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おせっかい恐竜との日常生活を描いたシリーズです
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おせっかい恐竜のはなし1🦖

今日君は恐竜みたいな色の服を着て私を慰めにきた。
「akane*さん、まずは光に当たって美味しいものを食べんと」
恐竜はそういうと、すぐにパジャマ姿の私をベランダへと連れ出し、光と煙草の煙を浴びせた。

***

いつのまにか室内に焼きそばの匂いが充満していた(私の大好物の焼きそばができていた)。
贅沢にもソース焼きそばと塩焼きそばの食べ比べだった。
私がどちらも「美味しい!」しか言わないので、恐

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おせっかい恐竜のはなし2🦖

「ショートカットにするなら痩せなきゃね」
君が何を言えるんだという格好で、恐竜は言った。
そもそも私はショートカットにするとは言ってないし、痩せなきゃとも思っていない。
恐竜の知り合いから「akane*さんはふくよかになった」と陰口を叩かれているらしいが、気にするまい。
そもそも女の子にいい歳して「ふくよかになった」と言う男性も、それをわざわざ本人に伝える恐竜も大した男ではない。
君はよくキュート

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おせっかい恐竜と料理の話🦖🥘

恐竜に、ホワイトソースから自作でシチューを作ってもらった。
私は料理ができないので、料理男子が大好きである。
ちなみに私の妹達も例外なく料理下手なので(きっと親の教育が悪かったのだろう)、3姉妹とも料理男子を捕まえている。
この姉妹は自分にできないことがあっても、それができる男性と付き合うのが上手なのだ。

「お米、かたいほうがいいね」
恐竜が唐突に言った。
彼が作った絶品のシチューを口にしながら

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#1 彼とCDプレイヤー

#1 彼とCDプレイヤー

彼は、私が流した知らない曲に、ノリノリで首を振っている。
横に振るのと縦に振るのを合わせたような独特な動きで、コミカルにおどっている。
ベッドの上で首を振るものだから、マットレスが小刻みに揺れている。
「…リズムに弱いんだよ」
しゃべっておどれる鳥みたいなことを言って、彼はニンマリと笑って見せた。
「akane*さんもやってみたら?」
…言われる前に私も首を振っていた。
普段は冷静を決め込んでいる

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#2 彼とマグカップ

#2 彼とマグカップ

「お揃いのマグカップに琥珀色の梅酒を入れたら絶対にキレイだよね」、そう話していたのに、すっかり忘れて蓋を捻り、飲み干してしまった。

後日、彼がもう一度梅酒を買ってきてくれたので「今度こそマグカップに入れて飲もう」ということになった。
彼が梅酒をマグカップに注ぎ始める。
「「ぴったり!!」」
2人の声が重なって、琥珀色の水面が揺れた。
マグカップの容量と梅酒の内容量がほぼ一緒だったのだ。
まるで梅

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#3 彼と観葉植物

#3 彼と観葉植物

お洒落なお店の植物コーナーを見ながら「これ、ワカメを強くした感じじゃない?」なんて失礼なことを言っている。
なかなか偽物の観葉植物と本物の観葉植物を見分けられない彼は、茎の部分をまじまじと見つめて「あ!本物だった!」とか悔しそうな顔をしている。
そういえば彼は、私の家にある偽物の観葉植物も、触るまで偽物だとわからなかった。
偽物だとわかった瞬間、「akane*さん、育てるのサボってるじゃーん」とか

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2月の彼を気ままに切り取る

2月の彼を気ままに切り取る

2/14
バレンタインのチョコを当日渡したのに私の家に置いて帰った。

2/18
「あかねさんは偏食だと思う。だから僕がいろんな料理を作ってあげたいと思う」と発言。

2/19
はじめて「この休みは一緒に過ごせるの?」とおねだりするようなことを言われた。
かわいくて髪をわしゃわしゃした。

2/21
思い出のコンビニで深夜にシュークリームを買い、帰りながら頬張る彼を見た。
私は相変わらず星を見上げ

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#4 彼とわかめごはん

#4 彼とわかめごはん

彼の不調時に、私が急遽こしらえたわかめごはん。
絶対おいしくないといけない場面だったのに、全然おいしくなかった。
私は戻しわかめ60グラムと乾燥わかめ60グラムを間違えて、炊飯器をわかめだらけにしてしまったのだ。そのわりに味も薄く明らかに失敗だった。
でも彼は普通どおりご飯をよそって、まずそうな顔ひとつせず食べてくれた。
それだけでもありがたいのに、彼はいつもより多く二杯目をよそって食べてくれたの

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貧血と栄養源🦖🥘

野良犬が暴れ回ったような部屋だ、と思う。そんな荒れ果てた部屋に、今日も彼は足を運んでくれる。睡眠不足になってふらふらでも、料理をしにきてくれる。どうでもいい相手なんかに、生姜入りスープやレバニラやホットココアなんて作るものか。
「僕たちはもう他人じゃないって思う」突然彼がそう言うから、本当に他人じゃない気がした。今は結婚していないから法的には何のつながりもないのだが、当人同士が認め合えばそれは「他

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#5 彼とランプ

#5 彼とランプ

素敵なランプを買ったのは、私が真夜中に本を読むためだと信じ込んでいる彼です。
「甘いな、素敵な夜を演出するためでもあるのよ」なんて言えるわけもないけど。

実はこのランプをお店から運んでくれたのは彼で、しっかりこの計画の片棒を担がせている。
なんなら、中の電球を買ってきたのも彼だ。
私がランプにばかり気を取られていたあまり、家に帰ってやっと電球を買い忘れたことに気づき、彼が家具屋さんまで走ってくれ

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