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考察「失業中のお昼にパスタを茹でる」

表参道の山陽堂書店。

大好きな場所のひとつです。

もう何年も利用していて、和みとクールの同居したブックカバーを大事に保存しています。しかし↑を見るまで、和田誠さんのデザインだと知りませんでした。猛省。

↓をここで衝動買いしたのを思い出しました。

和田さんと安西水丸さんによるリレー形式のエッセイ集。タイトルを考えたのは、おふたりと親交の深い某作家です。ノーベル文学賞の受賞など望んでいないのに勝手にメディアに騒がれ、一方的に失望されたり貶されたりして「やれやれ」となっているであろうあの方です。

この方のとある代表作で、失業中の男性が昼食のためにパスタを茹でる場面があります。詳しいことは知らないのですが、発表当時に「失業者は昼食にパスタなど茹でない」みたいな批評をした人がいたとか。

私も失業中の昼ごはんにパスタを茹でた経験はありません。でも仮に一般的ではないとしても(そうは思わないけど)、この男性が世間との折り合いの付け方が上手くないタイプなのは読み進めればわかります。その事実を「失業中のお昼にパスタを茹でる」という描写でメタファー的に訴えているとすれば、むしろ文学的に秀逸と感じませんか?

春樹さん(あ、書いてしまった)や和田さん、水丸さんが表明する価値観や作品を介して訴えてくる何か。世の中がそれらに親和性を覚える人だけで構成されているわけではないのはわかっています。否定的な意見があってもいい。いや、むしろ彼らは全体主義の家元のひとつみたいな位置に祭り上げられることを決して望まぬはず。

ただ私は彼らが好きです。なおかつ彼らを好きではない人を否定せず、できれば平和的な共存をしたいと願っています。もしかしたら、こういう考え方は書店で働くことや山陽堂書店をはじめとする個性的な本屋へ通うことを通じて自然と身に着いたのかもしれません。

穏やかな雰囲気を楽しみたい。また休日に行きます。

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