死ぬことすら出来ない辛さ 26 〜訪問初日の夜
訪問看護や訪問介護が終わったら夫婦二人で水入らずの時間。
夫にお姫様抱っこをしてもらい、リクライニング型車椅子に移乗しリビングへ。
もっと優しくやってよと毎回言うが、いつも首が後ろにだらんと投げ出されている。
やられる身になってみて欲しいものだ。
痛いし苦しいし。
お姫様抱っこは悪く無いけど、どうも昔と違って愛情を感じられないのよね。
だからたまに聞くことにしてるの
「 愛してる? 」
「 愛してるよ 」
夫は決まって即答してくれるけど、やってることには愛情が感じられない。
結婚して30年以上。付き合った時からすれば40年近く一緒にいるわけだから、あの頃のままって訳にはいかないだろうけど。
子供が出来なかったから夫以外に愛情を注ぐことはなかった。
動けなくなったことで活動範囲が狭くなり、他に目を向けることもなかった。
別に浮気しても良いんだけどね。
ちゃんと面倒見てくれるなら。
って、面倒見てたら浮気なんて出来ないか。
今日も夫の介助で晩ご飯。
ご飯と言っても昼間と変わらないどろどろの液体を食べる。
やっぱり慣れている人にやってもらうと安心するわ。
看護師だからって過度に期待しすぎたのかしら。
夫の介助だと食事がスムーズ。
ほら、あっと言う間にコップ一杯食べたわよ。
・・・一時間かかったけど。
介助しながらご飯を食べる夫。
もちろんお酒を飲みながら。
車椅子からベッドに移乗させなきゃいけないのにいつもベロベロになるまで飲むのよね。
そのくらいにしたら?って言っても聞きやしない。
お酒取り上げて捨ててやりたいわ。
・・・動かないから無理だけど。
酔ったままでお風呂とか、危ないってわからないのかしら。
何かあっても助けに行けないし、助けを呼べないのに。
私の心配なんてうるさいとしか思ってないんだろうな。
テレビを見ている間に夫はお風呂。
お風呂から上がったらベッドに戻る。
またお姫様抱っこ。
頭は後ろへぶらーん。
酔った人に抱えられるこのスリル。
数秒だけど本当に怖いのよ。
オムツ交換をして痛み止めの座薬を挿れてもらう。
だから恥ずかしくないのよ。慣れよ、慣れ。
痛み止めを挿れても数時間しか効果ないのよね。
さて、おやすみなさい。
って言っても、うとうとしか出来ないのよね。
夫は私の横にベッドを並べて寝る。
酔っているからすぐにいびきが聞こえてくる。
すぐに眠れるなんて羨ましいわ。
夫を出来るだけ起こさないように頑張る。
痛みに耐えながら。
あぁ、たまには私も熟睡したいわ。
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