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【読書 1】 『川久保玲とコムデギャルソン その創造と精神』

★★★★★ COMME des GARÇONS入門書として最良の1冊

(1991/12/1 ディヤン スジック(著) 生駒 芳子(翻訳))

「川久保 玲が『コム デ ギャルソン』を誕生させて、20年余りになる。その間に川久保は、ファッションの本質に深い影響を与え続けてきた。(スジック,1990:10)」 

Introduction


 本書は、1989年頃からロンドン出身のディヤン スジックによって執筆、1990年にイギリスで出版。1991年に生駒 芳子により翻訳、日本のマガジンハウスから発行。現在本書は絶版になっています。私は市立図書館で借りました。

COMME des GARÇONS

 「COMME des GARÇONS (コム デ ギャルソン)」は川久保 玲が1969年に設立した高級既製服(プレタポルテ)ファッションレーベル、1973年に株式会社設立。

 2017年5月4日から9月4日までニューヨーク、メトロポリタンミュージアム (通称MET)で「Rei Kawakubo / COMME des GARÇONS; Art of the In Between」が開催。存命中のファッション・デザイナーとしてはイヴ・サンローラン以来(1983年)、日本人のファッション・デザイナーとしては初めてということもあり、大きな話題を呼んだ。 日本を代表するファッションデザイナーである「川久保玲」と彼女の創り上げてきた「COMME des GARÇONS」。

 名前は知っているのに、よくわからない。好きなのに、話題にするのはアンタッチャブルな存在。かくいう私も雑誌やネットで川久保 玲とコム デ ギャルソンについて調べたことがある、しかし知ろうと思っても情報があまりにも少ない。
そんな私のような、コム デ ギャルソン初心者は多いのではないか? そんなひとにこそ本書を薦めたい。

Contents

 本書はイントロダクション含め5部の構成で成り立っている。

Introduction  Starting From Zero (p. 8)
Chapter One  The Making of Collection (p.14)
Chapter Two  Building an Empire (p. 38)
Chapter Three  Red is Black (p. 76)
Chapter Four  Fashion and Design (p.106)

Bibliography   (p. 159)
Chronology    (p. 160)


Introduction 「Starting From Zero」

とは、「服作りは、ゼロから始まる。(スジック,1990:10)」という川久保のことば。このたった4ページの導入部に、川久保玲とコム デ ギャルソンとは一体どのような存在なのかが明確に簡潔に記されている。

Chapter1 「The Making of Collection」

 冒頭は、1989年9月1日、パリで開催された「コム デ ギャルソン・オム・プリュス」というメンズのショウのルポルタージュから始まる。
ショウの準備、本番から展示会での取引まで、まるで自分がその空間にいたかのような、ショウの裏方の喧噪のなかでの高揚感と緊張感を味わえる。

 川久保玲がコレクションを創る際に、重要なブレーンとみなす人物たちとのコミュニケーションの取り方についてある。華やかなパリ・コレクションと関連づけることは一見難しいその裏にある地味な作業、そしてそれを支える人物たちが全信頼を置く川久保玲という人。
周囲の人々の証言により、川久保玲というひとの輪郭がみえてくる。

Chapter2 「 Building an Empire」

 川久保玲の生まれた1942年頃の時代背景を考察し、彼女がいかにして「コム デ ギャルソン」という帝国を築くことになるのかが順を追って記されている。
コム デ ギャルソンとその一貫したブランドのアイデンティティは洋服のみに留まらず、雑誌『Six』をはじめ、商品を包む袋やカードにいたるまで、グラフィック・デザインのコンセプトにまで徹底して行き渡っている。

Chapter3 「Red is Black」

 川久保玲が初めて彼女がパリ・コレクションでショウを開催してから、彼女のデザインは常にみる人々の議論のまとであった。
パリで当時の一般的とされたファッションといえば、肩パッドの入ったウエストを細く絞った女性らしいボディラインのスタイル。もしくは、アニーホール風のメンズのジャケットをゆったり羽織ったコケティッシュなスタイルでした。
 

 一方、彼女のデザインはその常識から考えれば極めて過激で目立ったもので、西洋のファッションとはまったく違ったシルエットを持ち込んだのだった。 タイトルの、「Red is Black」とは、単純な表面上の色の話ではなく彼女の信念を表す言葉だとスジックは言う。

Chapter4 「Fashion and Design」

 現在も青山にあるコム デ ギャルソンの店舗に行ったことがあるものならだれでも、そこが他の商業施設と全く異なる空間であるということを知っているだろう。 

 このチャプターでは、川久保玲が衣服だけでなく、空間をデザインするクオリティへの強いこだわり、さらにはそこから派生してインテリアのデザインについて書かれている。

 現在と本書の書かれた1990年と内装は多少異なるが、このチャプターで述べられている川久保玲のデザインに関する一貫した哲学は現在もこの青山店に息づいていると感じた。


セジックは「コム デ ギャルソン青山店の店内を歩くことで、川久保玲のイメージする世界観のすべてがみえてくる。(1990;125)」と語っている。


【著者プロフィール】

ディヤン スジック Deyan Sudjic  ロンドン・イギリス出身。ライター・ブロードキャスター、専門はデザインとアーキテクチャー。
2012年のロンドンオリンピックで使用された、ザハ・ハディットがデザインの「アクアティックス・センター」を建設時の審査員を務めた。
現在はロンドンデザインミュージアムのディレクターを務める。イギリスの大手新聞「ガーディアン」、書評誌「ロンドン・レビュー・オブ・ブックス」に寄稿。
著作に「Shiro Kuramata」、「Sony Design: Making Modern」など日本に関係した本も執筆・寄稿。

Conclusion

本書を読んで実際の店舗へ足をはこび、川久保 玲の創造するコム デ ギャルソンの世界を体感するきっかけにこのレビューがなれば幸いです。

写真は nostos  booksさんからお借りしました。

amazonレビューに掲載されます。


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