逢見るい
たらたらと吐き出してゆく
未発表の短編たち置き場。 まだ未修整ですゆえ、誤字脱字諸々ご了承くださいませ。
わたしはとても強いので、弱いひとの気持ちがわからない。 理解しようとは思うのだけれど、完璧に理解することは難しい。 ずっとそう思っていたのですが、眠れない夜にち…
網戸にしていた窓の向こうから、無機質な室内へと金木犀の香りが風と共に運ばれてくる。なびいたカーテンがパタパタと音をたてて、まるで心地のいい子守唄のようだっ…
美しさは隠せないと、彼女を見ているとそう思う。 「ひさびさーっ」 でもないか、と片手をあげて、改札口を抜けた彼女が小走りに近づいてくる。平日とはいえちょうど帰…
2023年9月6日 19:45
わたしはとても強いので、弱いひとの気持ちがわからない。理解しようとは思うのだけれど、完璧に理解することは難しい。ずっとそう思っていたのですが、眠れない夜にちょっと考えてみて、思ったのですよ。「いちいち怒っても無駄だから我慢しよう」「弱音吐いても解決しないから呑み込もう」「他人に頼るより自分でやったほうが早い」「自分のことは自力で解決しよう」「できないのではなくやるのだ、周りに迷惑
2022年1月25日 23:47
網戸にしていた窓の向こうから、無機質な室内へと金木犀の香りが風と共に運ばれてくる。なびいたカーテンがパタパタと音をたてて、まるで心地のいい子守唄のようだった。「山口さん、山口忠雄さーん」 名前を呼ぶと、一列に並んだ待合室のベンチシートから、老人がゆっくりと立ち上がった。「はいはい、はい」 右膝に手を添え、まずはお尻を持ち上げると、よいしょっと掛け声をつけて、曲がった腰を伸ばし、一歩ず
2022年1月25日 23:38
美しさは隠せないと、彼女を見ているとそう思う。「ひさびさーっ」 でもないか、と片手をあげて、改札口を抜けた彼女が小走りに近づいてくる。平日とはいえちょうど帰宅ラッシュの時間帯のせいか、駅前はひとで溢れていた。たった数メートルの間に、ひとり、またひとりと男たちが彼女を振り返ったのだけれど、当の本人はちっとも気づいてなどいない。 街中で見ると、彼女のスタイルがどれほど抜きんでているかということ