あいち | ほのぼのエッセイ

1986年うまれの38歳。広告代理店の営業として働きながら、美容学校に通っている人。夫…

あいち | ほのぼのエッセイ

1986年うまれの38歳。広告代理店の営業として働きながら、美容学校に通っている人。夫と文鳥2羽と暮らしています。コスメとプロレスとお花と本が好き。noteではエッセイもどきを書きます。

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2人の定番

今週、結婚する。 結婚生活は、自分が想像していないような大変なことがたくさんあるらしい。お互いを疎ましく感じたり、価値感の違いに悩んだり、思いもよらない事件がお…

推しのいる幸せ

noteのネタはたくさんあるけど、思い入れのある題材であればあるほど、なかなか文章にできない。 でも今日は意を決して、今わたしが夢中になって応援している、ジェイク・…

静かな湖

今から1年半前のこと、絵の具を使って絵を描くワークショップに参加した。お題は「自分がやりたいことをしている瞬間」みたいな感じだったと思う。 わたしは、夜の湖を描い…

薄くて長いつながり

プロレスが好きで、しょっちゅう観に行く。 しょっちゅう観に行くと、友達がたくさんできる。 その友達のみなさんから、観戦の度にお菓子をいただく。 こういう、友達同士…

「かわいい」と一緒に生きていく

何年ぶりかにiPhoneの機種変更をした。 本体の色は迷わずピンクにしたけど、ケースを選ぶのは丸4日かかった。何かを選択するということは、著しく脳のエネルギーを消費する…

新婚からの卒業

この2月で結婚4年目に入った。 3年間を経て初めて、夫と足並みをそろえて2人で人生を歩いているという実感がある。 昨年秋、わたしは過労で休職した。 年末年始、夫が尿路…

推しの美容師

引っ越すたび、自分に合った美容院を探してさまよう。何軒も渡り歩いては、また変える。 わたしは美容院で自分のことをあまり話さない。ちょうどいい力加減で話すことがで…

山のふもとの裾模様

美容学校に通いはじめて丸1年。 わたしは2年生になった。 先日、着物について勉強していた時に「裾模様」という言葉を覚えた。裾模様は、着物の裾部分にのみ絵柄が入った…

野に咲く花のように

毎年、年賀状を送ってくれる同級生がいる。 今年の年賀状は、やや遅れて2月に届いた。彼は3人の子どもと奥さんと一緒に、遠く離れた北国に暮らしているらしい。去年母校を…

ウエディングドレス

「背中に傷がある」と聞いて、あなたはどんな傷を想像するだろう。針と糸で縫い合わせたような、1本の傷だろうか。 私の背中にある傷は、直径10cm。 丸く、赤黒く、えぐれ…

繋がらない点があったっていい

もうすぐ2022年が終わる。 この1年で1番大きな出来事は、間違いなく学校に通い始めたことだったと思う。 私はこの10月に、資生堂美容技術専門学校に入学した。美容師養成…

優しさのリレー

夫と熱海に花火を観に行った。 付き合いはじめてすぐコロナ禍を迎えた私たちは、一緒に花火を観たことがなかった。今年こそは一緒に観たいと意気込んで出かけた。 ところ…

清濁併せ呑む

新婚生活がはじまって1年半が経った。 この1年半を表す言葉は「清濁併せ呑む」の一言に尽きる。 海は清流も濁流も、緩やかな波も激しい波も、区別することなくすべてを受…

山のごちそう

夫の知人が、山梨の山中で1人暮らしをしている。 そのお宅に、夫と2人でお邪魔するようになった。 そこでいただく食事が、最高においしい。 知人は必ず、みんなで作れるメ…

おやつも渡せない時代に

6歳から、片道1時間半を電車で通学していた。 周りの大人が「えらいね」と褒めてくれたけど、自分にとっては当たり前だったから、くすぐったかった。 電車の中で本に夢中…

答えのない世界

オフィスで先輩に話しかけに行ったら、先輩が自分の悪口をメールに書いていた。入社して2年目のことだった。 「あいちさんは自分に自信がありすぎて怖い」 と、書いてあっ…

2人の定番

2人の定番

今週、結婚する。

結婚生活は、自分が想像していないような大変なことがたくさんあるらしい。お互いを疎ましく感じたり、価値感の違いに悩んだり、思いもよらない事件がおこったりするという。

思いもよらない事件には勃発したときに向き合うしかなさそうだけど(何が起こるんだろう、おそろしい)、先人の知恵に学べば、心の準備くらいはできるかもしれない。

そう思って、わたしと婚約者は何冊かの本を買った。

どれ

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推しのいる幸せ

推しのいる幸せ

noteのネタはたくさんあるけど、思い入れのある題材であればあるほど、なかなか文章にできない。
でも今日は意を決して、今わたしが夢中になって応援している、ジェイク・リー選手というプロレスラーについて書きたいと思う。

彼を知ったのは、たまたま行った日本武道館。
誰か分からずポカンとする私をよそに、周囲の観客から熱狂的な声援を集めていた。その光景が忘れられなくて、家に帰ってすぐに過去の試合やインタビ

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静かな湖

静かな湖

今から1年半前のこと、絵の具を使って絵を描くワークショップに参加した。お題は「自分がやりたいことをしている瞬間」みたいな感じだったと思う。
わたしは、夜の湖を描いた。
木に囲まれていて、夜空に星が輝いていて、畔にたくさんの花が咲いている、静かな湖。

自分でお金を稼げるようになった高校生の時から、わたしの頭の中はずっと忙しい。常に何かしらの考えが頭を占めていて、浮かんでは消え、浮かんでは消える。

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薄くて長いつながり

薄くて長いつながり

プロレスが好きで、しょっちゅう観に行く。
しょっちゅう観に行くと、友達がたくさんできる。
その友達のみなさんから、観戦の度にお菓子をいただく。
こういう、友達同士でお菓子を配る文化のことを、とても面倒くさいと思っていた。
幸か不幸か、これまで職場にも友人関係でもそのような習慣がなかった。

お菓子は大好きだ。もちろん全部食べる。
だけど、相手にそんなつもりがなかったとしても、受け取ればお返しをしな

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「かわいい」と一緒に生きていく

「かわいい」と一緒に生きていく

何年ぶりかにiPhoneの機種変更をした。
本体の色は迷わずピンクにしたけど、ケースを選ぶのは丸4日かかった。何かを選択するということは、著しく脳のエネルギーを消費する。

iPhoneを便利に、快適に使いたい。
それ以上に、絶対にかわいいものを身につけたい。
誰にどう思われるかということはどうでもよく、来る日も来る日もiPhoneを目にする度に「は〜わたしのiPhoneかわいい!最高!」と思って

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新婚からの卒業

新婚からの卒業

この2月で結婚4年目に入った。
3年間を経て初めて、夫と足並みをそろえて2人で人生を歩いているという実感がある。

昨年秋、わたしは過労で休職した。
年末年始、夫が尿路結石で入院・手術をした。
無事に夫が退院してからも、わたしのインフルエンザ感染、夫のコロナウイルス感染が続いた。
これまでの人生で最も健康について真剣に考えた数ヶ月だった。

結果として、わたしは自炊をするようになった。
ずっとした

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推しの美容師

推しの美容師

引っ越すたび、自分に合った美容院を探してさまよう。何軒も渡り歩いては、また変える。

わたしは美容院で自分のことをあまり話さない。ちょうどいい力加減で話すことができなくて、美容師さん相手に全力のサービストークを繰り広げ、家に帰ると疲れ果ててしまうからだ。それで、いい感じの距離感で接してくれる美容師さんが好きだ。
クチコミや写真を見れば、店舗の雰囲気や技術力についてはなんとなくわかるけど、美容師さん

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山のふもとの裾模様

山のふもとの裾模様

美容学校に通いはじめて丸1年。
わたしは2年生になった。

先日、着物について勉強していた時に「裾模様」という言葉を覚えた。裾模様は、着物の裾部分にのみ絵柄が入ったデザインで、既婚女性の第一礼装である「留袖」の総称でもある。
江戸時代には着物全体に柄が描かれた「総模様」だったが、やがて華やかな帯とのバランスを考え、裾のみに絵柄が施されるようになった。

小さい頃から、何度も聞いていたもみじの歌。

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野に咲く花のように

野に咲く花のように

毎年、年賀状を送ってくれる同級生がいる。

今年の年賀状は、やや遅れて2月に届いた。彼は3人の子どもと奥さんと一緒に、遠く離れた北国に暮らしているらしい。去年母校を数回訪れる機会があって、建物はガラリと変わっていたけれど、あいちによく元気をもらったことはしっかり思い出したよ、と綴られていた。

高校時代、わたしは彼に片想いをしていた。
彼は同じ学年で入学したけど、1年留学して、帰国してからは1つ下

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ウエディングドレス

ウエディングドレス

「背中に傷がある」と聞いて、あなたはどんな傷を想像するだろう。針と糸で縫い合わせたような、1本の傷だろうか。

私の背中にある傷は、直径10cm。
丸く、赤黒く、えぐれている。
月のクレーターに似ているな、といつも思う。

25歳の3月、隆起性皮膚線維肉腫という病気で手術を受けた。摘出しないと、少しずつ大きくなるらしい。まったくピンと来なくて、「仕事があるから手術の時期を遅らせてほしい」と医師に言

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繋がらない点があったっていい

繋がらない点があったっていい

もうすぐ2022年が終わる。
この1年で1番大きな出来事は、間違いなく学校に通い始めたことだったと思う。

私はこの10月に、資生堂美容技術専門学校に入学した。美容師養成のための学校だ。
私は「美容師通信科」で学んでいて、3年間かけて美容技術を学ぶ。3年生になったら、美容師の国家試験を受ける。

私の本職は広告代理店の営業。結構激務だ。
仕事は楽しく、職場もそれなりに快適で、すぐに辞めるつもりはな

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優しさのリレー

優しさのリレー

夫と熱海に花火を観に行った。
付き合いはじめてすぐコロナ禍を迎えた私たちは、一緒に花火を観たことがなかった。今年こそは一緒に観たいと意気込んで出かけた。

ところが、開始1時間前に大雨になった。雨の予報ではなかったのに。仕方なく、私が持っていた晴雨兼用の折りたたみ傘を2人でさしたが、雨は強くなるばかり。夫はもう1本の傘を求めてコンビニに向かった。

夫を待っていると、後ろから声が聞こえた。
「僕た

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清濁併せ呑む

清濁併せ呑む

新婚生活がはじまって1年半が経った。

この1年半を表す言葉は「清濁併せ呑む」の一言に尽きる。
海は清流も濁流も、緩やかな波も激しい波も、区別することなくすべてを受け入れることから、「善悪の区別をすることなく来るがままに受け入れる人」を指す言葉だという。
いいことも悪いことも、一緒に飲み込む。
結婚生活に1番近い言葉だと思う。

好きな人と一緒に生活できることは、たまらなく楽しい。
だけどその好き

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山のごちそう

山のごちそう

夫の知人が、山梨の山中で1人暮らしをしている。
そのお宅に、夫と2人でお邪魔するようになった。
そこでいただく食事が、最高においしい。

知人は必ず、みんなで作れるメニューを考えてくれる。現地で採りたての野菜をつまんだり、地元のワインを飲んだりしながら、3人でワイワイ作る。

たとえば、たっぷりの玉ねぎと挽肉に、隠し味のセロリを加えた、ミートソースパスタ。
野菜を切るのは私、炒めるのは夫…と代わる

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おやつも渡せない時代に

おやつも渡せない時代に

6歳から、片道1時間半を電車で通学していた。
周りの大人が「えらいね」と褒めてくれたけど、自分にとっては当たり前だったから、くすぐったかった。

電車の中で本に夢中になっていると、よく大人が「どこで降りるの?」と声を掛けてくれた。
私が降りる駅になると、肩を叩いて教えてくれた。

そうじゃない時は、読書に没頭するあまり、度々電車を乗り過ごした。
気づいたらまったく知らない駅にいて、途方に暮れた。

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答えのない世界

答えのない世界

オフィスで先輩に話しかけに行ったら、先輩が自分の悪口をメールに書いていた。入社して2年目のことだった。

「あいちさんは自分に自信がありすぎて怖い」
と、書いてあった。

よせばいいのに、気が強いから見て見ぬふりができなくて、「自信なんてないですよ」と先輩に話しかけた。先輩は少し凍りついた後、「いや、まぁ」と苦笑いしていた。

異業種から転職して、営業としてチームのフロントに立っていた。迷いだらけ

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