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人生は自分の捉え方が決める~母校吹奏楽部の全国大会出場記念演奏会に参加して~

2023年10月9日、石川県立音楽堂コンサートホールにて、石川県立金沢桜丘高等学校吹奏楽部 全日本吹奏楽コンクール出場記念演奏会が開催されました。
その中で、OBOGと現役生とのコラボレーションステージが設けられることになったのです。

石川県立音楽堂は「風と緑の楽都音楽祭」で管弦楽では時々舞台に乗りますが、吹奏楽のステージを演るのは初めてで「夢が叶う!」という期待感。
それと、演奏会にOBOGを呼ぶのは初めてで、卒業以後遠ざかっていたものの、bephilオーケストラに参加できることになった自分が、全国大会という大舞台に出る後輩たちの応援をすることで、お互いにエールを送りあえるだろう、ということもあり、僕はちょっとためらいながらも参加を申し込みました。


集まった卒業生は、約100人。トロンボーンだけでも16人いました。

リハーサル風景。真島俊夫編曲「さくら さくら さくら」を演奏中。

記念すべき第1回の演奏会を成功させた一つ年上のホルンの女性の先輩がいたのですが、1990年代卒業生は僕とその方だけ。あとは、2000年代、2010年代、2020年代のコたちばかりでした。だから男子の中では最年長!
中には、現在は楽器を吹いていないけれど、このステージのために楽器をメンテして参加を決めた後輩さんもいました。
ほとんどの後輩たちからは
「大先輩ですね~!すごいっすね!よろしくお願いしまーす!」
と丁寧に挨拶され、なんだかうれしいやら照れくさいやら。
そんな大人数でのステージ。演奏したのは以下の3曲。

○「イントラーダS-S-S」 鈴木英史作曲 (2003年当校委嘱作品 東京オリンピック開会式にて使用)
○「さくら さくら さくら」 真島俊夫編曲
アンコール:「宝島」 真島俊夫編曲

とにかく楽しい!楽しくって仕方がない!
こんな吹奏楽のステージは何年ぶりだろう?!
会場は満員のお客様。割れんばかりの拍手と飛び交う「ブラボー!」の声。
全国大会に駒を進めるようになったころからの子たちが中心とはいえ、卒業しても戻ってきたくなる&たくさんの人から応援される、「愛される」吹奏楽部になっているということが、卒業生としてすごくうれしいと感じました。
現役生のお母様でもあるお友達からは、
「圧巻のステージでしたね。観ていて、ほんとに楽しそうでした」
とSNSにコメントをいただきました。

しかし‥このステージにたどり着くまでと、そして演奏終了後、内心すごく複雑な思いをしていました。


まず、連絡事項として、演奏中に演出がいくつも組み込まれているというコト。
ベルアップしたり、体を左右に振ったり、タイミングを合わせて立って演奏したり、などです。
その指示がすごく細かくて。
で、あとから参考動画も送られてきましたが、うまくできるかとても不安でした。

僕は発達障害の特性の一つであるところの「発達性協調運動障害」の傾向があると自認しています。

発達性協調運動症または発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder; DCD)
手足の動きなど身体の動き・日常生活における身体の動きをコントロールして行う協調運動=複数の身体部位を協力させて行う運動を年齢相応に行うことが著しく困難な障害。年齢などに応じて期待される水準と比較して、不正確、時間がかかる、ぎこちないなど、いわゆる不器用といわれる状態。
例:キャッチボールが苦手、消しゴムを使うと紙が破れてしまう、きびきびとしたダンスができない、など

僕は長年練習してきた現役生やその演出経験のある子たちについていけるか不安で、吹奏楽部にメールをお送りしました。
担当の方からは、
「大合奏になるので、演奏も振り付け演出もクォリティーを求めるのは難しいと思います。多少のミスも温かく見ていただける演奏会になればと思っていますので気負うことなく参加してください」
とお返事がきましたが、リハーサルの時は、左右をよく間違えたり、振り付けに気を取られて演奏するタイミングで出てこられなかったりということを繰り返していました。

始まってしまえばどうにかついていけて、会場の雰囲気や演奏の盛り上がりも重なって、すごく気持ちが上がり、ノリノリで演奏できたと思います。


でもそれ以上にずっと気になっていたのは
「なんか僕、ウいてしまっていないかな‥」
ということでした。
先述の通り、僕の同級生やそれに近い後輩たちが誰もいないということに加え、自分が現役だったころの吹奏楽部には(というよりも高校生活そのものに)、いい思い出がほとんどないことがその理由でした。

朝練習もまじめにやったし、引退まで辞めずに所属したし、一緒に演奏した一つ年上のホルンの先輩と出場したアンサンブルコンテストではすごくよい結果を残すことができて楽しかったなどの思い出もありますが、同級生の女子部員からは嫌われっぱなしでした。
学園祭での演奏を部員での企画でやるとなったとき、「指揮をやりたい」と申し出たところ「あいつが振るんなら私たち吹かない」という女子部員が何人も出るくらいでした。
そういった女子部員たちから感じられるものが嫌で嫌で仕方がなくって、しょっちゅう合奏をエスケープしていました。
でも誰も探しに来てくれなかったし、楽器はそのまま出しっぱなしでくらい合奏上にぽつんと置かれたままみんな帰ってしまっていたり、という状況でした。
コンクールで優秀な成績を収め、バラエティー番組にも出演していたころからのような、部員同士の一体感なんか全然なくて‥。

そして次第に疎遠となりました。
部としても大きくなり、好成績を収めるにつれて演奏会のお知らせもそのまま捨てていましたし、寄付を募る振り込みも一切したことがありません。

それともう一つ、僕の2つ年上の中学校吹奏楽部の先輩から、
「会社の同僚が『すご〜く楽しそうに演奏していたトロンボーンの先輩がいた』と。もちろん君だよね?」
というコメントを受け取ったときに、僕は
「悪目立ちしてしまった」
と思ってしまいました。
先の発達性協調運動障害のこともあり、僕の中では「楽しそうに演奏していた」=「周りの人と違う感じで、体を変に(オーバーに)動かして演奏していて整然としていない」のが良くない、
「あの人だけ、なんか変!」と思われた、ととってしまったのです。

そんな僕は、果たしてOBとして後輩たちと演奏してよかったんだろうか‥。
ずっと悩んでいました。


そんな時、その、中学校吹奏楽部の先輩は
「学生時代の後悔は必要ないですよ。その時の行動は、それが一番だったんです。《これはこうしなくてはいけない》ってルールは法律だけだと私は思ってます。いろんな人がいるから、悩んだり楽しんだり出来るのです。
あと、周囲の気持ちを考え過ぎだと思います。みんなそれぞれ考えてることも違うのだから。
不器用でも心から楽しんでだから、良かったと思うよ!
自分が楽しむことが一番大切だよね」

とコメントをくださいました。
その演奏を聴いてくれた先輩の同僚さんも
「『僕を見ていてすごく楽しめた』と言っていた」そうで。


また、いつもお世話になっているカウンセラー&コーチもこう言ってくれました。

「そのすべての出来事があって、それを乗り越えたから今のにしむーがあるのよ。みんなが優しくしてくれたりするのは、そーゆうつらいことを乗り越えてきたことが、あなたの一挙手一投足に全部出ているの」

「自分が優しくされたかったから、にしむーは人に優しくしているよね。
世の中には【目には目を歯には歯を】っていう人もいる中で、にしむーは自分がされていやなことは人にはしないし、自分がこうしてほしかったっていうのを、これまでみんな(周り)にやってきたじゃない?
最近ちょっとずつ自分にも優しくなってきたと思うけど、“自分に優しくするというその方向であっているんだよ”っていうコトの証拠集めをしているの。
だから、過去の出来事を持ち出せば持ち出すほど、今の証拠集めが弱くなっちゃうからやめときなさい?」

「(OBOGを交えて演奏するという今回の企画をきっかけがあったからとかいろんな理由があれど)嫌な思いをして・嫌な経験をしてつらかった高校吹奏楽部の中に入って一緒に演奏しようと思えるようになったってことは、過去の嫌な思い出に決別するための行動をとっているのよ。新しい記憶を上書きしているの。
だからその奥にあるモノを引っ張り出してくる必要はもうない。
これだけいい想いをしているのに、わざわざ高校時代の悪い思い出を引っ張り出して自分の波動を下げてしまうのは、何の得にもならないよ」

「いいことも悪いことも全部それがあって悔しかったから“もっと練習して上手になろう”とか“違うところで・自分に会う場所を探して演ろう”とかってやった結果が、30数年間吹き続けてきた結果で、それがbephilオーケストラ出演にまでつながっているわけよね。
もし、同級生の女の子たちからひどい仕打ちを受けてなかったら、満足してやめてしまっていたかもしれないし、吹奏楽プレイヤーまでで終わっていたかもしれないし。
だとしたら、その子たちがそーやったことが、大事な要素の一つでもあるの」

「自分の人生をいい人生だったと言えるのか、たいしたことなかったて思うのか‥自分がどう捉えるかしかないのヨ」


僕は本当に過去にとらわれすぎていたんだな、と思いました。
今回の演奏会参加をきっかけに、また一つ、前に進めることができたと思います。

そして、楽器を演奏し続けていること、演奏し続けられる環境に身を置いていることが、あらためてすごく幸せだと感じました。


最後におまけ。
かつて学童保育指導員として働いていたころに一緒に過ごした女の子が、バストロンボーン奏者になっていて、自分の楽器(ピカピカのBach50B3AF!)を手にし、2023年卒業生として参加していたのです。
不思議な縁を感じましたね~!
親子ほども年が離れている卒業生同士が、同じステージで演奏できるなんて!自分も歳を取ったんだなぁ、なんて思いつつも、
「若いモンには負けねーゾ」
と意気込んで、練習に励む今日この頃です。

終演時の写真。最高のステージでした。続けていればいいことがある!


最後までお読みいただき本当にありがとうございました。

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