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余白を作る

余白を作る

すぐに見られない、明日届かない、重い、大きい、遠い、高い、ざらざら。程よさを確認するために、そういう部分を省かないようにしています。

フィルムに景色を焼き付ける。カセットテープで流れを感じる。本の厚みを知る。大きなスクリーンで映像に没入する。生の音楽を浴びる。

世の中がペースを落としてくれますように願い、引き摺られながらも、少し抗う。

無駄を愛でよ。芸術は長く、人生は短し。

ひとつなぎの

ひとつなぎの

映画『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』を観た。『戦場のメリークリスマス』での俳優業。映画『ジョジョ・ラビット』のエンディング曲『Heroes』。兄の部屋(と言っても二段ベッドで仕切っていただけなので筒抜け)から聴こえてきた『Little Wonder』。僕の知識はその程度だった。兄が壁に貼っていたデヴィッド・ボウイのポスターとは、いつも目が合っていた。

映画では、音楽や演技という

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弔うように。

弔うように。

日比谷野音まで、bonobosの解散ライブを観に行った。ボーカルの蔡くんの声の延び。複雑なリズムから起こるグルーヴ。自然と手拍子をし、揺れる体。好きな曲では涙も出た。

大学生の頃、アルバイトから帰宅した深夜に、ソファーに寝っ転がって、1人でスペースシャワーTVを眺めるのが習慣だった。番組のパワープッシュで不意に流れたTHANK YOU FOR THE MUSIC。MVのロケ地は見慣れた駒沢公園。

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京都音楽博覧会2022。

京都音楽博覧会2022。

予報通りの雨模様。槇原敬之の純真、又吉直樹の哀愁、くるりは盤石。7年連続の参加を経て、諦めと潔さを覚えた私は濡れネズミ。

歩。

歩。

1、2、1、2と、掛け声が無くても、歩幅と歩調が合う、ということ。

祭りのあと。

祭りのあと。

音が止む。演者が去る。光が和らぐ。舞台が片される。観客の昂りが凪ぐ。人が減る。風が通る。空気が入れ換わる。何度も振り返る。祭りのあとの淋しさ。

名曲(誰もが聴いたことがあるであろう)が生まれる瞬間を見た。

名曲(誰もが聴いたことがあるであろう)が生まれる瞬間を見た。

The Beatles: Get Back(Disney+)、を観ました。

8時間超えのドキュメンタリーはとても生々しく、現代にビートルズがいないことが不思議な気持ちになる。
個々の素の姿とキャラクターを垣間見ることができ、強い個性のぶつかり合いから、名曲(誰もが聴いたことがあるであろう)が生まれる瞬間を見た。

2022年のレコーディングの主流がどうなのかは知らないけれど、1969年に納得が行

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ステージは巡る。

ステージは巡る。

折坂悠太 心理ツアー

首尾一貫した素晴らしいステージで、舞台を一幕観劇したかのように錯覚。

2021年の秋まで、ほぼ観ず聴かずだったにも関わらず、
フジロック出演辞退の文書で人柄に惚れ、
新曲『炎』のMVを見てCD屋に走り、
アルバム『心理』を聴いて追加公演のチケットを取り、
そして本日、ここに至る。

今回のアルバムは、以前より音域を下げ、たゆたうような、抑揚のあり過ぎないトーンで、流しっぱ

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HARUOMI HOSONO『SAYONARA AMERICA』

HARUOMI HOSONO『SAYONARA AMERICA』

細野さんの音楽は、50年という歳月の中、興味の赴くまま、あらゆるジャンルを渡り歩いている。
はっぴいえんど、細野晴臣、YMO、SKETCH SHOW、映画音楽。
ロック、フォーク、テクノ、エレクトロニカ、民族音楽、ブギウギ、カントリー、アンビエント。
歴史や知識が裏付けされ、その全てに厚みと説得力がある。
安定、変わらないこと、同じことを続けることは素晴らしいけれど、流れに身を任せて色々やっていた

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いつまでも漂っていたい海の底だった。

いつまでも漂っていたい海の底だった。

フィッシュマンズと出会った時、佐藤伸治はこの世にはいなかった。

"伝説のバンド"、"天才" 。そんな世間の評価と同様、僕の中でも神格化されていた佐藤伸治が、出会ってから18年の時を経て、改めて人格化し、1999年の逝去による喪失感を味わうことになる。

『映画:Fishmans』の公開を機に、まずは佐藤伸治と近しい人の著書、『僕と魚のブルーズ 評伝フィッシュマンズ』(川﨑大助著)を読む。次に、発

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そういうところ。

そういうところ。

2020年3月以降、イベントの自粛要請などにより、様々なアーティストのライブが中止になった。そして、ライブに行かれなくなったリスナーへの救済措置のような形で、アーティストがライブ配信を始めた。

僕がチケットを取っていたライブも徐々に中止になり、残念な気持ちにはなっていたのでライブ配信を楽しませてもらってはいたが、「何か届けてくれ」とリスナー側から助けを求めてしまうのは、少し違うのではないかと思っ

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