ルル

本を読むこと。空を見ること。草花とおしゃべり。見えているものの向こう側。

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    ゆらぎの森のお話『ゆらぎの森通信』。stand.fmにて不定期連載中。

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記事一覧

お久しぶりでございます。

stand.fmにて『ゆらぎの森通信』アップしております。
3分ほどの短いお話、お耳を貸してくださるとうれしいです。

『ゆらぎの森通信』第6号
*森の住人が持つ特別な羽根ペンで書かれていること

https://stand.fm/episodes/64095f83fa14c385bb963fca

ルル
1年前
3

既望(きぼう)

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1年前
2

魔女になる日

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1年前
4

明日の軌道

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1年前
3

おっぴさん

 わたしはばあちゃんがさんにんいます。いっしょにすんでるばあちゃんと、かあさんのじっかのいえのちっちゃいばあちゃんとおっぴばあちゃんです。  じっかのいえのひと…

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2年前
12

『ゆらぎの森通信』第5号

*ゆらぎの森に初雪が積もりました。雪しぶきで遊ぶプンニムさんは、雪の中にあるものを見つけて⋯⋯


https://stand.fm/episodes/61aef113c1167f00075b101b

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2年前
5

冬支度

暑いくらいに晴れた日は、コートを洗うのに絶好の日。 ウールのショートコートを裏返して折り畳んで、洗たくネットに入れて、洗濯機の手洗いコースにお任せする。そのまま…

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2年前
19

しろのあと

なだらかな丘を踏みしめてゆっくりのぼる。いい天気。 ああ、この場所はとってもいいな、好きだな。っていうのは、どこで感じてどこで思っていることなんだろう。 頭じゃ…

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2年前
4

鳴る

秋の空は、静かに鳴っていると思う。 聞こえないけれど、聞こえないままに、澄んだなにかが鳴っている。 草むらから、乾いた匂い。日なたの匂い。 風はずっと踊りつづけ…

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2年前
10

おはようのうた

 祖母に手をひかれて、通りを渡る。センターラインも横断歩道も描かれていない車通り。斜め向こうの床屋さんの駐車場から、年長組の男の子たちの声が響いている。おかあさ…

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2年前
7

九月なノ日

かようび。クサギの実がなっているのを見つけた。手を伸ばしても届かない高いところにあって、触れることはできない。でもいまは、この目で見ることができたことがうれしい…

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2年前
12

8月八日

午後、公園に行く。蝉しぐれ。ツクツクボウシの鳴き声が、鳥の鳴き声に聞こえる。ツクツク、「ボウシ」と音程があがってさがるところ。何年か前から、鳥たちが鳴き交わす声…

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2年前
17

ハチ月1日

朝四時三十分、ヒグラシを聞く。遠くから聞こえる。いくつも重なってささめいている。音は不思議。ことばを超えてやってくる。 noteを書こうとすると、胸がぐううと押され…

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2年前
10

七月2じゅうハチ日

四時半に目がさめて、窓をあけた。 きれいだった。雲は、空の高いところへと、のぼるように伸びていた。 四時を過ぎると、セミは鳴きます。ここに越してきて、はじめて知…

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2年前
8

雨の日のぷかぷかぷう

 ぼくの長靴はあおいろ。傘はきみどりいろ。レインコートはきいろ。保育園のときはあおいろだったけど、小学校はきいろなんだって。ぼくはあおいろがいいと思う。ねえちゃ…

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2年前
16

ハミングの世界

ツバメのひなの鳴く声がしました。霧雨は静かでやさしい。くもりの日のように音がよく聞こえる。

ルル
2年前
13

お久しぶりでございます。

stand.fmにて『ゆらぎの森通信』アップしております。
3分ほどの短いお話、お耳を貸してくださるとうれしいです。

『ゆらぎの森通信』第6号
*森の住人が持つ特別な羽根ペンで書かれていること

https://stand.fm/episodes/64095f83fa14c385bb963fca

おっぴさん

 わたしはばあちゃんがさんにんいます。いっしょにすんでるばあちゃんと、かあさんのじっかのいえのちっちゃいばあちゃんとおっぴばあちゃんです。

 じっかのいえのひとたちは、みんなおなじかおです。くろくて、しかくいです。おっぴさんのかおはまるいです。いろはしろいです。おっぴさんだけちがうかおです。

 あと、おっぴさんはせなかをまげてたちます。てをこしにおいてあるきます。あたまにてぬぐいをまいています

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『ゆらぎの森通信』第5号

*ゆらぎの森に初雪が積もりました。雪しぶきで遊ぶプンニムさんは、雪の中にあるものを見つけて⋯⋯


https://stand.fm/episodes/61aef113c1167f00075b101b

冬支度

冬支度

暑いくらいに晴れた日は、コートを洗うのに絶好の日。

ウールのショートコートを裏返して折り畳んで、洗たくネットに入れて、洗濯機の手洗いコースにお任せする。そのままだと脱水が足りないので、普通コースの脱水を軽くかける。終わったら、裏返したままハンガーにかけて、ベランダに干す。このコートはしわにならないことがわかっているので、ぽんぽんと手でたたくこともしない。あとはお日さまと風にゆだねる。

午後三時

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しろのあと

しろのあと

なだらかな丘を踏みしめてゆっくりのぼる。いい天気。

ああ、この場所はとってもいいな、好きだな。っていうのは、どこで感じてどこで思っていることなんだろう。

頭じゃない、胸でもない、おなかでもない。足の裏のほうから感じているような気もするけれど、それだけじゃない気もする。なんというか、自分のからだぜんぶで感じているようで、まったくからだじゃないところから思っているような。

からだの外にあるこころ

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鳴る

鳴る

秋の空は、静かに鳴っていると思う。

聞こえないけれど、聞こえないままに、澄んだなにかが鳴っている。

草むらから、乾いた匂い。日なたの匂い。

風はずっと踊りつづけて、空気がどんどんいれかわる。

足もとに湯たんぽを置いて、すくすくと眠った。

聞こえないなにかは、わたしのなかにも鳴っていると思う。

おはようのうた

 祖母に手をひかれて、通りを渡る。センターラインも横断歩道も描かれていない車通り。斜め向こうの床屋さんの駐車場から、年長組の男の子たちの声が響いている。おかあさんたちの話し声、笑い声。「おはようござんす」と祖母があいさつすると、「おはようございます」と大人たちが答え、わたしはちょこんと頭を下げる。つないだ右手にぎゅっと力を込める。びゅん、と目の前を走っていく男の子。もうひとり、びゅん。「こら、あぶ

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九月なノ日

九月なノ日

かようび。クサギの実がなっているのを見つけた。手を伸ばしても届かない高いところにあって、触れることはできない。でもいまは、この目で見ることができたことがうれしい。事典でしか見たことがなかった。遠くの山に行かなければ、出会えないのだと思っていた。それが家の目の前にあるという現実がやってくるとは。

これは葛の花。葉叢に隠れていくつも咲いていた。知ってはいても実際に会ったことのなかった花。花があれば葉

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8月八日

8月八日

午後、公園に行く。蝉しぐれ。ツクツクボウシの鳴き声が、鳥の鳴き声に聞こえる。ツクツク、「ボウシ」と音程があがってさがるところ。何年か前から、鳥たちが鳴き交わす声にしか思えなくなった。わたしの耳とあたまの、わたしだけの聞こえかた。

蓮の花が咲いていた。午後でも見れるなんて、思いもしなかった。池に渡された橋を行くとき、蓮の森のなかだと思った。葉っぱは大きくて、花はわたしのあたまを越えて咲いている。こ

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ハチ月1日

ハチ月1日

朝四時三十分、ヒグラシを聞く。遠くから聞こえる。いくつも重なってささめいている。音は不思議。ことばを超えてやってくる。

noteを書こうとすると、胸がぐううと押されたようにくるしくなった。くるしいのをこらえて書き始めても、二行も書けずに画面を閉じる。そんな繰り返しでした。

前回から実験していることは、おおきくふたつ。

スマートフォンで打つこと。

打つときに、あたまのなかで、ゆっくり読みあげ

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七月2じゅうハチ日

七月2じゅうハチ日

四時半に目がさめて、窓をあけた。

きれいだった。雲は、空の高いところへと、のぼるように伸びていた。

四時を過ぎると、セミは鳴きます。ここに越してきて、はじめて知ったこと。

八時、ゴミを出しに行く。蛍光管と電池の日。陽射しが暑いので、ゆっくり歩く。暑くなくても、歩くのは遅い。暑いのはにがてだから、ますます遅い。

ゴミのステーションは神社のとなり。集会所の奥の、鉄の格子のとびらをあけると、ビニ

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雨の日のぷかぷかぷう

 ぼくの長靴はあおいろ。傘はきみどりいろ。レインコートはきいろ。保育園のときはあおいろだったけど、小学校はきいろなんだって。ぼくはあおいろがいいと思う。ねえちゃんはちゃいろのレインブーツを履いて、まわりにフリルのついたピンクの傘。二人でいってきますって言って、玄関を開けたら、みきちゃんが踊ってた。とうめいの傘をくるくる回しながら、みきちゃんも片足でクルッってした。ねえちゃんは走ってみきちゃんのいる

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ハミングの世界

ハミングの世界

ツバメのひなの鳴く声がしました。霧雨は静かでやさしい。くもりの日のように音がよく聞こえる。