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「5%の目」と「95%の期待」

↑は青山ブックセンター店長・山下優さんのツイートです。

たしかミステリィ作家の森博嗣さんも似たようなことをエッセイや小説の中で書いていた気がします。

この現状を踏まえ、我々書店員はどういう方向へ舵を切るべきでしょうか。本を読む人を10%に増やすことを目標に掲げる? 5%にもっと多く買ってもらえる選書を心掛ける? 

新日本プロレスの親会社でもあるブシロードの木谷オーナーは、かつてインタビューの中で「ジャンルはマニアが潰す」と発言しました。要は目が肥えていて熱心な反面、頑固で保守的なお歴々の顔色を窺っていたら新規ファンを増やせないと。

いわゆる「一見さんお断り」もひとつの文化でしょう。ライト層にとって敷居の高い書店もあっていい。でも個人的には、初めて訪れたお客さんや久しぶりに来てくれた人が足を踏み入れるのを躊躇する店では働きたくない。そういう職場にいると勘違いしそうだから。「わかる奴だけわかればいい」「ウチの選書を理解できる人だけ来てください」みたいな。

5%のみを顧客ターゲットに据えると、業界全体がそっちの方向へ流れてしまうかもしれない。読み手が増えず、売り手も減ればいずれ書き手の質も落ちる。まさに「マニアがジャンルを潰す」ルートです。それは避けたい。

だから5%の目を意識しつつ、95%のニーズを満たす。そういうバランス感覚を持った店にしていきたい。そして95%を将来に向けた「5%予備軍」として常に惹きつけておくのです。

大事なのは習慣づけ。「仕事帰りにとりあえず覗いてみよう」「悩んだり迷ったりしたら本屋へ行こう」と当てにしてもらえる場を用意することです。その意味で青山ブックセンターは最高のお手本。とにかく居心地がいい。用がなくてもつい足を運んでしまうファンが多いと聞いています。

5%を失望させず、95%の期待にも応えられる。そんな「硬軟織り交ぜた空間作り」を意識してやっていきます。

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