忘れたことさえ忘れてしまうほど ありきたりなもの 例えて言うなら 春の日の木漏れ日のような 儚くて哀しいもの

          詩「木漏れ日のような」

          詩「たった一言で」

          たった一言で 誰かを幸せにできる 魔法のような言葉があればいい そんな天使の言葉が どこかに転がってはいないかと 昨日の僕は野良犬のように探していた 明日になれば たった一言で 誰かを絶望のどん底へ突き落してしまう そんな悪魔の言葉を 小鳥のように探しているかもしれない 天使と悪魔が 僕の中で せめぎ合っている

          詩「たった一言で」

          詩「一月二十四日」

          それは ほんの昨日のことのようで はるか遠い昔でもあるような あなたと共に生きた日々 悲しく辛かった出来事さえ 今は愛おしい かけがえのない思い出を ありがとう ~母の一周忌に

          詩「一月二十四日」