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My 10 Best Films of 2019

昨年鑑賞した2019年新作映画(以下の60作品)から、マイベスト10について語ってみました。(2019年12月30日にInstagramにて投稿)

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1. クリード 炎の宿敵
2. 蜘蛛の巣を払う女
3. マイル22
4. ミスター・ガラス
5. ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー
6. サスペリア
7. フロントランナー
8. アクアマン
9. ファースト・マン
10. 女王陛下のお気に入り
11. THE GUILTY ギルティ
12. アリータ バトル・エンジェル
13. ビール・ストリートの恋人たち
14. グリーン ブック
15. 移動都市 モータル・エンジン
16. シンプル・フェイバー
17. スパイダーマン:スパイダーバース
18. 運び屋
19. ROMA/ローマ
20. キャプテン・マーベル
21. バンブルビー
22. ビリーブ 未来への大逆転
23. ブラック・クランズマン
24. ダンボ
25. レゴムービー2
26. バイス
27. ハンターキラー 潜航せよ
28. ビューティフル・ボーイ
29. 魂のゆくえ
30. シャザム!
31. ハイ・ライフ
32. 愛がなんだ
33. アベンジャーズ/エンドゲーム
34. 名探偵ピカチュウ
35. アメリカン・アニマルズ
36. レプリカズ
37. アナと世界の終わり
38. ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
39. アラジン
40. ハウス・ジャック・ビルド
41. メン・イン・ブラック インターナショナル
42. X-MEN:ダーク・フェニックス
43. スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
44. ハッピー・デス・デイ
45. 新聞記者
46. ある女流作家の罪と罰
47. トイ・ストーリー4
48. ハッピー・デス・デイ 2U
49. ワイルド・スピード スーパーコンボ
50. ライオン・キング
51. ロケットマン
52. ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
53. ブレードランナー ファイナル・カット(IMAX上映)
54. アド・アストラ
55. ジョーカー
56. アイリッシュマン
57. ドクター・スリープ
58. マリッジ・ストーリー
59. ジュマンジ ネクスト・レベル
60. スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け
(日本公開日順)

【第10位】
アベンジャーズ/エンドゲーム (原題:AVENGERS: ENDGAME)

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2019年は何かと節目になる一年だったと感じている。映画においてもそういった物語が今年数多く公開されたように思う。その代表作であり大傑作が本作であろう。

クリス・エヴァンス演じる「キャプテン・アメリカ」、ロバート・ダウニー・Jr演じる「アイアンマン」、クリス・ヘムズワース演じる「ソー」、スカーレット・ヨハンソン演じる「ブラック・ウィドウ」、マーク・ラファロ演じる「ハルク」、ジェレミー・レナー演じる「ホークアイ」。

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)はこれからフェーズ4に突入するのだが、彼らアベンジャーズの物語はここで幕を閉じる。

10年以上かけて作り上げてきたこの壮大なプロジェクトは、単一宇宙のなかに散りばめられた個々の映画がそれぞれに繋がりを持ち、映画の楽しみ方を拡張させる画期的なシステムの発明である。

本作は、その軌跡を振りながら、我われ観客がそれぞれにMCUとの歴史に想いを馳せ、宇宙の中心が今まさにここにあるかの如く、そして素晴らしい大団円によるビックバンの如く、エモーションの大爆発を引き起こす。

”Avengers, Assemble.” 

最高にアガるこの体験はもう拍手せざるを得ない。(同じディズニー傘下である「スター・ウォーズ」シークエル・トリロジーの最高責任者キャスリーン・ケネディ氏はこれに見習って猛省すべきでしょう。)

また次の新しい10年が始まるのだろう。新しい宇宙のカタチはどんなものになるのだろう。その宇宙の中心で、再び大爆発が再び起こる時を、今か今かと待ちわびる日がまた来るのだろう。

"I love you 3000."


【第9位】
ロケットマン (原題:ROCKETMAN)

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本作は「エルトン・ジョン」を題材とし、ブライアン・シンガー監督のトラブル後その役割を公開直前で引き継ぎ「ボヘミアン・ラプソディ」を完成させたデクスチャー・フレッチャー監督が手掛けるミュージカルムービー。

「ボヘミアン・ラプソディ」と本作を比較することは非常に野暮な話ではあるものの、どちらが愛おしい作品かと問われれば自分は必ず本作を選ぶ。

「ボヘミアン・ラプソディ」は、ラミ・マレック演じるフレディ・マーキュリーを大勢の人々が拍手喝采とともに迎え入れ、彼の存在を肯定しその物語を終える。

本作はそうではない。タロン・エガートン演じるエルトン・ジョンは、子供の頃から誰からも愛されることはなく、あらゆる愛する人たちからもことごとく拒絶される。絶望し孤独の世界へと突き進んでいく。

しかし、孤独を紛らわせるかのごとく身に纏った派手な衣装は、次第に燃え尽きていくかのように脱ぎ捨てられていくこととなる。

ついに彼が自らを解放させるのは、恵まれた仲間とともに超満員の大観衆から拍手喝采で迎えられる大きなステージではない。彼自身の心の奥にある小さなグループセラピー。彼を愛する人はいない。目の前にいるのは子供の頃の自分。そう。彼以外、誰もそこには存在しないのだ。

彼は彼を優しく抱きしめる。孤独の果てに、自分自身を愛することの大切さを知る。そして彼は、再出発するのだ。神に祝福された天才的な音楽で、この世界を愛するために。

“Rocket man Burning out his fuse up here alone”

ロケットマンはやがて太陽に到達する。まるで彼自身が独り皆を暖かい光で照らしてくれているようだ。


【第8位】
クリード 炎の宿敵 (原題:CREED Ⅱ)

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アポロ・クリードの息子VSイワン・ドラゴの息子!熱い!熱過ぎる!

本作は、大傑作「クリード チャンプを継ぐ男」の続編であると同時に「ロッキー4/炎の友情」のDNAを受け継ぐ作品でもある。この4作目以降「ロッキー」シリーズは迷走の一途を辿るのだが、一方「クリード」シリーズが生まれたことは大変喜ばしく思っている。

「親」になり守るべきものが出来たアドニス・クリードと、失うものなど何も無いヴィクター・ドラゴ。まるでシリーズの重責を担う「クリード」と名誉回復を誓う「ロッキー4」の戦いにも感じ取れる。

物語終盤、30年前の悪夢、アポロ・クリードVSイワン・ドラゴの記憶が蘇る。激闘の末「ロッキー4」の贖罪が果たされる。それは、誰よりもあの悪夢を知っているはずのロッキー・バルボアではなく、イワン・ドラゴによるものだった。彼もまたあの悪夢の当事者であるからだ。復讐よりも大切な、守るべきもがある「親」になったからだ。この瞬間、アドニスとヴィクターの勝敗も決まる。この戦いにこれ以上の決着の付け方が他にあるだろうか!素晴らしい脚本だと思う。

本作のテーマは「親の贖罪」であり「親になること」。イワン・ドラゴの勇気を目の当たりにし、ロッキーは「親」としての自分を取り戻すため、長男ボビーを訪ねる決意をする。今度はロッキーが、彼自身の贖罪を果たすのだ。

「ロッキー」1作目からそのDNAは脈々と受け継がれ、本作もまた「親」になる日が来るのだろう。

単なる続編映画などではない。単なるボクシング映画などではない。
『これは、人生〈する〉か〈しない〉かというその分かれ道で、〈する〉という方を選んだ勇気ある人々の物語です。(荻昌弘 「ロッキー」解説より引用)』


【第7位】
ファースト・マン(原題:FIRST MAN)

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“THAT’S ONE SMALL STEP FOR MAN, ONE GIANT LEAP FOR MANKIND.”
「人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である。」

本作は「セッション」「ラ・ラ・ランド」を手掛けたデイミアン・チャゼル監督が、〈初めて月に降り立った男、ニール・アームストロングの人生〉を、偉大な伝記映画としてではなく、ひとりの人間である彼が見たものとして描く、無謀とも言える挑戦である。

物語は、広大な宇宙にある月へ向かうためのミッションの過程を描く一方で、大切な存在を失った人間の奥深くへと入り込んでいく。我われ観客は壮大かつ私的で危険な旅を、コックピットの外側からではなく、その内側から体験するのだ。

そして手の届かない場所に降り立ち、広がる虚空を目の前にする。IMAXで撮影された高精細な"世界"と、あなたと自分だけの"セカイ"が衝突を起こすその瞬間、最初で最後の感情の爆発が起こる。

人類を飛躍させるほどに自らを駆り立て、命を危険に晒そうとさせるものは一体何なのか。

NASAの隔離施設。ライアン・ゴズリング演じるニールアームストロングとクレア・フォイ演じるジャネット・アームストロングが、ガラスで隔てられながら、無言で、見つめ合い、手を合わせる。後に彼らの夫婦関係にも対消滅が起こることを知っていると、苦悩や葛藤による大きな溝を乗り越えるための小さな希望を掴もうとするかのような二人に、深く想いを馳せることができるだろう。

ひとり自らの深淵を見つめてみる。遠く静かな月。

“THAT’S ONE SMALL STEP FOR A MAN, ONE GIANT LEAP FOR MANKIND.”
「ひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である。」


【第6位】
スパイダーマン:スパイダーバース(原題:SPIDER-MAN: INTO THE SPIDER-VERSE)

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大いなる誤算!放射性のクモに噛まれた!

全身に電流が駆け巡る衝撃!スマホでもタブレットでもテレビでも、決して味わえない映像体験!現代アート、ポップカルチャー、ヒップホップ、その他諸々混ぜ物キメて、ドラッギーな快感に溺れまくる!以前の自分にはもう戻れない!これが映画を観る幸せだ!

本作は、大好きな「LEGO® ムービー」で監督を務めたフィル・ロード&クリス・ミラーが製作(フィル・ロードは脚本も務める)していることからも分かるとおり、大人こそ唸らされるエンタテインメント性に富んだ大傑作であるし、もうこれは映画史のクラシックになること間違いなし。

少なくともモノづくりに携わる人間の端くれならば、知らないは許されないほどだろう。2019年に劇場の大画面で没入した経験の有無は非常に大きい。今年の第91回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞したことは誰もが認めるところ。

すでにBlu-ray&DVD、UHDもリリースされているが、プレミアム・エディションのパッケージングデザインがめちゃくちゃ良い!本作の高いエンタテインメント性をカタチにして広げてくれている。

「スパイダーマン」は、テレビアニメ版やサム・ライミ版、マーク・ウェブ版やMCU版(もちろん東映版も!)など、これまで様々な形で描かれているのだが、本作はマルチバースの設定を活かし、それら全てを否定することなく混ぜ込み、飲み込んで、その解釈の世界もまた上手く広げてくれている。その点においても非常に感心している。

この物語をキメれば自らの人生もまた、「親愛なる隣人」に、「大いなる期待」に描き換わるのだ!


【第5位】
ROMA/ローマ (原題:ROMA) 

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石造りの壁だろうか。
小鳥の囀りが聞こえる。
水が流れてくる。
ブラシの音。
四角い光が水面に浮かび上がる。
飛行機のシルエットが小さく横切る。
壁ではない。切り取られた空が写り込んだ床。
泡混じりの水が寄せては返す。
排水口に流れ落ちていく音。
カメラはゆっくりと顔を上げる。
掃除をする家政婦。
彼女の空間。
彼女の時間。

心奪われ引き込まれる見事なオープニングシーンである。

本作はアカデミー賞でも物議を醸したNetflix作品で、2018年12月14日に配信されていたものの、劇場公開は2019年3月9日であったため、My 10 Best Films of 2019に入れさせていただく。

監督はアルフォンソ・キュアロン。彼の幼少期に基づく「記憶」の物語。そして過去作同様、本作も「死」と「再生」をテーマとしており、その作家性にも心惹かれるものがある。

メインビジュアルは、三角形の構図となっており、例えば中央にイエス・キリストを配したラファエロの「カニジャーニの聖家族」のような、宗教画的でもある。また、オープニングシーンと呼応する素晴らしいシークエンスでもある。

そしてエンディングシーン。かつて「死んでるのもイイね」と言っていたヤリッツァ・アパリシオ演じる家政婦クレオは、「話がたくさんあるの」と言ってその屋上へと歩いていく。
カメラはゆっくりと顔を上げる。
空が映し出される。
飛行機の小さなシルエットが横切る。
小鳥の囀りが聞こえる。

オープニングとエンディングが対になるその表現は、まさに「死」と「再生」にふさわしく、前作「ゼロ・グラビティ」においては、宇宙に始まり大地に終わる構成となっており、本作との対になっているようでこれまた興味深い。

自分にとってキュアロン監督の作品は、何度も「再生」される「記憶」となっている。


【第4位】
グリーンブック (原題:GREEN BOOK)

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ケンタッキーフライドチキンが食べたい!

ハンバーガーやフライドポテトなどコーラ片手に無性に食べたくなる映画は素晴らしいと個人的には考えています(笑)

本作は、差別が色濃く残るアメリカ南部での演奏ツアーを通じて、マハーシャラ・アリ演じる孤高の天才黒人ピアニストのドクター・シャーリーと、ヴィゴ・モーテンセン演じるガサツで無教養なイタリア系用心棒のトニー・リップが、人種や価値観は違えど、次第に互いを理解し友情を育むロードムービー。

人種差別を超えた未来を見せてくれたようにも思う。この手の作品はよくあるかもしれないが、本作は「メリーに首ったけ」など下品なコメディを手掛けてきたピーター・ファレリー監督らしい、差別や偏見を笑いで乗り越えようとする点で、スパイスの効いた一味違う映画となっている。

劇中、2人がケンタッキー州ルイビルへ向かう車中で、その味を初めて知った本場のフライドチキン。食べづらいという理由で白人たちが捨てる部位を、黒人奴隷が拾ってきて油で揚げたことが始まりとされる彼らのソウルフードだ。次の道中で目にするのは黒人の労働者たち。彼らの視線はこちらに向けられている。

本作の予告編でしか流れないのは残念だったが、ドクター・シャーリーとトニー・リップの友情にインスパイアされたとされるAloe Blaccの”I Count On Me”も非常に素晴らしかった。

素敵な音楽。雪の降る夜。緑の旅のお守り。あのフライドチキンの味。かけがえのない家族や友人たちと過ごす暖かい空間を、決して手軽に味わえるものではない大切な時間を、より一層引き立たせてくれるのだ。


【第3位】
アメリカン・アニマルズ (原題:AMERICAN ANIMALS)

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2019年上半期のマイベストフィルム。

「オレたちは待っていた、何かが起こる日を。その何かが起これば、最高の人生になる。やるか、やらないか。」

大学図書館に貯蔵されている1,200万ドルの希少なオーデュポンの画集「アメリカの鳥類」を盗み出す計画を企てる大学生4人の運命を描く本作は、クールでオシャレなケイパームービーではなく、あまりにもお粗末で滑稽な失敗談。

しかしながらどうしても本作に惹きつけられてしまうのは、実際の事件を題材とし、また実際の犯人たちが登場する奇抜な演出も然ることながら、「あなたは特別な存在」と言われ思わされ育ち、そしてある時「何者でもない」と自分を見失い「何者かになりたい」と強く焦がれ、くだらない日常に風穴を開けようとする現代社会の普遍性がそこにあるからだ。

誰もが思い出せる。自分は、自分たちは、今並外れたことをしていると、世界の中心は今ここにあると、楽しかった時間を。

「成功」とは何だろうか。Facebook、Twitter、Instagram、SNSでステータスを誇示し「自分は人とは違うのだ」ということを見せつけ、見せつけられ、日々生きている。現代社会の捕食者となるのか被食者となるのか。

そんな刺激を追い求めるあまり、いつの間にか道に迷っているのかもしれない。かつて地上からケンタッキーの洞窟の奥深くへ、何世代もかけゆっくり移住したアメリカの動物のように、現代人もまた進化を目指して暗闇を歩いているのかもしれない。その断片の一つがあの窃盗事件における彼らの存在意義であり、本作なのかもしれない。

夜の路上のフラミンゴ。どの視点で、誰の視点で、あの日のことを思い出そうか。


【第2位】
トイ・ストーリー4 (原題:TOY STORY 4)

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「続編なんて止せばいいのに。」
そう思ったのは決して自分だけではないはず。

前作「トイ・ストーリー3」の見事なまでの幕引きによる感動をその美しい姿のまま残し続けたいと心に仕舞い込んだ9年後、随分と埃を被っていただろうか。まさか引っ張り出してくることになろうとは思わなかった。恐る恐る覗き込んでみる。

不穏な状況で始まる本作は、そんな自分の感情とも相俟って、ホラー映画的な緊張感と死の匂いを漂わせている。

しかしこれは「トイ・ストーリー」であり、生物的な死についての物語ではない。主人公ウッディたちおもちゃで言うなれば「子どもに愛される」という「役目」の死である。同時にそれはPixarとしての、トイ・ストーリーの作り手としての「子どもたちを楽しませる」という役目も意識せざるを得ないところだろう。また例えば、親という役目然り、会社員としての役目然り、社会での役目然り。この映画を前にした我われ観客もまた同様である。

永遠に続くことはない。誰にでもその役目を終える日がいつか来るのである。その後をどう生きるのか。

固執するかのように「もう俺にはこれしかないんだよ。他にできることはない」「迷子のおもちゃには分からないだろうな」と言い放つウッディに対し、たくましく成長したボー・ピープの言葉。

”I’m not the one who’s lost.”
「迷子はあなたのほうじゃないの。/私は(役目を)無くしたおもちゃじゃないの。」

独り残されたウッディが戻るのは、アンティークショップ「セカンド・チャンス」。そこで彼は知る。

”All I want is a chance for just one of those moments.” 

それは、長い間店の奥で忘れられた存在であるギャビー・ギャビーの唯一の願い。ウッディが、アンディと、仲間たちと、「トイ・ストーリー」を愛し続けた我われ観客と、ともに育み全うしてきた人生そのもの。

彼は決断する。自身のボイス・ボックスを彼女に、大切な仲間たちをバズに、保安官バッジをジェシーに、「子どもに愛される」という「役目」をフォーキーに、様々な形で彼は想いを託していく。人生の更なる広がりと豊かさを再発見する。そして同時に我われ観客にそれを教えてくれる。

花が種子を蒔くように、想いは次の世代へと受け継がれていく。観覧車の灯りがまるで花火のようにウッディの門出を祝福する。

ウッディたちはおもちゃとしてこれからも変らず愛され続けていくんだよ、と締め括る「トイ・ストーリー3」のラストは最高に甘美なハッピーエンドかもしれない。しかし、その循環の中に彼らを永遠に閉じ込めて変わらぬ感動を愛玩していたいという考えは、「トイ・ストーリー2」でプロスペクターを悪役たらしめたものと何ら変わりないのだ。

本作によって、そんな呪縛から解放され、野に放たれる。トイ・ストーリーに新たな風が吹く。埃ではなく綿毛が空を舞う。

「無限の彼方へ」
「さあ行くぞ」


【第1位】
ジョーカー (原題:JOKER)

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- ぼくらに残された時間はあと3分。彼はぼくの口に銃口を突っ込んでいるからだ。

「人生はクローズアップで見れば悲劇であるが、ロングショットで見れば喜劇である。」

劇中で引用されている「モダン・タイムズ」の主人公を演じるチャーリー・チャップリンの名言と同様に悲劇にも喜劇にもなり得る本作は、ホアキン・フェニックス演じる主人公アーサー・フレックを搾取し続け、孤独に追いやり、見捨てられゴミのように扱う社会に対する復讐が描かれながらも、映画製作の資金調達や観客の呼び込みのためにアメコミ映画という仮面を被り、「ハングオーバー!」シリーズを手掛けてきたトッド・フィリップス監督による不謹慎な笑いを見せつけている。

時に笑い、時に笑えずに本作を観てしまうのは、アーサーに感情移入している一方で、ゴッサム・シティの映し鏡であるこの実社会のなか、綺麗事で眩まされた不公平や格差に疾うに気づいていながらも、他者に搾取される側であると同時に他者を搾取している側でもあるからだろう。

まるで劇中の、アーサーの看板を奪い彼を袋叩きにするストリートギャングの若者の一人のように。地下鉄で女性をからかうビジネスマンの一人のように。

アーサーはぼくの口に銃口を突っ込んでいる。

監督のインタビュー記事にもある通り「彼は有名な犯罪者ではなく、アスファルトに咲いた小さな花。」その花をロングショットで笑い蔑むのか、または無いものとして見て見ぬ振りをするのか、もしくはクローズアップで思いやりの手を差し伸べるのか。差し伸べ続けられるのか。

チャップリンの「スマイル」が聴こえてくる。

”PUT ON A HAPPY FACE” 

鏡の向こうから彼がこちらを見返している。

ぼくは、今まさにこの稚拙な文章を読むあなたの、オマエの、口に銃口を突っ込んでいるからだ。

"You get what you fucking deserve!"

2019年のマイベストフィルム。

Just thinking of a joke.
You wouldn’t get it.



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