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美術批評 The Art Critique

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記事一覧

日々是雑感2023/01/29

日々是雑感2023/01/29

ネットサーフィンしていると、日展の広告が目についた。日展というのは日本最大の公募展団体であるのはその道に詳しい人なら知っているはずだ。その日展がYouTubeに広告(動画じゃない)を出稿していることに個人的には時代と同時に衝撃が走った。

美術団体というのは基本古典的なイメージが強く、伝統を良く守る保守的な傾向がある。ただし、それは昔ながらのところであって、現代アートに関してはそういうのは関係がな

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日々是雑感2022/09/19

日々是雑感2022/09/19

つい先日、ここのnoteの記事で出てきた、山種美術館の速水御舟の図録が電子書籍版で出たと知り、転職活動中の癒しも兼ねて買った。本来美術館図録は電子書籍に出てこない上、所蔵作品の電子書籍版すらなかなか話を聞かないから、物珍しさもあった。

作品の詳細等については各々調べていただければすぐにわかるのだが、自分自身過去に日本美術史研究や洋画制作をしてきた中で、「こういう描き方をしてもいい」という自分のリ

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日々是雑感2022/07/25

日々是雑感2022/07/25

久々に芸術的な観点を書き残したいと思う。転職活動ばかりでは流石に疲れて仕方がない。ふと芸術分野において哲学的なことを思い出した。

芸術活動とは有為なのか、無為なのか。それとも行為なのか。哲学的な課題である。

大学院時代に美学分野を専門とする大学教授がいた関係で、自分自身も少しは美学についてかじったことはある。しかし、美学も一筋縄にはいかない世界だ。やはり哲学的な思想を持たないとついていけないの

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昔印象派のポール・セザンヌと作家エミール・ゾラは仲が良かったがゾラの「作品」をきっかけにセザンヌが絶交したと聞いたが、今の研究分野ではどうなのだろうな。それ以降のセザンヌとゾラの交友記録がないのも少し気になるが。

日々是雑感2018/10/10(2)

過日、名古屋ボストン美術館が閉館した。
9月の帰省中に寄ってみた。

20年の契約期間の中でたくさんの人が入ったというが、個人的には気になる作品は本当に来たのか疑問が残る。あの美術館の本来の目的と、最後の企画展との乖離はなかったのだろうか。そしてアメリカボストン本体は、本当にやりたかった事なのか、些か疑問の残る取り組みだったと思う。

印象派やボストンコレクションもさることながら、名古屋ボストンと

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日々是雑感2018/08/22

この前の月曜日、1年ぶりにホテルオークラ東京へ立ち寄った。ホテルオークラは自分にとって意義深いホテルである。

公職追放を受け、ホテル御三家のひとつであるオークラホテルズを作りあげた創業者の意地を感じること、日本の伝統美と西洋の芸術を融合させた「虎ノ門の迎賓館」で過ごすひと時は自身にとって、ステータスそのものである。非常にちゃっちいかも知れないが、ある種目標づくりに重要なポイントそのものである。

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日々是雑感2018/07/18

ツイッターやフェイスブックでそういえばという記事があった。名古屋金山にある名古屋ボストン美術館が閉館するのだ。20年前に開館したがボストン美術館との契約満了を持って、とのことである。

ボストン美術館の至宝が見られるとあっての期待とは裏腹に、個人的には設備面においても、ボストン本体側側のキュレーターの作品センスのなさも相まって、当たり外れの極端な企画展示だったと思う。名古屋側が仕方なく地場の作家紹

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日々是雑感2018/06/03(2)

最近芸能人の美術分野進出が目立つ。有名どころをいくつか上げると、ビートたけし(北野武)氏、加山雄三氏、ジュディ・オング氏、最近のところをピックアップすると、乃木坂46のメンバーや、もっと探れば香取慎吾氏まで美術分野まで進出している。

純粋に芸術を楽しもう、という感じがちょっと足りない気がする。それはメディアに出ているという点、芸能人というアドバンテージがそう感じるのかもしれない。卑下に感じてしま

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日々是雑感2018/02/12(2)

気になった美術事情がある。

毎年東京国際フォーラムで開催しているアートフェア東京のインフレが止まらないのだ。

今年は入場料が前売3,000円、当日3,500円で複数通し券はないのだ。また早割ペア券もあるが、生憎それを買う勇気が無い。去年はそこまで高くなかったし、5年くらい前までは3日券という便利チケットがあったお陰で現代アートの理解が進んだ(というより3日かけて無理矢理理解させた)。

特にこ

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日々是雑感2017/12/14

最近の美術の潮流、落ち着けば4つに大別できると思う。

写実を追求する潮流、徹底的に形を壊す潮流、写実と抽象の狭間で何かを求める潮流、それ以外の4点である。主に絵画ではそう感じる。

一つ目の潮流は言わずもがな、古き古典、新しき古典と言うべきか、王道で失敗のない保守傾向にして職人的である。日本においては日展をはじめとして多くの組織で写実画が定番となっていて、まず目で見て安心を求める。自身においても

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日々是雑感2017/11/27(2)

過日、サントリー美術館の狩野元信展と松坂屋美術館のアートたけし展に足を運んだ。サントリー美術館の方は数年ぶりの六本木で正直戸惑い、アートたけし展の方は懐かしさといい自由奔放さといい、ゆっくりみることができた。

総評についてはまだ時間がかかるものの、狩野元信展については新しい発見はなかったことの落胆と、アートたけし展は東京オペラシティアートギャラリー展のような大々的なアート作品がなかったことに対し

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ポップカルチャーと美術館博物館(2)

前回(1)では美術そのものの陳腐化とその原因について列挙した。メディアの参画、美術の大衆化、企画展の種々の費用の高騰化を出したが、今回はそれらの理由からアニメや漫画などのポップカルチャーが美術館博物館で企画展として取り上げられる昨今の理由について、また、美術館博物館で開催されるにあたって、そこで開催されるが故の弊害(この言葉が正しいか不安だが)もある。今回はポップカルチャーと神格化についていくつか

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ポップカルチャーと美術館博物館(1)

突然降って湧いた疑問にどう向き合うか、どう指摘すべきか、私論を一つ一つ論じて行きたいと思う。

なぜこのような企画展が頻出するようになったのか。過去5年の美術館博物館の展覧会を見ていった中で思った率直な意見である。美術館博物館の予算がないだとか、人員稼ぎだとか、多くの意見も出ているのは事実であるが、自分はもっと問題を俯瞰して見てみると、恒常的な問題がそこにあるのではないかと思う。そこから一つ一つ整

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