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少女マンガの主人公っぽい小夢は、ソフト百合的恋愛感情を通じて、マンガ家として成長する|『こみっくがーるず』(13)

 本記事は、アニメ「こみっくがーるず」を徹底分析する特集の……第13回である★


第1回からご覧になることをオススメします!


今回のテーマは……!


 ここまで、本作の主役・かおすについて考察してきた。


 そして今回は……小夢!

 かおすらと共に「女子まんが家寮」に住み、マンガ家として活動する彼女の人となりに迫ってみたい。



【補足】主要4人のパラメータ


 「こみっくがーるず」を分析する上で特に重要と思われる要素について、小夢ら4人のパラメータを整理した。


※詳細は各キャラを取り上げる中でご説明するので、ここではざっとご覧いただくだけで結構です。



 さて、今回注目するのは小夢である。

 小夢を語る際に特に重要となるのは、上記パラメータの「性格」、そして「社交性」だ。


 「社交性」についてはこの後詳しくご説明するので……ここでは「性格」にご注目いただきたい

 ご覧の通り……4人の中で最も「ストレート」に寄っている。


 つまり裏表がなく、大変わかりやすい子なのだ。

 「天真爛漫」(飾らず、ありのまま)と言ってもよいだろう。


「こみっくがーるず」において、小夢はどのように描かれているか?


 「『こみっくがーるず』において、小夢はどのように描かれているか?」と問われれば、私は「特に以下の2点が重要だと思われる」と回答したい



 ここからは、この2点について詳しく見ていこう。


【Point①】明るく元気で、みんなから好かれているが、ちょっと抜けているところもある。そんな王道的な少女マンガの主人公っぽいキャラ


 小夢は明るく、元気で、みんなから好かれている。

 一方で、ちょっと抜けているところもある。


 これらの要素を全部まとめて一言で言えば……そう!

 小夢は、「王道的な少女マンガの主人公」っぽいキャラなのだ!


※明るく元気な小夢。


 以下、具体的なエピソードを交えつつ、象徴的なポイントを4つご紹介しよう。


【1】外向的で、人から好かれる


 小夢は、とにもかくにも外向的で、人から好かれるキャラである。


 例えば……彼女はかおす同様、「女子まんが家寮」に入るために東京の高校に転入してくる。

 ……が、初日からクラスメイトたちと一気に距離を縮め、まるで数年来の親友のような仲になっている。


 また、小夢ら4人で海に行った時のこと(第5話)。

 ここでもたった10分で見知らぬ女の子たちと仲よくなり、水をかけ合ったり、一緒にかき氷を食べたりしている。

かおすはそのあまりの社交性に衝撃を受ける「友だちができてる!」

「小夢ってすごいよねぇ」

琉姫「マンガ家って、みんな内向的だと思ってたわ」

「明るいし」

琉姫「人を惹きつけるオーラあるし」

かおすは少し寂しそうに「小夢ちゃん……」


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【2】マイペース


 小夢はマイペースだ。


 そもそも、担当編集者が彼女に「女子まんが家寮」を勧めたのは、「マイペースすぎる」という理由だった。

 ちなみに……この場合の「マイペース」はあまりよい意味ではないと思われる。

 おそらく編集者は、「いまの小夢にはマンガ家に必要なストイックさとか、ど根性とか、そういったものが足りない。他のマンガ家と交流することでそれを培ってほしい」と考えたのではないかと推測される。


 一方で、もちろん「マイペース」にはよい意味もある。

 無理に周囲に合わせようとしないから、人前に出ても緊張したり、不安を感じることがないのだ。

 だから上述の通り、小夢は誰とでもすぐに親しくなれるのだろう。


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【3】よく食べる


 小夢はよく食べる。

 特に菓子、その中でもドーナツは、第1話から食べて食べて食べまくっている。

 口の周りにドーナツの食べかすが付いているのがお約束だ。

 

※左下:口の周りにドーナツの食べかすを付けた小夢。


※みんなでドーナツを食べる……のではなくて、小夢だけが食べまくっている。


※右:担当編集者との打ち合わせでも、食べまくる。


 また、菓子を食べすぎて太ってしまい、ダイエットに励むエピソードもある。


※ダイエット回。


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【4】ネガティブなところ(勉強が苦手、よく物をなくす etc.)もあるが、悩んだり、落ち込んだりすることはない


 小夢のネガティブなところを探してみると、まず何よりも、彼女は勉強が苦手だ。

 例えば、定期テストでは1人だけ追試を受けている。


 あるいは、マンガに「頭のよい先輩キャラ」を登場させようとした時のこと(第8話)。

 彼女なりに「頭のよいキャラ」を考えたのだろう……そのキャラの設定は「IQ500」「ノーベルなんとかしょうゆうしょう」で、「賢いから、ヒロインを英語で口説く」というストーリーだった。

 これにはさすがのかおすも驚き、思わず「小夢ちゃん……先輩、全然頭よさそうに見えません!」とツッコんでいる。


 さらに、ダイエット中、自身を戒めるべく壁に張り紙をした時のこと(第9話)。

 張り紙に描かれた文字は……「げんりょうは正ぎ」「おやつきんし」

 どうやら小夢は、「減量」「(正)義」「禁止」という漢字を書けないらしい(高1である!)。


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 また、小夢はよくものを失くす。

 例えば高校の紛失物コーナーを訪れた時には、自身の私物が複数保管されているのを発見する(第9話)。

小夢「あっ、私のヘアゴムとリボンとシャーペンと靴下」


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 ……という具合に、小夢は複数のネガティブな要素を持ち合わせているが、重要なのは、彼女が自身の欠点に悩んだり、落ち込んだりしていないということだ


 小夢は終始笑顔だ。

 だから、ちっとも欠点に見えない。

 見ている側も、「まったく仕方がないなぁ!」と思わず笑顔になってしまう。

 これこそが、小夢らしいところだ!


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 以上、小夢の「王道的な少女マンガの主人公」っぽいところを見てきたが……お気づきだろうか。


 そう!

 内向的で、コミュニケーション・スキルが低い。そして胃が弱く、いつも自虐している……小夢は、そんなかおすの真逆のキャラなのだ!


 つまり、「こみっくがーるず」は、「ちっとも主役らしくないかおす」を主役に、一方で「主役らしい小夢」を脇役に据えていることになる。

 これが面白いところである。


【Point②】ソフト百合で、恋を通じて成長する


 小夢は、出会って早々の翼に「恋心に近い感情」を抱いている(第1話)。

小夢「翼先輩、女の人なのになんか男らしくって……恋ってこういう感じ?」


 その後も、小夢は翼に特別な感情を抱き続けるが、それが恋愛感情なのか、それとも友情の範疇に収まるものなのか、小夢にはわからない


 例えば、琉姫の後押しで、小夢と翼が遊園地デートをした時のこと(第5話)。

 2人が観覧車に乗る。

 窓から夕日が差し込み、雰囲気が盛り上がる。

小夢のモノローグ「どうしよう……観覧車で翼さんと2人きり……」

「小夢、何か悩んでない?いいよ、何でも聞くから」

小夢のモノローグ「……どうしよう!言っていいの?でもこの気持ちが恋なのかはっきりわからないし……ってか、好きって何?恋って?」



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 本作では、結局小夢の気持ちの正体は明言されない。

 したがって、本記事では「ソフト百合」という表現を使うことにした(性的な意味合いの強い「ガチ百合」に対して、「ソフト百合」は恋愛未満の関係を指すことが多い)。


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 それが恋愛感情なのか、それとも友情なのか気になるところではある……が!

 「こみっくがーるず」を語る上では、じつはそれはあまり重要ではない。

 注目すべきは……小夢が翼に対して特別な感情を抱いた結果、小夢がマンガ家として一段成長したということだ。


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 象徴的なのは第9話である。

 お菓子を食いまくった結果、小夢が太る。

 彼女はダイエットを始めるが……その結果、マンガのクオリティが低下する。

小夢のマンガを読んだ担当編集者「なんだか絵に覇気がありませんね。お話も弾んでないし……いつもの小夢先生らしさが感じられないです」

同様に翼「小夢の絵、いつもはもっと表情がいきいきしている。無理してるとそれが絵に出ちゃうと思うよ」


 つまり、「(菓子を食いまくって)クオリティの高いマンガを描くか」、それとも「(菓子を控えて)かわいい女の子でいるか」、この2択だ!


 小夢は悩む。

 そして結論を出す!

小夢のモノローグ「痩せてかわいい服を着たいし、翼さんに少しでもかわいいって思われたい。でも……今はマンガのことを一番に考えよう!でなきゃ一生後悔するもん!私らしく生きる……マンガのために!」


 そして小夢は菓子を食いまくり、マンガを描くのであった。


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 上述の通り、小夢はマイペースなキャラだ。

 ストイックさとか、ど根性とか、そういったものが不足していた。

 だから担当編集者は、彼女に「女子まんが家寮」を勧めた。


 しかしこの時、小夢はマンガ家としてストイックに生きる道を選んだ。

 そしてこれが功を奏し、この後マンガ家として人気を獲得していくのだが……はて、なぜ彼女はストイックさを獲得できたのだろうか?

 ……おそらく、翼の影響だ!


 翼は極めてストイックなキャラである。

 マンガ家として生きるために、多くのものを捨ててきた女の子だ(詳細は翼をご紹介する際に詳述する)。


 明言はされていないが……小夢は翼に特別な感情を抱き、「私もあんな風になりたい」と思ったのではないか。

 その結果、彼女は成長したのだ。

 恋は人を成長させるというが、まさにそれである!


※補足:以上、小夢が翼から影響を受けて成長したと申し上げてきた。しかし、じつは翼もまた小夢から影響を受けて変化しているのである(つまり、両者はいい意味で相互に影響を与え合う関係になっているのだ)。詳細は、翼についてご紹介する際に詳述する。


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 本記事では、小夢についてご説明してきました。

 あなたがクリエイターで、「小夢をリスぺクトとしたキャラ」を作る際には、以上ご参照いただければと思います。



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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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