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「5歳児の親権」の代わりに、「19歳の引きニートの親権」を巡って裁判しよう!!|『クレイマー、クレイマー』(2)

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テーマ発表!!


 前回に引き続き、映画「クレイマー、クレイマー」をベースに新しい物語を妄想します。

※「クレイマー、クレイマー」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。

嘉村 「クレイマー、クレイマー」は、妻に愛想を尽かされ見捨てられた男が、家事や育児に奮闘する中で「人の気持ちを思いやれる人間」に生まれ変わる成長譚ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?


案①


三葉 まずは、「クレイマー、クレイマー」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


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三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて以上を踏まえて「案①」は……ズバリ!「『クレイマー、クレイマー』 ~『子どもが引きニート』編」です。


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嘉村 引きニート!

三葉 ええ。「引きこもり」で、かつ「二―ト」。すなわち「引きニート」。

嘉村 ふむ。

三葉 ご説明しましょう。……「クレイマー、クレイマー」は、夫の視点から「離婚」と「息子の親権争い」を描いた作品です。したがって、主人公は夫。一方、妻は「敵役」であり「ライバルキャラ」であり、さらに子どもを愛しているという点では「同志」でもある。この2人が本作の中心人物ですが……もう1人!欠くことのできぬキャラがいます。それが、彼らの息子!

嘉村 なるほど。

三葉 「クレイマー、クレイマー」に登場するのは、5歳の男児です。物語冒頭、彼は小憎たらしい生意気なガキとして描かれています。妻に見捨てられた上、家事や育児に四苦八苦し、さらに職場の上司からは「仕事に支障が出るようでは困るなぁ」とプレッシャーをかけられる主人公。彼は、精神的にも肉体的にも追い詰められている。それなのに……このクソガキときたら!

嘉村 ふむふむ。

三葉 しかしある時、ふいに主人公は理解する。そう……少年は、突然母がいなくなり寂しかったのだ!そして、「僕が悪い子だからママはいなくなってしまったの?」と1人思い悩んでいた!つまり生意気な言動は、寂しさの裏返しだった!……主人公は息子を強く抱き締める。

嘉村 感動の名シーンですね。

三葉 その後、2人の仲は急激に改善します。主人公は、親バカになる。息子も父を信頼し、その期待に応えようとする。2人は、いまや仲よし親子だ!……と思いきや、ふいに元妻が戻ってきて「息子を引き取る」と言う。かくして親権争いの裁判が始まるのですが……それはさておいて。

嘉村 ええ。

三葉 以上ご説明した通り、「クレイマー、クレイマー」では息子が重要な役を担っています。すなわち、本作は「家庭をないがしろにしてきた利己的な主人公が、自分の過ちに気づき、人の気持ちを理解できる人間に成長する物語」ですが……息子こそが、その成長のきっかけなのです。

嘉村 確かに。

三葉 さらにまた、「クレイマー、クレイマー」は感動の人間ドラマとして知られていますが、その「感動」の半分くらいは少年の言動に由来するものでしょう。多くの鑑賞者が、幼い少年の演技(「小憎らしくもかわいらしい言動」→「じつは悩んでいたことが判明し、涙を流す健気な姿」→「仲よし親子になってからの満面の笑顔」)に涙したり、ほっこりしたり、感情を揺さぶられてきたはずです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて、そんな「本作のもう1人の主人公」と言っても過言ではない「息子」ですが……。

嘉村 ええ。

三葉 この「5歳の少年」を「いい年した引きニート」に置き換えると、「クレイマー、クレイマー」とはまた違ったユニークな物語になると思うんですよね!

嘉村 ははぁ……。

三葉 年齢は……そうですね。ここでは「主人公:50歳」「妻:48歳」「息子:19歳」ということにしましょう。息子は14歳から不登校になり、そのまま引きこもりのニートになった。

嘉村 ふむ。

三葉 息子を「引きニート」にすることで、どんなエピソードが生まれるかと言うと……まず、いい年ですからね。「クレイマー、クレイマー」の少年のように、「母を恋しがって父に反抗する」なんてことはないでしょう。

嘉村 まぁ、確かに。

三葉 むしろ……突如妻に見捨てられて呆然としている父に対して、「おい、オヤジ。どうでもいいけど、メシはまだ?」なんて容赦ないことを言いそうですよね。

嘉村 ふてぶてしい……。

三葉 あるいは、「いい年してオバサン1人満足させられないとかさぁ……かー、これだから昭和生まれはね!とか。

嘉村 うーむ、何様のつもりですかねぇ。「とりあえずお前は自立しろ!」と言いたい。

三葉 ただ……アレですよね。あまりにもかわいげがないのはよくない。

嘉村 そうですね。鑑賞者の反感を買ってしまいます。

三葉 そこで……憎まれ口を叩きつつも、心の中では「オレのせいだ。オレのせいで、母さんは出て行ったんだ!」と責任を感じていることにしましょう。

嘉村 なるほど。

三葉 その罪悪感から、彼は自発的に家事をするようになる。

嘉村 ふむふむ。

三葉 時間はあり余っていますからね。ネットで情報収集して、やたら凝った料理を作ったりする。そして、次第に家事が生きがいになってくる。

嘉村 ほぉ。

三葉 ホラ、長年の引きニートでしょ。「自分の役割」や「『人の役に立っている』という実感」に飢えているんですよ。人間誰だって「役割」や「生き甲斐」がほしいですからね。

嘉村 ふむ。

三葉 さらに、「オヤジ、あのさ……オレ、バイトしてみようと思うんだけど……」なんて言うようになる。

嘉村 おー、すごい!母がいなくなり、さらに父が威厳を失って、彼はようやく自立への第一歩を踏み出したわけですね。

三葉 そうそう。ところが……。

嘉村 何です?

三葉 主人公はそんな息子にイラつき、怒鳴ってしまう「いい加減にしろ!目障りだ!」。

嘉村 えっ……一体なぜ?

三葉 無論、息子の成長は喜ばしいことです。喜ばしいことです……が!しかしいま、主人公は妻に捨てられ、精神的に余裕を失っている。そして余裕を失った人間は、得てしてネガティブ・シンキングに陥るものです。

嘉村 ふーむ……。

三葉 そう……主人公には、息子の「成長」がゴマすりにしか見えなかったのです!彼は怒鳴る「家事の次は、バイトか!そうだよな、追い出されたくないよな!この家を追い出されたら、行くところなんてないもんな!いい年してオヤジに媚びを売ることしかできないなんて……嗚呼、情けないヤツだ!!」

嘉村 なるほど……。

三葉 父に怒鳴られ、息子は強いショックを受ける。彼は自室に逃げ込み、布団にくるまると声を押し殺して泣く。そして、自殺を決意する。

嘉村 自殺かぁ……。

三葉 数日後、主人公はふいに気がつく……息子が自殺しようとしていることに!見れば、息子の部屋には七輪やら練炭やらが並んでいるではないか!彼は強い衝撃を受け、そして自分がいかに利己的であったか、ようやく理解するのです。……悪いのは、妻ではない。息子でもない。自分だ!自分が家庭をないがしろにしてきた。だから妻は家を出た。息子も死のうとしている。

嘉村 ふむ。

三葉 主人公は、息子を強く抱き締める。初めは抵抗していた息子も、間もなく父を抱き返す。2人は涙を流し、鼻水を流し、涎を垂らし、そして互いに謝罪の言葉を口にする。

嘉村 感動の名場面なんでしょうが……「クレイマー、クレイマー」とはちょっと違いますよね。その……汚いというか……。

三葉 50歳のオッサンと、19歳の青年がワーワー泣きながら抱擁しているシーンですからね。そりゃ、純粋な5歳児の美しい涙と比べちゃかわいそうですよ。

嘉村 なるほど。

三葉 とまぁ、そんな醜さも含めて「クレイマー、クレイマー」とは一味違う物語になると思うんですよね!


案②


嘉村 続いて、「案②」にまいりましょう。

三葉 はい。「案②」は、「『クレイマー、クレイマー』 ~『ペット』編」です。


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嘉村 今度はペット!

三葉 ええ。「5歳児」の代わりに「ペット」というのもアリだなと思いまして。

嘉村 なるほど。

三葉 「ペット」と言っても様々ですが……そうですね。例えば大型犬、それも3頭。

嘉村 デカいし、多い!

三葉 主人公は、それまでペットの世話を妻に押しつけていた。「犬を飼いたい」と言い出したのは彼なのに……。そんな主人公に愛想を尽かし、妻は家を出る。主人公はショックを受けつつも犬の世話をしようとするが……えっ、どうやって?すべてを妻に任せていたため、どうしていいのか見当もつかない。

嘉村 ふむ。

三葉 何を食べさせればいいのかわからず、悩んだ末に残飯を与えてみる。犬は激怒して、主人公の腕に噛みつく。

嘉村 ふむふむ。

三葉 あるいは、仕事で帰りが遅くなると……またまた犬が激昂!エサをもらえぬ腹いせに、家の中をメチャクチャにしてしまう。彼のスーツはズタズタに引き裂かれ、パソコンには小便をかけられる。

嘉村 うーむ……。

三葉 主人公はカッとして思わずぶん殴ろうとするが、運動不足の中年男が野生に敵うはずもない。主人公は犬3頭に翻弄され、きりきり舞い。

嘉村 なるほど。

三葉 そんな苦労がしばらく続きますが……ふとしたことから、主人公と犬3頭は心が通じ合うようになる。そして犬たちは、寒い夜には主人公に寄り添い、心も体も温めてやる。一方、主人公も本当の家族のように感じるようになる。……が!そんな時にふいに元妻が現れ、犬の所有権を巡って裁判が始まるのです。

嘉村 なるほど。

三葉 とまぁ、そんなストーリーですね。

嘉村 人間と犬の交流を描いたハートウォーミングなストーリーになりそうですね。

三葉 あるいは、犬ではなくて爬虫類や昆虫にするのも面白そうですよね。例えば……タランチュラとか。

嘉村 タランチュラ……。

三葉 そのあまりにグロテスクな姿に身震いする主人公。しかし、次第にタランチュラの魅力を理解するようになり……というストーリーです。

嘉村 ははぁ……そして、元妻がタランチュラの所有権を巡って裁判を起こすわけですね?

三葉 ええ。

嘉村 なるほど……。

三葉 ユニークな物語になりそうでしょ?

嘉村 確かにユニークではありますが……。

三葉 以上、「『クレイマー、クレイマー』風物語」のアイデアをご紹介しました!


続きはこちら!!

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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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