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アカデミー作品賞受賞韓国映画『パラサイト・半地下の家族』の感想

こんにちは

映画や海外ドラマのブログを書いているアラ還主婦のミルクです。


韓国映画の『パラサイト』は

2020年のアカデミー作品賞を獲得しました。
(外国語の映画としてはアカデミー作品賞は初受賞です)

最近、再び『パラサイト』を観る機会があったので、以前書いた記事をリライトしてみました。


『パラサイト・半地下の家族』2019年韓国製作・監督ポン・ジュノ


左から息子、父、母、娘


まず映画の最初に登場するのは韓国の貧しいエリアに住んでいる父と母、息子と娘の4人家族だ。

彼らは全員まともな仕事に就けていない。

父は商売に失敗してから
ずっと失業中

息子は兵役帰りで大学受験を失敗してフリーター

母も娘も定職もなく・・・

家族でピザ屋の宅配用の箱の組み立ての内職をしながら
なんとか生活をギリギリ維持している状態。

彼らの住んでいるところが
映画のタイトルにもあるように半分地下の部屋である。

地面すれすれに窓がある
そんな狭い半地下のアパートに家族4人で住んでいる。

窓から見える景色は地面で
道路と窓が接している。

陽当たりゼロ


wifi代すら払えないので、近隣の住民から勝手に拝借して使っている。
(パスワードを変えられると使えなくなるので大変だ)


トイレでwifiを探す息子と娘

そんな極貧生活でも、なぜか彼らはユーモアたっぷりで、たくましく生きている?
ように見える。


ある時 息子が名門大学生の友人から、
友人が海外留学している間だけ
裕福な一家の社長令嬢の、家庭教師の代理をしてくれないかと頼まれる。

お金のために、大学生だと身分を偽り(名門大学の入学証書の偽造を妹にしてもらい)
裕福な社長一家の娘の家庭教師になる息子。

その後、社長や奥さんに上手く取り入って
息子と娘は家庭教師に、父はお抱え運転手に、母は家政婦さんにと
半地下家族全員が職を得ることができた。  

ただ彼ら4人が家族であるということは秘密にしている。

この映画のお金持ち一家は意外と単純でお人好しで人を信じやすい。

(相手が名門大学生というだけで、たちまち信頼を勝ち取ってしまうあたりが学歴至上主義の韓国らしくて面白い)

最初はリッチな彼らの生活に憧れながらも仕事はちゃんとこなしていた半地下家族だったが
自分たちには決して手の届かない圧倒的な格差を身にしみて感じ、
彼らの想像もつかないリッチな生活を目の当たりにするに連れて

いつしかお金持ちへの憧れから憎しみへと変わっていく様子は恐ろしい・・・

有名な建築家が高台に建てた社長宅のため息が出るほどの豪邸

広大なリビングから見える見事なお庭・・・

映画の後半、社長や奥さんに差別されていると感じ始め、だんだんと憎悪を募らせていく半地下家族の父親の表情にはゾッとする。


どうしようもない格差の壁にぶつかった時、絶望感の中で
人は何を思い、どのような行動に出るのか。

お金持ちに取り入る全ての計画を立てていたのは父親だったが
その父親の計画は失敗してしまい、最終的には家族全員が職を失う最悪の事態になる。

この先はネタバレになるので書かないが、不測の事態が起こるのだ。

せっかく職を得たのに父の犯罪行為から全てを失ってしまった半地下家族。

一度手に入れたものを全て奪われるのは、もともとなかった時よりも辛いものだ。


この映画の「パラサイト」の意味は「寄生虫」である。

この半地下家族は裕福な社長一家のパラサイトになろうと計画したが、
そこには本当の意味での幸せな生活は待っていなかった。

パラサイトして一時的には良いこともあるかもしれない。

しかし誰かに依存したり、寄生するということは
自分のことを偽ったり、蔑んだりしないといけないことでもある。

自尊心を持つ事ができなくなる。


ただ、この半地下家族も何も好んでパラサイトの道を選んだのではなく

失業して職も見つからない、どうしようもない生活苦から脱出するためにパラサイトになることを選択するしかなかったのだから、一概に責めることはできない。

そして、わずかな希望すら持てない社会に明るい未来は見えない。

韓国では日本以上に少子化が進んでいる。
先日、テレビで韓国の若者が「自分自身がどうなるか不安なのに、子供を持つどころか結婚するのさえも怖い」と話していた。

映画のラストで 息子が罪を犯して失踪した父に向けて書いた手紙のシーンは、息子のただの妄想だという意見もあるが、私はそうは思いたくない。

事件を起こして失踪した父親は

『絶対に失敗しない計画は無計画だ』
『計画したってその通りに人生はならないから』と言っていたが


「嘘をついたり人を騙さずに誠実に生きよう」と決心した息子が立てた未来への希望に溢れる計画。

今度こそは、彼の計画を実現達成してほしいと私は心の底から願った。


もし、絶望のどん底の人々がこの父親の云うように
無計画に人生を生きたら社会はとんでもない混乱に陥るだろう。

映画では大雨が洪水を引き起こす場面が後半で出てくる。

上流に住んでいる裕福な人々は、洪水で下水が溢れて悲惨な状態に陥っている下流に住む人々の苦しみなど知らないし、知ろうともせずにのうのうとしている。

これでいいのか?

上流から下流へと流れる汚水や泥

どこかでそれを止めなければやがてそれは上流へと押し戻される。

では、下流に住む人々は上流に住む人よりも怠けていたのだろうか?
一生懸命這い上がろうと努力してきたのではないだろうか?

いくら努力しても報われない社会はどこかで歪みがあらわれて無理がくる。

報われない人が増えると不満が溜まり、不安な世の中になる。


そうなればこの映画の結末のように富裕層や特権階級の人だって今までのようには生活できない。

あまりにも不平等な世の中の仕組みを放置していれば
この映画のように悲惨な結末が訪れると示唆された洪水シーンだったのかも・・・

そんな警告をこの映画で感じたのは私だけではないはずだ。


息子が立てた希望溢れる計画を実現させるには、理想論だと言われるかも知れないが、頑張っている人には平等にチャンスが与えられるということが大事だし、
なんらかの理由で頑張れない人にも温かいサポートが必要なはず。


韓国ではスプーン階級という言葉があるらしい。

諸説あるが、ざっくり言うと

韓国ではお金持ちの家に生まれた人は金のスプーン
(超富裕層はダイアモンドのスプーンだとか・・・)

普通の家に生まれた人は銀のスプーン

貧乏な家に生まれた人は泥のスプーンを持って生まれてきた、と比喩されるそうだ。

はたして、泥のスプーンで人は食事をすることができるだろうか?


2019年にこの映画が公開されて4年が経つ。

ますます格差は広がっている。

今回の映画感想ではたくさんの問いをここに書きました。

重い内容の映画だったけれどもこの映画がハリウッドで認められたことに
きっと意味があるんだと思う。



予告編


長文を最後まで読んでくださりありがとうございました。

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