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雑文

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主に読書感想文を載せています。ネタバレしない内容を心がけてますが、気にする人は避けてください。批評ではなく、感想文です。
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2018年7月の記事一覧

マーティン・アッシャー 『フィリップ・マーロウの教える生き方』

★★★☆☆

 レイモンド・チャンドラーの長篇7冊を訳し終えた村上春樹が記念的な意味合いも含めて出したフィリップ・マーロウ名言集。
 ニューヨークの出版社クノップフ(ランダムハウス)で長年編集者を務めていたマーティン・アッシャーが、フィリップ・マーロウものの長短篇から集めた引用句を編集した本作では、多種多様なジャンルごとに、長短様々な文章が並べられています。

 チャンドラーといえば比喩やアフォリ

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鴻巣友季子  『翻訳ってなんだろう?』

★★★☆☆

 ちくまプリマー新書から6月に出た本作では、誰もが知っている古典を通して翻訳とはどういうものかを紹介しています。いわゆる英文和訳とは次元のちがう、広くて深い翻訳の妙技が詰まっています。

『赤毛のアン』、『嵐が丘』、『風と共に去りぬ』など10作品が原文、解説、訳例の順で著されています。
 ぼくは原文だけを読み、実際に訳してから解説を読むという読み方で読破したのですが、なかなか有意義な

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エリック・バーカー 『残酷すぎる成功法則』

★★★☆☆

 アメリカで人気のブロガーが執筆した本作。監訳は橘玲です。
 何事もエビデンス・ベースで語る点が共通していますね。原題は『Barking up the wrong tree(間違った木に吠える)』。
英語の本のタイトルというのは、そのまま訳しても邦題になりづらいものが多い気がします、実に。

 タイトルに『成功法則』とありますが、いわゆるマニュアル本とは少しちがいます。様々な成功の秘

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夏目漱石  『吾輩は猫である』

★★★☆☆

 説明不要。日本文学の古典、文豪、夏目漱石の処女作です。恥ずかしながら、初めて読みました。
 というのも、僕は昔から翻訳ものばかり読んできたので、日本の小説はあまり読んでいないのです。はるか昔に友だちに薦められて三島由紀夫とか安部公房を読みましたが、ほとんど記憶に残っていません。
 古文が苦手だったこともあり、古い言葉遣いの文章は読み進めるのも一苦労なのです。大変疲れます。食べ物と同

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