無知の知
まだ24歳。
もう24歳。
人生は短い。
悲観的に捉えているわけではない。
やりたいことが多すぎて
収拾がつかないのだ。
24歳といえば
ビシッとスーツを着込み
パンプスをカツカツ鳴らして
東京の街を颯爽と歩いているものだと思っていた
現状に不満があるわけではない
ある程度のお金と自由は与えられている
愛してくれるパートナーだっている
ただただ
拭い去れない焦燥感
このままでいいのだろうか
もっとやるべきことはあるのではないだろうか
そんな囁きが
ふとした時に頭から離れなくなる
特に
自分よりも圧倒的に勝った人と出会った時
まだダメだ
まだまだ学ばなくては
知らないことが多すぎる
自分はいったい今まで何をやってきたのだろうか
本当にいつか実を結ぶ日が来るのだろうか
優れている方だと思ってきた
プライドは高い方だ
比較的裕福な家庭に恵まれ
小学生の頃から受験戦争に揉まれ
第一志望の私立中学に合格し
成績は常に優秀
いつも学年のトップ層に食い込んできた
そして
そんな自分が好きだった
語学だって
留学が叶わないのならと
独学でマスターした
そんな努力家の私をみて
知人はいつも賞賛してくれた
就活が近づく頃
自分の夢を形にするため
経営を学ぶコミュニティに所属した
身の回りの人がわからないようなことを学び
ひたひたとした優越感はあった
新卒入社した会社を1年でやめ
フリーランスとなった今年
さらに人からチヤホヤされることが多くなった
フェイスブックの投稿を見て
昔の知人から声をかけられることも多くなった
フリーランスという言葉の響きに
酔っているところがあった
経営者に声をかけてアポを漕ぎ着けるという
大胆不敵な行動力には
我ながら脱帽したいところだ
しかしだ
共通言語がわからないもいいところ
できる方だと思っていた英語もあやふや
Really?とThat's greatを合間に挟むことで精一杯
証券会社やらコンピュータサイエンスやら
何の話だかさっぱりわからない
守備範囲だと思っていた旅行でさえ
世界中で仕事をしたことのある人に比べれば敵わない
わかっている
頭ではわかっている
これが年齢による経験値の差であることを
人は言う
比べるなと
若いうちは好きなことをやれと
何を焦っているのかと
無責任にもほどがある
世界にはこれだけたくさんの事象があるというのに
未知で溢れているというのに
一体どう気にせず生きろというのだ
最寄りの駅で降りる
20代後半の女性
旦那さんの肩にあずけた
指に光る結婚指輪
なんだか眩しかった
彼らの慎ましく小さな幸せが
心底眩しかった
夢は日本社会を変えるだの
随分大口をたたえていたような気がする
もちろん本気だし
それに人生をかけても後悔しないと思う
だが
遠すぎて
あまりにも遠すぎて
何光年先なのだろうか
母はこぼした、
「あんたが普通の子だったらよかったのに」
心底そう思う
普通の女の子だったら
何も考えることなどなく
もっと幸せに生きていたのだろうか
まずは知ることだ
無知の知、という言葉がある
自分が無知であることを
知っているだけ
救いようがあるのかもしれない。
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