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「光る君へ」の「入り口」にオススメの2冊

大河ドラマ「光る君へ」見てますか?

私は普段テレビを楽しむ習慣がありません。なおかつ日曜も働いているせいか、つい忘れがち。しかし清少納言が出てきたとあっては話はべつです。

前にも書きましたが、学生の頃「枕草子」が大好きでした。注釈書を持ち歩き、電車のなかで読み耽っていたほどに。

いま思うと、予備校の古文の先生が「清少納言は髪が茶色がかっていて、くせ毛だった」という雑談をしてくれたのも大きかった。現代人っぽいビジュアルイメージに親近感が増したのを覚えています。

話を戻しましょう。

職場の日本史棚で「源氏物語」の関連本を展開しています。正直動きはいまひとつ。よく売れているのは、毎年の定番である大河ドラマのガイド本ぐらいでしょうか。

あるいは「源氏物語」よりも「枕草子」からアプローチする方が有効かもしれない。たとえば村上春樹さんの本を紹介する際も「海辺のカフカ」や「ノルウェイの森」といった超長編小説の前に、小気味いいエッセイである「村上ラヂオ」や「村上朝日堂」を提示する方が入りやすいですよね。

「入り口」は誰にとっても存在します。

新日本プロレスの棚橋弘至選手が、かつて著書のなかで「ぼくをキッカケに新日本を見てくれるようになった人が、オカダ・カズチカや中邑真輔のファンになるパターンが多い」みたいな話をしていました。一種の自虐ネタ。しかしこの事実は、棚橋選手の貢献度がオカダ&中邑両選手のそれに劣ることを意味しません。

要は役割分担と適材適所です。先発投手とクローザーみたいなもので、どちらが大事ではなく両方不可欠。古典や平安時代の文化に興味を抱く「入り口」には、おそらく「枕草子」の方が相応しい。でも決して「源氏物語」より軽いとかそういうことではない。どちらも色の異なる名作なのです。

そして「源氏物語」と同じく「枕草子」の関連本もまた膨大に存在します。「入り口」の「入り口」が必要ではと思うほどに。

オススメを2冊紹介させてください。

人気シリーズの新装版。↓は旧版を読んだ際に読書メーターへ書いたレビューです。

男社会の中でも鋭すぎる機智の刃を隠そうとしない清少納言と幼少時に父を亡くし、後ろ盾を持たない状況で生きるしかなかったゆえに冷徹極まる藤原行成。共通項は嫉妬含みの敵の多さと理解者の少なさ、そして和歌の名人の家に育ったがゆえの和歌嫌い。家は家、自分は自分という潔さがいい。あとは己が「これ」と定めた使命に一途な点か。少納言が詠んだ有名なあの歌は行成を素気無く遠ざけている様でもあり、本当は関を越えて近づいてきて欲しいと仄めかしている様でもある。人生が二度あれば、と考えるのは無粋だろうか。

「枕草子」本編だと、私が好きなのは↓です。

全300余の章段から選りすぐった約3分の1を収録。大きなサイズで、訳の下に本文を載せている構成がありがたい(まず内容を頭に入れ、それから原文をじっくり味わえる)。「冴えかえったブログ」と帯に印刷されていますが、まさにそんな感じでスイスイ読めます。

ただ残念ながら新刊書店にはなさそう。復刊を希望します。

大河ドラマの「入り口」に「枕草子」をぜひ。

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