亜北瓔(あきた よう)

主に小説を投稿しています。 女の子と男の子の母でもあります。 趣味は映画鑑賞。たい焼き…

亜北瓔(あきた よう)

主に小説を投稿しています。 女の子と男の子の母でもあります。 趣味は映画鑑賞。たい焼きは頭から食べる派です。 ぜひ、フォローやスキお願いします!

最近の記事

【小説】たっちゃん

こちらの小説は、地域の文学賞に応募した作品ですが選外になったものです。結果は残念でしたが、たくさんの人に読んでいただけたらと思います。 たっちゃんの右腕は、Tシャツを着ると見えなかった。反対の左腕はTシャツを着ると袖から少し見えて、Tシャツの袖から少し見える左腕には二本の指がついていた。だからたっちゃんはじゃんけんをする時、「グー」は右腕、「チョキ」は左腕を出して、「パー」を出す時は口で「パー」と言った。それがたっちゃんのじゃんけんだった。  時計の長針が十の数字に重なる。

    • 【日記】旦那に靴紐を結んでもらう

      突然ですが、私の旦那はスニーカーが好きです。 旦那はインスタグラムや、さまざまなブランドのサイトからスニーカーの情報を集め、あれが欲しい、これが欲しいと、いつもあれこれぶつぶつ言っています。 以前、旦那になぜそんなにスニーカーが好きなのか聞いてみたら、「かっこいいから」とだけ答えられました。 そんな旦那に、「そろそろスニーカーを買おうと思うんだけど、どんなスニーカーがありますかね」と聞いてみたところ、おすすめのスニーカーを教えてもらい、「かっこいい」スニーカーがあったので

      • 【短編小説】娘がピアノを辞めた日

        「ごあいさつをします」 トイストーリーのエプロンを付けた芳香先生は、大げさに気を付けのポーズをとって背筋を伸ばした。 「みなさん、ごいっしょに、さようなら」  芳香先生の「さようなら」に合わせるように園児たちも「さよぉーなら」と、小さい頭を突き出すようにお辞儀をする。 化粧っけのない日焼けした芳香先生の顔にはニコニコという効果音がぴったりな笑顔が張り付けている。芳香先生は帰りの挨拶を終えるとバスに乗り込んだ。手を振る芳香先生を乗せたバスを見送って、私の右横に立っていた

        • 【小説】made

          来年の新人賞にスケボー小説を応募しようと思っています。 現時点では、未完成なのですが もし、少しでもおもしろいと思っていただけたら♡スキお願いします。 1 いつも練習で滑っている河川敷の地面とは違い、大会のパークの地面には細かい砂利が一切ない。打ちっぱなしのコンクリートでできたような摩擦がない地面は、いつもよりも滑りがなめらかだ。  さっき、本番前にウォーミングアップで軽くパークを滑った時、【春の匂い】が鼻をかすめた。【春の匂い】は、厳しい冬の終わりを告げ、暖かな春の到来

        【小説】たっちゃん

          【小説】タイトルが思いつかなかった小説~第三章【完】~

          こちらの小説は、恋愛小説を書こうと思って書いた小説です。ぜひ、読んでいただけると嬉しいです。 先に【タイトルが思いつかなかった小説第一章、第二章】をお読みになってからこちらをお読みください。 第三章  待ち合わせの時間よりだいぶ早く電車に乗った。今日、結花との待ち合わせは6時半に渋谷のハチ公前だった。6時半に二人なら、俺は予約をしなくてもどこかしらの店には入れると思ったが、「待ったりしたら嫌だから」と、結花は事前に店に予約を入れた。結花は物事がスムーズに進まないことをひ

          【小説】タイトルが思いつかなかった小説~第三章【完】~

          【小説】タイトルが思いつかなかった小説~第二章~

          こちらの小説は、恋愛小説を書こうと思って書いた小説です。ぜひ、読んでいただけると嬉しいです。 先に【タイトルが思いつかなかった小説~第一章~】をお読みになってからこちらをお読みください。 第二章  俺、耳に蝉飼ってたことあるんだ。一昨年の夏頃。そう、蝉。 休みの日、家にいたら蝉の鳴き声がやたら気になって、耳障りでうっとうしいなって思ったから、窓開けて扇風機回してたから、窓閉めてエアコンを付けたんだ。  俺んちのエアコン古いから、スイッチ押してもなかなかすぐに動いてくれな

          【小説】タイトルが思いつかなかった小説~第二章~

          【小説】タイトルが思いつかなかった小説~第一章~

          こちらの小説は、恋愛小説を書こうと思って書いた小説です。 ぜひ、読んでいただけると嬉しいです。 第一章 先にベッドに腰掛けた阿久津の左横に俺が座ると、ベッドのスプリングが軋む音がした。一人暮らしを始める時に買ったこのシングルベッドは、トランポリンほどではないけれど、阿久津より体重が重い俺がベッドに腰掛けると、隣にいる阿久津を微かに弾ませた。弾んだ揺れを待ってから、阿久津の顔がこちらを向く。阿久津は俺と目を合わせず、静かに自分の顔を俺に近づけた。 顔を近づいてきた阿久津に俺

          【小説】タイトルが思いつかなかった小説~第一章~

          【小説】悩みのヒントを差し上げます ヒント屋キタミ【完】

          こちらの小説は、『小説現代長編新人賞』で一次選考通過した作品です。 多くの人に読んでいただければと思います。ぜひ、感想などいただけると嬉しいです。 ぜひ、悩みのヒントを差し上げます ヒント屋キタミ①、②、③を先にお読みになってからこちらをお読みください。 4  ◇今月の人生相談◇ 【十九歳 専門学生 K・Uさんからの相談  私は、シンガーソングライターを目指している19歳、女子です。  この間、初めての路上ライブで、自分で作詞作曲した歌を歌いました。私が作った歌を

          【小説】悩みのヒントを差し上げます ヒント屋キタミ【完】

          【小説】悩みのヒントを差し上げます ヒント屋キタミ③

          こちらの小説は、『小説現代長編新人賞』で一次選考通過した作品です。 多くの人に読んでいただければと思います。ぜひ、感想などいただけると嬉しいです。 「悩みのヒントを差し上げます ヒント屋キタミ①、②」を先にお読みになってからこちらをお読みください。 3  取引先との打ち合わせが早めに終わった。担当の館林さんは、毎度話を切り上げるのが早い。館林さんとは今日で会うのは3回目だ。 「そのニット、可愛いですね」  帰り際、エレベーターが来るまで間が持たなくて私は彼女に話しか

          【小説】悩みのヒントを差し上げます ヒント屋キタミ③

          【小説】悩みのヒントを差し上げます ヒント屋キタミ②

          こちらの小説は、『小説現代長編新人賞』で一次選考通過した作品です。 多くの人に読んでいただければと思います。ぜひ、感想などいただけると嬉しいです。 「悩みのヒントを差し上げます ヒント屋キタミ①」を先にお読みになってからこちらをお読みください。  2 「ここ、居心地いいですね」  カウンターチェアに座り僕はカウンター越しの店主に話しかけた。 「それはよかったです」  店主はヤカンのお湯を注ぎながら僕を見ずに答えた。ここからコーヒーを淹れる店主を眺めていると、自分が

          【小説】悩みのヒントを差し上げます ヒント屋キタミ②

          【小説】悩みのヒントを差し上げます ヒント屋キタミ①

          こちらの小説は、『小説現代長編新人賞』で一次選考通過した作品です。 多くの人に読んでいただければと思います。ぜひ、感想などいただけると嬉しいです。  プロローグ  午後のグラウンドは巨大な反射板みたいで眩しかった。隠れる場所もなく一面に広がるグラウンドは太陽のスポットライトに照らされているようだった。うす茶色のグラウンドに背を向けて、ピロティに腰掛けると日陰に目が慣れるまでしばらく待った。 きっとドラマや映画ならこういう時、学校の屋上でサボるんだろうなと思う。高校生の男

          【小説】悩みのヒントを差し上げます ヒント屋キタミ①