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短編小説

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これまでに書いた短編小説です。
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【短編小説】花柄の傘だって差せるくせに

なんかねー、「男性が女性に向ける羨望と失望」的なものが書きたかったんですけど、途中からちょっとわけが分からなくなりました。話があちこちに飛びすぎなんだよ。 まあ戯言です。主語がややデカなんですけど、気にしないで雰囲気で読んでね。  東京に戻ってみると、あいにくの雨だった。  運悪くかばんの中に折りたたみ傘もなかったため、俺は駅ナカのコンビニでビニール傘を買ってから、雑踏の中へと出ていった。  張りのある厚いビニールに雨が当たって、ボツボツという質量のある音が頭上で響く。高

【短編小説】いちごジャムの食べすぎ【健全】

オリジナルバージョンが利用規約に抵触していたらしく、公開停止になったので書きました。自主規制バージョンです。利用規約は読みました。 (正直あんま釈然としない🫤) オリジナルバージョンはこれ↓ 「おくすり飲んで寝よう」と「アメリカ民謡研究会」を聴きながら書いた。 あと「意識の流れ」的なことにチャレンジしてみたかった。 心が弱い人の解像度が低すぎるな……🙄  ひとが「あなたのためを思って言うの。いつか絶対後悔するよ」とかほざくとき、私はその中を漂う傲慢のにおいにひどく吐

【短編小説】視線、笑い──不快、偽善

不躾な視線と差別意識と、不愉快なときに出る笑いについて ※若干の差別的描写を含みます  最初に感じたのは不快感だった。  にわかに混み出した電車内で、その人物は一人で二席を占領していた。  次に感じたのは、納得だった。  正面にいるその人物をよくよく見てみると、何やら目の焦点が合っていない。口からは絶えず不明瞭なうめき声が漏れている。服装もどこかちぐはぐだ。 「ああ、おそらく何かしらの知的障害があるのだろう」──その人物が、ダン、と大きな音を立てて床を踏みつけた。おっ

【超短編小説】幸せってオーバーフローすると死にたくなるよね

 今日は朝から抜けるような青空だった。出かけるとき、近所の人と挨拶をした。  久々に旧友に会った。元気そうだった。とりとめのない話をして、二人でお茶をした。  夕暮れ時、色の抜けつつある空にかかる雲の下から、神がかった金色の光がさしていた。  鳥が飛んでいる。  死んでもいいかな、と思った。  電車が目の前を通りすぎる。ガタンゴトンと轟音が響き、一陣の風が吹く。  生ぬるい風を浴びながら、辺りを見回す。たくさんの人がいる。家族連れがいる、ビジネスマンがいる、カップルがい

【短編小説】ムーサは自分を去勢することにした・B面

A面↓ 「ある女性アーティスト」本人視点です。こんなこと考えるヤツがあるか! A面と合わせても中々に意味不明だなぁ……漠然と頭の中にあった「書きたいこと」を上手く言語化しきれなかった感じ。 でも、これ以上書いても冗長になってしまうので、ここで筆を置くことにします。  公平を期するため、先に告白しておくとしよう。私は女である。  それでは、私の夢想を聞いてもらおうか。  思うに、自分の中にある「創造性」の量には限りがある。  だから、我々はこれを無為に浪費してしまうこ

【短編小説】ムーサは自分を去勢することにした・A面

「ある女性アーティスト」をテーマに書きました 「他人から見たある人の姿を描き出す」ってなかなか難しいな〜〜 【美術大学の同級生曰く】  あの人はいかにも芸術家らしい芸術家だった。  寝食を忘れ、見た目にも気を遣わず、ときに風呂に入ることすら忘れて夢中で作品を制作し続ける。  その様は半ば狂気的ですらあり、彼女、いつかぶっ倒れて死ぬんじゃないかと、僕は密かに心配していたよ。  いや──これはふとした思いつきだけど──ひょっとすると、彼女は死にたがっていたのかもしれないね。

【短編小説】パンドラの箱を開けなければ人間じゃない

よくあるマッドサイエンティストの独白(中二感マシマシ) 登場人物の心情について直接的に説明しすぎるなぁ……やっぱ三人称視点で書いた方がいいのかね🤔 いまいち不完全燃焼なので、そのうち書き直すかもしれない  人工子宮の中で育まれた私たちの愛し子は、証拠品として「押収」されたそうだ。  私たちが行ったことは、この国の法律上禁忌にあたるらしい。いや、この国に限らず、多くの人間は私たちの行いを「生命倫理にもとるもの」として糾弾するのだろう。  法律は没人格的に見えて、実のところ「

【短編小説?】ラブレター

「上位存在の書くラブレター」という性癖!! ワーッ!!!  今この瞬間まで、貴方が生きてきたことを絶対的に肯定したいのです。  貴方が生まれて、どういう境涯にせよ今日という日まで死なずに生きてきて、何かを思って私の前にいる。息をしている。ものを食べたり、眠ったりする。ただ、存在している──喜ばしいことではありませんか。  貴方がこの世に生を享けてから、きっと、辛いことも楽しいこともあったのだろうと思います。ひょっとすると、死にたくなるようなことすらあったかもしれません。  

【短編小説】白昼の幽霊

ブラック企業を辞めて田舎に引っ越した人が、かつての同僚に向けて懺悔する短編小説です。 以前、女→女のクソデカ感情を書いたので、今回は男→男のクソデカ感情を書いてみました。ただ、これをBLと呼ぶかというと違う気もする。 まあ、一応BLタグもつけとくか…… 同性間のクソデカ感情を書いた作品って、好き嫌い分かれるだろうしな。  昔「イタリアでは、最も影の短くなる真昼間に幽霊が出るのだ」と聞いたことがある。なんでも、影が短くなる時間は魂にとって良くないらしい。  それに、地中海

【短編小説】三週間だけの魔法をかけて

間近に結婚を控えている人とネイリストの精神的百合小説です 百合です!!!(重要) バタイユらの現代思想&椎名林檎《女の子は誰でも》の混合物 (こいついっつもバタイユの話してんな) 片方に婚約中の彼氏がいる設定ではありますが、女→女のクソデカ感情を描いているので、私的には百合だと思っています 合わない人は帰ってくれよな!!  シアーな指先に小さな金色のパーツが乗せられる。  ほんの一瞬の、ささやかな贅沢。僅かばかりの煌めき。心躍る刹那。 「…わたし、今度結婚するんです