みつながかずみ|writer

3社でコピーライターとして実績を積み、フリーランスのwriterに。季刊誌にエッセイ連…

みつながかずみ|writer

3社でコピーライターとして実績を積み、フリーランスのwriterに。季刊誌にエッセイ連載!趣味は、風呂&台所読書、ミニシアターの作品を観る。筆名の葉月乃蓉果(はつきのようか)で小説修行中です。本(物語のある)で読んだ街・国に出掛けること、土地のものを食べることを愛します。

マガジン

  • あの日、映画と。あるいは本と

  • 記憶の口福

  • こと葉の蔵

    あの時、あの場所で。記憶の断片を時々取りだしては日差しの中で干し、しまう場所「こと葉の蔵」をつくりました。むかしに書いた「ことの葉」も堂々と主役。

  • 考える葉っぱ

  • 旅することの葉

    外の世界に飛び出した。出会いや発見や、あたらしい希望への旅立ちになればいい。書き残すこと、もうひとつの「旅」のはじまり!

最近の記事

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プロフィールのはじめに、のようなもの

はじめまして。お元気ですか。 1.記事を書いてからはや半年です 「Note」。そこでは小さな随筆を書き溜めていこうと思いながらも、なかなか更新ができていませんでした。なぜだろう、日日をこなすのに一生懸命で、モノ・コトが俯瞰できていなかったのかもしれません。自分のnoteに書き散らしても、ここに、投稿する勇気がなかったのでしょう。 けれど、いま、わたしは思います。 こんな感覚はどこか人と違っているかもしれない、変わった考えだと半ば呆れられるかもしれない。そういった人と違

    • 57. 読書日記 くまとわたしの恋のゆくえ 『神様』川上弘美

      神様  川上弘美といえば、『神様』が真っ先に頭に浮かぶ。  次に『蛇を踏む』『センセイの鞄』に続くわけだが、処女作というのは、作家が初めて世に問う小説の原稿ということ、そういう意味でもこの上なく貴重であるし、作家の不可思議さといい非凡性といい、凝縮されたものとして結晶みたいな光を放つ、原形に近いものである。作家の本質(故郷)を知りたければ、絶対に読まねばならないのが処女作であると思う。  まず、「縁(えにし)」という言葉が、ぽんと残った。  冒頭は、くまに誘われて散歩に

      • \文学フリマ京都8に参加します!/ 同人誌「てくる」で出店 てくるブース いー49 ぜひ見に来てください!私(葉月乃蓉果)の店番は14時〜 TIME 1/14(日) 11:00〜16:00 京都市勧業館みやこめっせ 1F 第二展示場 🎫入場無料 #文学フリマ京都

        • 56. 父から受け継いだもの

           何日経っても原稿が進まない。もう1カ月もこんな調子で書きあぐねている。私の潜在意識がブレーキをかけているのだ。瞑想なんぞして折り合いをつけ、一文一文をおそるおそる綴るも、調子にのって加速しそうになったら、はたと立ち止まる。違う道筋に流れているのだ。  ああ。仕事机の前から、ソファーに場所をうつし、仰向けに寝転がって、幸田文の「台所の音」を読んだ。江國香織の「物語のなかとそと」というエッセイを読んだ。2行読み、3行読み、6行も読めば、独特の静かな声に誘われ、仄暗い深みが続く

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        • あの日、映画と。あるいは本と
          10本
        • 記憶の口福
          5本
        • こと葉の蔵
          5本
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        • 日日に漕ぐ舟。
          16本

        記事

          55. 執着の裏側

           2018年の正月をよく覚えています。東京に就職していた娘のNの帰省したのに合わせて、実家の母を誘い、久しぶりに家族でのんびり温泉三昧としました。  有馬は六甲山系の谷筋にある温泉場。谷崎潤一郎や志賀直哉など文人も愛されたという謂われがあるだけに、どっしりとした赤褐色の湯には鉄分や硫黄分も豊か。太古の地層に蓄積した海水がエネルギーを含み、高濃度の源泉となってシューと噴き出した良泉なのです。  母はその昔、ヘルペスを患った時に、この湯が欠かせず、数日滞在したことがあると、よく

          54. 琥珀色のバーボンに酔う

           惚れっぽい? と訊かれれば、そうでもないと応えるだろう。この人のこの部分に惹かれるというのはあるが、その人の人間をまるごと受け止め、不覚にも恋に落ちてしまうという場合には、好む好まざるや、動物的本能の臭覚みたいものが重要であって、なぜこんなことになってしまったのだろうと、考えあぐねても永遠に核心のところに行きつかない、そういうものだと思う。  先日仕事を一本提出し、カフェに入った。ホッとした安堵とともにお昼を食べ損なったことに気づき、フィッシュ&チップスを注文しようと思い

          54. 琥珀色のバーボンに酔う

          53. 居場所を重ねて、私をつくる

           コロナ禍が始まる2020年の秋から、文章教室に通っている。1年目は東京の道玄坂にある100人余りの教室で、自分の書いた作品を出版社の元編集長が、3時間で約10本の作品を講評していくというスタイルだった。ここは、ミステリーなどエンタメを柱とした学校であり、文章の書き方を習うというよりは、企みがある、謎がある、仕掛けが面白いもの。あるいは視点が新しかったり、社会を風刺する、そういった作品が評価されていた。生徒が書いたものを、もっと面白くするためのアイデアを指南するというスタイル

          53. 居場所を重ねて、私をつくる

          52. 言葉の力で運命が変わる

           文は体を表す、と言われる。文章には書き手の性格や考え方、教養まで滲み出る。人間の有り様が分かるという意味だそうだ。手紙にしろ、電子メールにしろ、文字を書く時はこれらを思い出し、言葉の音(おと)を大事に綴る。届ける人の顔を思い浮かべながら、足したり引いたり、今の心に一番ぴったり合う言葉をみつけるように心がけている。  では、話し言葉はどうだろうか。人は何げない言葉に救われたり、傷つけられたり、導かれたりしている。美しい言葉で丁寧に話す人は往々にして誰からも信頼を得ているよう

          52. 言葉の力で運命が変わる

          51. ここはもうひとつの旅の入口、冬のデッキチェア

           冬の至福といえば、ぽかぽかと照る陽ざしの時間だ。どの季節よりも光のオーラを集め、まっすぐな力で完全な日だまりをつくる。凍るような北風を忘れるほどに、陽差しはものすごい力で人々をぬくめ、行き交うものや車のフロントガラスや、裸の木々、緑やそこかしこに濯がれて、万物に安らぎと安心を与えている。ほんの一時のマジックのように。  今年、デッキチェアを購入した。南向きのベランダに配置し、水やりした植物から漂う緑の精気を感じながら、山の稜線や流れる雲、木々の先に止まった鳥のつがいなどを

          51. ここはもうひとつの旅の入口、冬のデッキチェア

          50. デュラスの映像のなかにいる熱風のような愛の時間に 書評

           マルグリットデュラス。とても刺激的な読書体験だった。モデラートは、クラシック音楽などに用いられる速度の記号で〝中くらいの速さで〟。カンタービレは〝唱うように、なめらかに〟すなわち、普通の速さで唄うように。これが、「モデラート・カンタービレ」表題である。  この本を読んでいる時、ベランダの片隅に木製のリクライニングチェアを出し、朝の光のなかで読書した。マルグリット・デュラスは、言葉では表現しにくいことを、感覚、熱量で表現する作家だ。  作品全体を包んでいるのは、夜想曲のよ

          50. デュラスの映像のなかにいる熱風のような愛の時間に 書評

          49. 脳は心の影響を受けやすい感傷的な場所

           普段ほとんどテレビを見ない。BS放送「いもたこなんきん」(田辺聖子の半生を描いた朝ドラ)、NHKの料理・趣味番組、映画くらいである。それが、この頃はNHKの「ヒューマニエンス」40億年のたくらみ、という番組をちょいちょい見るようになった。サブタイトルは、「人間らしさの根源を、科学者は妄想する」。人間の体のしくみや行動変容、病気の謎を科学的な研究データに基づいて分析する番組だ。タレントの織田裕二が、頭をひねって考えたり、汗をかきながら熱い突っ込みを入れたりしつつ、視聴者の思い

          49. 脳は心の影響を受けやすい感傷的な場所

          48. Nとの再会とオーボンヴュータンのアイスケーキと (東京日記)

          その日は久しぶりの東京だった。前日は、実家にいて、一日家に泊まったら、再び旅の中にあった。  Nが数日前から「薬疹になったの。酷くて、仕事も休暇をとったの」とメールを送ってきていた。 LINEに添付された写真をあけると、首元から手にかけては紫色や赤茶けた斑点がひろがっている。足はさらにひどかった。20代のN、すっと長い美しい足は、発疹でうめつくされて、思わず顔をそむけるほどだった。 高度をさげると、曇り空だ。羽田空港に到着し、マンションまでは40分。おそらく暗く沈んでいる

          48. Nとの再会とオーボンヴュータンのアイスケーキと (東京日記)

          47. 江國香織さんの魅力は香りの空気を纏うように、物語を織ってゆく

           コロナ禍の2020年、「7日間ブックカバーチャレンジ」がSNSで流行しました。これは「読書文化の普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿する」というもの。 ①本についての説明はナシで表紙画像だけアップ。 ②(その都度)1人のFB友達を招待し、このチャレンジへの参加をお願いする。 ルールはこれだけでした。  世界中の街から人が消え、空港やレストランや観光地などは廃墟と化し、代わりにインターネットには、人やモノや出来事やら、儲け話やら、

          47. 江國香織さんの魅力は香りの空気を纏うように、物語を織ってゆく

          46. ユーミンの「晩夏」が脳内にリフレインする時

          台風一過。あれだけ、大騒ぎしたのに通り過ぎるとあっという間。いろいろなものが一掃され、そこに新たなものが入ってくるようだ。季節はめぐる。トップの写真は今年一番の夏の夕暮れ。 鹿児島を旅して、斜行エレベーターを降りて空をみた時に、海原みたいな空の色に、夕焼けが茜色に染まり、映画みたいに綺麗だった。 ひんやり冷たい風が、肌にあたる。朝と夕方、ホッとひと息つく。真夏のあのカンカン照りの熱さは眩しいくらいに好きなのに、残暑が苦手なのはなぜだろう。9月は、物憂い。毎年そう思う。 ふ

          46. ユーミンの「晩夏」が脳内にリフレインする時

          45. 祇園祭と、老松の夏柑糖。

          東京から、Nが帰省した。「ことしは祇園祭が3年ぶりにあるというので、祭気分を味わいに帰った」という。仕事の都合で、3日しかいられない。そこで後祭の宵山には一日早いが、炎天の京都へ繰り出した。 出町柳界隈を歩き、糺の森、下鴨神社を参拝。氷室の氷が自慢の「さるや」のかき氷を食べて、イラストレーターの知人が催している「草と本」のイベントへ。 夕方。風がふわりふわりと吹く。駒形提灯に赤い灯が入る四条烏丸の烏丸通りや堺町へ入る。 3年ぶりとあって、人出も多く、地元の保存会の衆も気

          45. 祇園祭と、老松の夏柑糖。

          44. あおい水の時間、ブルーモーメントに呼ばれて

          蒸し暑い日中、今年はまだクーラーをつけずにいる。宵の時間がくると、やっと本来の自分になるようだ。日没の時刻、その少し前をみはからって散歩に出る。 きょうはリゾート地で買ったオリーブ色のビーチサンダルにした。脚をいれた時には、親指と人差し指の真ん中らへんが擦れて、鼻緒が少し痛かったが、履いていると慣れてきた。足裏の神経は、脳に直結しているというが、ぺたぺた歩いているうちに、その辺の草の茎や花の匂いが風に運ばれて、鼻孔に届く。  眺めのいい場所をみつけて、月を仰いだ。魂の強さ

          44. あおい水の時間、ブルーモーメントに呼ばれて