しろねこ

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  • Twitterのお話。

    ちまちまと自分のTwitterに関わる雑記を書いていきます。内容的には自己紹介を兼ねる部分が大きいです。ぼちぼちとよろしくお願いします。

  • 創作寄せ集め

    雑多な私の創作集です。楽しんでいただければ幸いに思います。

  • 古宮九時先生関連

  • 2019上半期ベスト10冊

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幻想と共鳴――藤村由紀『ジルコニア』

 職業作家がいなくなった時代の、ある書き手と読み手の交友――。  法により誰もが本の出版を定められた社会。そこで問われた物語の価値と作家にまつわる物語に、きっと「脳」を揺さぶられるでしょう。 初めに  最初に断っておきたいことが、二つあります。  一つ目は、この記事は紹介ではなく感想の記事に近い、前言(参照:私のTwitterのお話その2)を翻したものになります。とはいえ、そもそもネタバレで困るような物語でもありませんとは言っておきます。  二つ目は私がこの小説が群を

    • 《カクヨムWeb小説短編賞2019》を終えて

       まずは投稿した作品群のご紹介を  終末SF/FT 『水底に白亜は謳う』(1/31投稿) https://kakuyomu.jp/works/1177354054893949277  現代FT/寓話 『水に葬る夏休み』(12/22投稿) https://kakuyomu.jp/works/1177354054893204284  現代恋愛/ほのぼの 『週末、二人の』(12/19投稿)https://kakuyomu.jp/works/117735405489312309

      • 『週末、二人の』-Short Story-

         冬の寒さを感じる遅い朝に、弱々しい日を背に急坂を登っていく。  辿り着いた「宇山」と表札の上がったこの家は、いわゆる山の手のお屋敷だ。  品のある意匠の鉄門を開いて庭先を渡り、インターホンを押す。程なくして癖っ毛の青年が顔を覗かせた。 「――やぁ、カナちゃんか。いらっしゃい」 「……おはようございます、日向(ひなた)くん」  小さく頭を下げる。そんな私に朗らかに声を掛けて、扉を大きく開いた。    * * *  二階の日当たりの良い角部屋。窓際のベッドには一人の老

        • 運命の恋愛譚の序曲――古宮九時『Unnamed Memory Ⅰ』感想

           長いお伽噺の始まりたる第一巻。重々しく始まるかと思えばコミカルに展開される洗練された物語に、きっと楽しみながらも引き込まれるでしょう。 初めに  心配してた絵は素晴らしく素敵でした。  油絵と水彩の混ざったような鮮やかでありつつも繊細で、どこか郷愁を誘う幻想的な色使いと言った印象です。しっとりとしたタッチが作品世界によくあってるなぁと思います。  Act.1の全巻通して口絵の中では一巻の最初の絵が一番好きかもしれませんねー。  霞む遠景と佇む二人が世界の空気感、お伽噺な

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        幻想と共鳴――藤村由紀『ジルコニア』

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          人と、意思と、幸福と。それらを綴る、お伽噺――『Unnamed Memory』

           魔法が当たり前にある世界での、王と魔女による運命のお伽噺――。  壮大で、重厚で、軽妙で、悲痛で、愉快で、鮮明で――しかし、儚い。そんな叙情詩のような物語に、貴方はきっと引き込まれるでしょう。 初めに  藤村由紀さん、あるいは古宮九時先生の書いた、永く壮大な物語。  『Unnamed Memory -名前を持たない追憶-』  公開から十と余年の時を経てようやく本になったこの小説は、私にとって忘れがたい特別なものであり、誰しも手にとって欲しいと願わずにはいられない物語

          人と、意思と、幸福と。それらを綴る、お伽噺――『Unnamed Memory』

          友情の青春に灯る謎と功罪――米澤穂信『本と鍵の季節』

           暇を持て余す図書委員二人の解き明かす、功罪潜む日常の謎――。  男子高校生二人の友情、そして日常と学園に埋まる青春と謎の繊細な陰影に、痛みと切なさを覚えながらもありしいつかを追想させられます。 最初に  著者の米澤穂信先生と言えば日常の謎というジャンルの推理小説の名手として知られています。代表的なものを挙げると、京都アニメーションにより映像化もされた『氷菓』の物語群、〈古典部シリーズ〉のような作品などががありますね。ふとした日常に潜むちょっとした謎を、これまた普通の延長

          友情の青春に灯る謎と功罪――米澤穂信『本と鍵の季節』

          胸躍り瞠目するは或る男の旅路――筒井康隆『旅のラゴス』

           学究の旅に薫るは随所に練り込まれたSF的質感の光る異郷の風――。  多くの異質な要素を隙なく組み上げたこの物語は、異なる土地の風土風俗を独特の感触を持って味わわせてくれるものです。 最初に  筒井康隆先生と言えばSF、ということはおそらく多くの読者が一致して持つ見解だと思います。もちろんジャンルの横断的な作品もまた、先生の特徴ではあるのですが。  そんな筒井先生が世に放ったこの物語は、先生らしくどこかSFの要素を織り込みながらも、ファンタジーの醍醐味のひとつでもある『遠

          胸躍り瞠目するは或る男の旅路――筒井康隆『旅のラゴス』

          長袖の嗚咽《創作小説》

           ――彼は、いつも長袖の服を着ていた。  寒い冬は勿論、暖かく麗らかな春の日も、うだるような暑さの夏の日も、残暑厳しい秋の日も。  ひょろりと背が高く、折れそうなほど線が細く、不健康に青白い肌を持つ彼は、いつだって長袖を着ていた。 「ただ着たいから、着てるだけだよ」 「だって、そうしないと泣いちゃうからね」  それは、彼がいつかに笑って言ったこと。  ――寂しそうに、口ずさんだ言葉だった。     §  クラスメイトの彼と初めてまともに話したのは、高校一年生の夏休

          長袖の嗚咽《創作小説》

          水に葬る(おくる)夏休み《創作小説》

           ある春。  私は麗らかな陽の射す通学路で、血も凍らせるような妖気と、身も心も緩むような陽気じみた芳香を纏う歪な怪異と出会った。  ――これは、自分の居場所を探しているかわいいかわいい白猫の、何百年にも渡る伝説の続き。  * * * * *  はり【玻璃】  1.七宝の一つ。水晶のこと。  2.ガラス。     * * * * *  猫又。桜。海。子供。幼猫。人。境界。想念。葬送。幻想。  ――きっとこの心についた玻璃色の傷は、消えることはないだろう。     §

          水に葬る(おくる)夏休み《創作小説》

          美しくも密やかに心を揺らすもの――住野よる『君の膵臓をたべたい』

           紡いだ物語の、贈る言葉と命題の静かな衝撃――。  ある少年と少女による命の価値と人生を問うこの物語は、結末と題名の意味、そして示された命題の鮮烈さに胸震えさせることでしょう。 最初に  実は私、幸運にもWeb版を読むことのできた人間なのですよね。  正確には覚えてませんが、確か読み終わってからそう経たないうちに削除されたように思います。  ざっと見た感じ「また病気の人との悲恋系か……」なんて感想を持って読み始めたのを覚えてます。読了後そんな感想はぶっとびましたが。

          美しくも密やかに心を揺らすもの――住野よる『君の膵臓をたべたい』

          本と書店を愛する、全てのひとに――村山早紀『桜風堂ものがたり』

           ある地方の町、古くからの書店が起こした温かくも胸の高鳴る奇跡――。  読者の心の温度を自在に導くこの物語は、読むと体の奥底から込み上げる心地よい熱を感じられるものでしょう。 最初に  作者の村山早紀さん、実はこのお名前は私が今年の4月にTwitterを始めてから知った方なのですよね。今のところ『桜風堂ものがたり』と『星をつなぐ手』しか読めていないのですが、正直なところTwitterを始めてから初めて読んだ20余名の作家さんの中でも特に好きなお方です。  そう思うくらい素

          本と書店を愛する、全てのひとに――村山早紀『桜風堂ものがたり』

          才人達の盛大な競演――恩田陸『蜜蜂と遠雷』

           個性豊かな才人達の、音楽のぶつかり合い――。  色彩鮮やかな「音楽の物語」を描き出すこの小説は、〈シンプルに読むことが楽しい〉ものであると言えるでしょう。 最初に  恩田陸さんと聞くと、まず私がイメージするのは『夜のピクニック』の作者である、ということでした。  青春小説の金字塔であり、中高の読書感想文における推薦図書の常連と化している、あの作品です。あの小説の楽しいところは登場人物たちの繊細で微妙な心理とその変化を鮮やかに描き出すところであり、その例に漏れずこの物語も

          才人達の盛大な競演――恩田陸『蜜蜂と遠雷』

          私のTwitterのお話その3《モーメントについて》

           頻繁に使うので、ぜひ見てもらいたいな、と。  現環境だとスマホやPC共に使いづらいですが『記憶の本』というモーメントは随時更新してます。  折角なので収録しているものを適当にピックアップします。  こんな感じで【本の話ということでひとつ】で始まり、画像なしで綴るのがこの「記憶の本」シリーズであります。ゆるゆると、ご覧いただければ幸いです。  で、もう一つが『Unnamed Memory』の紹介。2巻発売前、自分がTwitterを始めてから初めて書いたUMの紹介です。

          私のTwitterのお話その3《モーメントについて》

          noteのお話(書きさしでふらふら)

           こんにちは、あるいはこんばんは。冴月です。  今回はnoteに書く予定の企画のお話をしたいと思います。……と言っても本当に短いものなのですが笑  このツイートに挙げた本の紹介を書く……というだけのことです。  ただし、『Unnamed Memory』に関しては二巻分、『ジルコニア』に関しては関連作である『緩慢な表象と虚ろな幻想』(クリックで「小説家になろう」の作品ページに跳べます)と別にnoteを書く予定です。  全12回、よろしければお付き合いくださいませ。

          noteのお話(書きさしでふらふら)

          私のTwitterのお話その2《運用の基本方針について》

           こんにちは、あるいはこんばんは。冴月です。  ……駄目ブログの代名詞みたいな書き出しですが、まだ2回目の投稿なので挨拶を入れようと笑  さておき、今回は私のTwitterの運用方針……というと大げさですが、使い方のイメージについて話そうと思います。 Twitterアカウントの目的、基本用途  前回 (参照:https://note.mu/ayafumibun/n/n9f37a9f011d1) もお話しましたが、基本的に読書を基調とする趣味垢、そして日常垢として活動し

          私のTwitterのお話その2《運用の基本方針について》

          私のTwitterのお話その1《初めまして》

           noteでは初めまして、冴月(https://twitter.com/saetsuki_0)と申します。  まず自己紹介……の前に。  このアイコンが目印! です笑  基本的にTwitterに生息する読書する人です。本を、小説を推す人でもあります。しかし、アカウントの系統としては日常、趣味を標榜しています。私の日常と趣味は読書に彩られているので、読書垢としての色味が強く、染まりきっていますが笑  密かなアカウントの趣旨としては、本の面白さを伝え合いながら(=読む本

          私のTwitterのお話その1《初めまして》