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心理学で読み解く『すずめの戸締り』〜こころの瓦解

子どもの中学受験が始まるから年が明けたら精神状態がオカシクなることがわかっていたので,新海誠監督の『すずめの戸締り』を年をまたいで2回観てしまった。

どうでもいいけど,「カントク」と言えば,1990年代の深夜番組に欠かせないキャラだった、黒ブチ眼鏡にちょびひげの山本晋也「カントク」を久しぶりに思い出した。(ご存命みたい)

正直に言うと,やっぱり1回目に観た時の方がダイレクトなインパクトがあった。

一言でまとめると,16歳の女子高生《鈴愛(すずめ)》が《喋る猫のダイジン》を3本脚で自走する《黄色い椅子》と一緒にSNS投稿をたよりに追いかけて,大分の日南から四国,淡路海峡大橋を渡って神戸,東京,そして,東北へと,制服姿でおサイフケータイ1つで家出するロードムービーだ。

制服姿でお財布も持たずに放浪って,インパクトあり過ぎだろ。
それだけでも,異常な感じなんだけども,本丸は,やっぱり「311の震災から11年後の世界」がテーマだってことじゃないかな。

新海誠監督の映画は,隕石がある村に落ちてくる災害とパラレルワールドが交差する,瀧(たき)くんと三葉(みつは)のラブストーリー『君の名は』でメジャー感が一気に増した。

その次の『天気の子』では,両親がおらず小学生の弟を養育するヤングケアラーで15歳の陽菜(ひな)さんが家出少年の帆高(ほたか)と一緒に人身御供となって「晴れ女」ビジネスをして,東京の街が季節外れの雪と大洪水にのまれていく災害パニック映画。

前の2作と同じく『すずめの戸締り』も災害とラブストーリーを絡めた作りだけど,違うのは災害が本当にあったあの311だということ。

災害ラブストーリーの大家(違うのか)でも,2011年から2022年へ11年の歳月を要したということか。

311で大切な人,家族を失った人がたくさんいる中で,あえてドンズバを行くのだから,いよいよ直球で攻めてきた感がある。

しかも,南海トラフ地震の発端になる日南の温泉街の廃墟からスタートして,愛媛では土砂災害で廃校になった中学校,1995年1月17日の阪神淡路大震災の地,明石海峡大橋と神戸では廃墟の遊園地,東京はお茶の水の聖橋の下,最後は東日本大震災の東北道を北上する。

東京だって,江戸時代は富士山の爆発で煤(すす)が積もって寒冷化して農作物が取れず飢饉が起きたし,大正時代は関東大震災が起きている。

わたしの祖母は2歳の時に都内の自宅で関東大震災を経験して,「瓦屋根が落ちてきて家が潰れかけたところを隣の家のお姉さんがさっと抱いて非難させてくれた」と,生前教えてくれた。それに,東京大空襲もあったし,神戸だって神戸大空襲があった。

全部リアルに過去に災害が起こった地だ。というより,世界の2%の自然災害が日本で起きている,災害リスク大の国が日本なんだから,無傷の土地なんてない。

土地には土地の独自の記憶がある。それは,日本では棚上げ式といって,建物を建てる際には神主さんを読んで祝詞を奏上する「地鎮祭」をするし,風水だってあるし,東洋では普通の考え方だろう。

ものごとを始める時ばかり,注目してしまうけれど,始めたら終わる,終わらせることだって,同じくらい大事なのに,忘れてしまう。だから,「後ろ戸」を閉める「閉じ師」の宗像草太(宗像3女神なのだろうな)が職業として成り立つわけだ。

そう思っていたのだけど,この数年,わたしが学んでいる「ソマテック心理学」(体をキーとする心理学)の講座で,博士号を持つトラウマケアのアメリカ臨床心理の大家たちが「土地に目を向け感謝しましょう」からヒーリングをスタートさせたのには,おったまげた。

そんなことを日本の病院でわたしたち心理屋が言ったら,怒られるのに,海外ではフツーに認められている概念なんだ……。と,その格差にゾッとした。

トラウマって,今を生きているわたしの体だけじゃなくて,時をさかのぼった先祖から引き継いでいるし,これから生まれてくる子孫のDNAにも刻み込まれる。体も土地なんだから,当たり前なんだけども。

関東人にとって東北の地は,誰かしら縁のあるところだ。距離的にも,北関東は東北エリアの玄関口だから,東京には東北エリアの出身者がやっぱり多い。

だから,311の東日本大震災の震度5の揺れと余震続きのあの時期を首都圏で過ごしたわたしの体にも震災の記憶のドアがパカパカと音を立てて,開いたり閉じたりしている。

しかも,長子を産んだばかりで普通ではないホルモンバランスの時期だったから,かなりなトラウマ体験をわたしの体に残した。

首の座りきらないほにゃほにゃして温かい小さき赤子を「直ちに問題はない」「計画停電」が繰り返され,町中の電気が消え,対岸のマンションには明かりがともる非常事態下で授乳する日々。

そんな異常な世界が未だにわたしの体に記憶されているから,お話だとはわかっていても,311の異常な世界での子育てと映画の世界が重なって,映画を観ていると,苦しかった。

お茶の水の聖橋エリアなんて,思いっきり青春の地だったから,臨場感がはんぱなかったし,神戸のあの商店街なんて,すすっと聖地めぐりできちゃうほど日常にあるから,映画と日常が重なって,冷静に見てられないったらありゃしない。

わたしの目で見て足で歩いて,体感しまくっていた日常が映画の中にあるんだもの,アニメとはいえ,体は記憶の時空の区別がつかなくなって,そりゃ混乱するわけなのだ。

ここまでが,土地と災害の視点でトラウマ体験をゆさぶられまくった感が満載だった,1回目の『すずめの戸締り』映画鑑賞の感想だ。正直,そっちにばかり気を取られて,登場人物たちの心象風景なんぞ,ちっとも頭に入ってこないし,どうでもよかった。

また今年も12年目の311がやってくる。ちょっとずつ,震災の記憶は薄れてゆくけれど,でも消えたわけじゃない。

薄くても休火山のようなマグマが体にいつもある。

それがソマテックであり,心と体は表裏一体で切り離せないし,分けることは、どだい無理な話だ。

だけど,2回目の『すずめの戸締り』鑑賞では,わたしは土地の記憶でトラウマをえぐられることはなくなった。

代わりにもっと冷静に登場人物たちの心の機敏に思いをはせる冷静さを取り戻した。

ということで,次は心理面からさらに考察を深めてゆく。

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