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雑文

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主に読書感想文を載せています。ネタバレしない内容を心がけてますが、気にする人は避けてください。批評ではなく、感想文です。
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2017年8月の記事一覧

アリス・マンロー 『ジュリエット』

★★★★★

 2004年、アリス・マンローが73歳のときに刊行された短篇集。翻訳版は2016年。原題は『Runaway(家出)』ですが、映画化された連作短篇に倣って『ジュリエット』にしたそうです(映画のタイトルは『ジュリエッタ』)。

 アリス・マンローの小説がいまひとつ好きではないという友人が、その理由として、なんとなく話がぼんやりしているから、と言っていました。
 なるほど。そう言う気持ちも

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クセニヤ・メルニク 『五月の雪』

★★★★☆

 ロシアに生まれ、15歳でアメリカに移住した作家クセニヤ・メルニクの処女短篇集。9篇収録。

 ロシアの極東の町マガダンを中心にした物語です。ソビエト連邦とその崩壊、シベリア強制収容所、共産主義下での生活といった歴史的背景を下地として、市井の人々の人生や人生の一コマが丁寧に描かれています。
 ふつうの短篇集と思って読んでいたら、途中から前の話の登場人物が出ていることに気がつきました。

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ジェイムズ・ディッキー 『救い出される』

★★★☆☆

 村上柴田翻訳堂シリーズ。原書は1970年、翻訳版は71年刊行。

 タイトルと目次を見た感じから、遭難して「救い出される」までの三日間を描いた小説かな?と予想していたのですが、想像の斜め上をいく展開が待っていました。文体も割と重厚なところがあり、もう少し軽いタッチの冒険小説だとなんの根拠もなく思い込んでいたので、これまた予想外でした。
 思い込みはいけませんね、はい。

 一人称小

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レイ・ブラッドベリ 『猫のパジャマ』

★★★☆☆

 2004年に出版されたレイ・ブラッドベリの短篇集です。収録されている作品は1940年代のものから2000年代のものまで幅広いです。ショート・ショートとまではいきませんが、短めの短篇ばかりなので、夏場の麦茶みたいにさらさら読めます。

 レイ・ブラッドベリの作品は『華氏451度』など何冊か読んでいますが、その割にはいまひとつ印象に残っておりません。村上春樹の『風の歌を聴け』の中で架空

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