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#中世哲学

ネオ高等遊民『一度読んだら絶対に忘れない哲学の教科書 』読んだ

ネオ高等遊民『一度読んだら絶対に忘れない哲学の教科書 』読んだ

通称ネオ哲学史、やっと読み終わった。

発売日前にフライングゲットしたのにずいぶんと時間がかかってしまったのは、ポップな装丁、キャッチーな見出しに反して、骨太な内容だったからである。

著者のネオ高等遊民氏は日本初の哲学系Youtuberであり、その名の通りタイで高等遊民をしているという非常に羨ましいお方である。

氏は読書サークルも主宰されており、私も混ぜていただいております。

本書がよくある

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山内志朗先生『天使の記号学』読んだ

山内志朗先生『天使の記号学』読んだ

山内志朗先生はセカイ系とスコラ哲学の相関をしばしば指摘されている。

わかるようなわからないような論点だ。だからもう少しそれについて知りたいと思ってこれ読んでみました。

存在の一義性については相変わらず理解できなかったが、現代のグノーシス主義のことはちょっとわかった気がする。

そういうわけで以下はポエムであって、内容の要約とかではない。

序章においてリアリティとはなんぞやという問答から始まる

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2023年読んで良かった本 ギリシャ哲学・教父哲学・中世哲学編

2023年読んで良かった本 ギリシャ哲学・教父哲学・中世哲学編

2023年に読んだ本の振り返り、まだまだ続く。

幸運なことに昨年は素晴らしい書籍に出会う確率が非常に高かった。

本日はとりあえず古代とか中世の哲学、およびキリスト教関連の本を厳選して挙げていく。

まず私にとって決定的に重要だったのが『個の誕生』である。

キリスト教に古代ギリシャ哲学、具体的には新プラトン主義が分かちがたく絡んでいること、さらには中世や近代の西欧の思想に浸透していることがよく

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八木雄二『神を哲学した中世』読んだ

八木雄二『神を哲学した中世』読んだ

中世哲学入門シリーズ。

読みやすくてよかった。

形而上学や論理学的なこと、というか悪い意味でのスコラ学的なところに深入りしないで、どうしてあのような煩瑣な理屈を必要としたのかに力点が置かれている。

したがって、中世の人々の思考に入り込むことになる。大衆がふつうに神の実在を信じていたこと、修道院や大学の学者たちの理屈の組み立て方など。

なぜ中世の人々の思考を学ぶ必要があるかというと、あの時代

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山内志朗『中世哲学入門』読んだ

山内志朗『中世哲学入門』読んだ

ぜんぜん入門書じゃない入門書。むりやり2回読んだ。

今年の初夏にラテン語の勉強を再開したとき、ちょうどよいタイミングで山内志朗先生のシラスのチャンネル『ラテン語が一瞬で身につく夢の哲学チャンネル』略して夢ラテが始まったのである。

私は山内先生はお名前しか存じ上げなかったのだが、朴訥とした語り口に一瞬で魅せられてしまい、そのときちょうど発売された『中世哲学入門』を購入したのである。

しかし日本

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井筒俊彦『イスラーム哲学の原像』読んだ

井筒俊彦『イスラーム哲学の原像』読んだ

ヨーロッパ中世について知り始めると、やはりイスラーム世界についても学ばなくてはならないような気がしてくる。

日本においてイスラーム哲学の結節点となったのは井筒俊彦先生であるらしいので、先生の著作の中でもいちばん読みやすそうなのを手に取ってみたのである。

これは講演集であるからとても読みやすい。

イスラームの哲学というか思想において非常に重要なのは、アヴィセンナでもなければ、アヴェロエスでもな

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リチャード・ルーベンスタイン『中世の覚醒』はすぐれた哲学入門書であり歴史書だ

リチャード・ルーベンスタイン『中世の覚醒』はすぐれた哲学入門書であり歴史書だ

一部で絶賛されている『中世の覚醒』を読んだのだ。非常に面白かった。

原題はアリストテレスの子どもたち、みたいな感じだ。

レコンキスタの開始とともにトレドやシチリアにて、西洋人はアリストテレスを再発見する。そしてアリストテレスがいかに受容されていったかの物語であり、中世哲学の入門書として最適である。

歴史的背景を抜きにして神学論争だけ紹介されても困るのだが、本書はそのあたりも含めて解説されてい

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富松保文『アリストテレス はじめての形而上学』読んだ

中世哲学をヨタヨタと学び始めたが、そうすると避けて通れないのがアリストテレスである。

かといっていきなり原書を読むわけにはいかないので入門書を探したところ、これがよさそうだった。

Ciniiで検索すると著者はベルクソンとかメルロ・ポンティとかを専門としているようだが、まあいいだろう。NHK出版ならクオリティは担保されているだろう。

タイトルのとおり主に形而上学の一部を解説しているが、デ・アニ

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山内志朗『普遍論争』読んだ

山内志朗『普遍論争』読んだ

山内志朗先生の「ラテン語が一瞬で身につく夢の哲学チャンネル」を購読して、私は先生のファンになってしまった。だから今年出版された『中世哲学入門』を購入したのだ。

ところが、どこが入門やねんって感じの難易度で途方に暮れてしまったのである。

とりあえず同書でたびたび引用されている、山内先生の初期の著作『普遍論争』を読んでみることにしたのだ。

普遍論争を図式的にではなく、ちゃんと残されたテキストに即

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山本義隆『磁力と重力の発見1 古代・中世』読んだ

山本義隆『磁力と重力の発見1 古代・中世』読んだ

山本義隆氏は東大全共闘の重要人物であるが、駿台予備校の物理の先生としてのほうが有名かもしれない。

私は河合塾に通っていたが、物理の参考書は駿台のものを使っていた。高校物理の範囲にとらわれず、大学の物理へとスムーズに移行することを主眼とした骨太な書籍の数々は一部の受験生を魅了していたのだ。ちなみに山本氏が全共闘を指導していたことは河合塾の授業で習った。

大学生になると山本義隆氏がそういう狭い枠で

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