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忘れられない言葉たち

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本の中の文章、記憶に残り続けるやりとりなど、忘れることができない言葉たちにまつわる記事をまとめました。
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記事一覧

2通のメールから。大地の恵みを編み、贈るということ。

2通のメールから。大地の恵みを編み、贈るということ。

スイートグラスは「甘い香りがするマザー・アースの髪」。
北米先住民が聖なる植物として大切にしてきた、自然からの贈り物。

スイートグラスで三つ編みを作る時には、一人より、編む、持つ、の役割を交替しながら、二人で編んだほうが楽しい。
贈り物は、誰かが誰かに贈り、誰かが受け取って終わるものではない。
贈られたら、感謝を持って返すべきもの。
豊かな関係を育みながら、循環し、続いていくもの。
自然と人間の

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旅、40日目 病と対峙する

旅、40日目 病と対峙する

旅、40日目です。

昨日の投稿で、相方さんと鳥舞を舞ったと書いたところ、コメント欄で、これが舞えるなら病人じゃない、という言葉をいただきました。
病気の深刻度と自覚症状が一致しないのがありがたいのですが、昨日看護師さんと交わした会話もまた真実。

「体調はどう?」
「治療中断で副作用もないし、この一ヶ月でいちばん元気です!」
「それって治療的にはどうかと思うわよ。」

そうですね。病気を軽視して

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旅、39日目 病気になっても病人にはなるな

旅、39日目 病気になっても病人にはなるな

旅、39日目です。

外出禁止期間中、あまりに退屈だったので、相方さんにお願いして久しぶりに2人で鳥舞を舞いました。

鳥舞は、神楽の一演目です。神楽を奉ずるときに必ず最初に舞われ、イザナキ、イザナミの二神の舞とされています。

舞いながら、この舞を練習していた時に先生から受けた注意を懐かしく思い出し、笑いがこみ上げてきます。

「イザナギ、イザナミの舞なんだから、ほらもっと近寄って向かい合って。

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野口晴哉「治療の書」より 全生

野口晴哉「治療の書」より 全生

今回も、治療の書から抜粋させていただきます。
今回ご紹介する部分は、個人的には「治療の書」のハイライトだと思っています。

この箇所のみを見ると、生より死のほうに焦点が当てられているようにも思えますが、全編を通じて伝わってくることは、生き切ることの大切さです。

学生時代の話です。

野口氏の治療の技を体得されている恩師がいました。その恩師と話をしているところに、友人が駆け込んできました。両手に小

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野口晴哉「治療の書」より 明鏡の心

野口晴哉「治療の書」より 明鏡の心

前回、以下の記事でご紹介した「治療の書」。

実は、今日は別の箇所をご紹介しようと思っていましたが、昨日annon さんが投稿された記事を拝読し、予定を変えることにしました。

「治療の書」は、人を治療する際の心構えを説いた書です。ですが、治療する、という条件を外せば、我々にもそのまま当てはまる示唆が多数含まれているように思います。

自分が持っている過去の価値観に固執せず、相手の価値観を受容する

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野口晴哉「治療の書」より 人の生きてゐるは楽しき也

野口晴哉「治療の書」より 人の生きてゐるは楽しき也

昔の文体ですが、書かれていることは平易ですので、どうぞ読み飛ばさず原文を味わってみてください。

「地球にのつて宇宙を闊歩してゐるも又面白きこと也。」

この部分を読んだ後、外を歩いてみました。

「光とともに息し、陽とともに生き、」

陽光を浴びながら、深呼吸してみました。

「花を楽しみ草を悲しみ、海に笑ひ山に考へ 人の生きてゐるは楽しき也。」

今まで見てきたものを思い出しました。
世界は美

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周囲の風景や他者に心を開いてほほ笑みかけてみると

周囲の風景や他者に心を開いてほほ笑みかけてみると

東急線フリーマガジンSALUSで連載されている、理学博士、佐治晴夫先生のエッセイ「宇宙のカケラ」の一部です。

このことを、さらに詳しく述べた部分があります。

私は長い間、自分という個に固執し、何をして生きるべきか悩んできました。若い時ほど強い思いではないものの、人間である以上、自分という個この世の中で活かしたい、という気持ちは、今でも抱えています。

その一方で、

個人とは、自然界の循環の中

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意味と美しさのあいだ

意味と美しさのあいだ

少し前に、アン・モロウ・リンドバーグ著「海からの贈物」より、印象に残った部分をご紹介しました。

今回も、この本の一節をご紹介したいと思います。

著者が島を離れ、もとの日常生活に戻るときに、これからどのように生活していくかの指針を述べている部分です。

この箇所は、読むたびに、目にとまる箇所が異なりますが、中でも一番好きな箇所が以下。

意味と美しさに必要な空間を設けること

意味と美しさの間に

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竹生島へ 言葉の世界は本当に...

竹生島へ 言葉の世界は本当に...

責任と生計と自分の人生を、バランスよく担っていくのは意外に難しいものです。

大丈夫、楽しいし、まだ頑張れる。

そう思っていても、いきなり心身が悲鳴をあげることもあります。

無理をしていると自覚していればいいのですが、大抵そういう時は、無自覚だから困るんですよね。
もうちょっと上手に、小出しにガス抜きができるといいのに。

ただいま、竹生島旅行記を連載投稿中ですが、ほぼ同じタイミングで巳白さん

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しなくてもいい苦労もあるかも。子供たちの進路選択

しなくてもいい苦労もあるかも。子供たちの進路選択

大学受験の山場、共通テストが約1か月後に迫ってきました。
親子共々、緊張感が高まってきています。

がんばってきたことは無駄にはならないぞ、と心の中で子供たちに声援をおくる毎日ですが、同時に、無理ながんばりを子供に要求しないことの大切さを教えてくれた先生の言葉を思い出したりもしています。

前回に続き、起立性調節障害で中学にほとんど通えなかった息子の高校を選ぶ中で、出会った言葉をご紹介します。

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子どもへのまなざし

子どもへのまなざし

佐々木 正美著
「子どもへのまなざし」
福音館書店

これからお母さんになる同僚たちに、何度もプレゼントした本です。

育児や教育に関する情報は巷にあふれていますし、子どもたちと一緒に過ごしていると、本当に小さなことで迷います。

疲れて抱っこをせがまれた時、抱っこする?
頑張って歩くように励ます?
それとも一緒にしゃがみこんで休憩する?

夕食の支度をしている時に、文字がたくさんの本を持ってきて

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鬼降る森

鬼降る森

高千穂地方に伝わる伝説について語った、長老の荒唐無稽とも言えるような話を、笑って聞き流せない著者の気持ちが表現されている部分です。

「こうしましょう、とあなたが言えば、それが正解。
変わりながら伝わっていく柔軟さが民俗芸能の良さです」

教わる立場の気楽さを謳歌してきた私が、物のはずみで先生から郷土芸能のお稽古の会を引き継ぐことになってしまい、アワアワして先生に、こうでしたっけ?と泣きついたらこ

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鬼降る森 続き

鬼降る森 続き

高千穂の夜神楽を、ベテランが若い世代に伝える一節です。
膨大な時間をかけて教え、教わった結果、神楽の担い手たちがどのような存在になるかが次に書かれます。

人ならぬ世界の舞を人に伝え、土地の中で伝承していくことは、まさに天と地のあいだを往還するということだな、と思います。

この本は、たしか朝日新聞のコラム「折々のことば」で知りました。
たった一行紹介されていた文章に惹かれて手に取った本でした。

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できない理由を見つけるのではなく、何が何でも(植物の話です)

できない理由を見つけるのではなく、何が何でも(植物の話です)

こんなことを言われたら、たじろいでしまいそうです。
‥が、これは人間に対して突きつけられた精神論ではなく、雑草学者ベーカーが挙げる、理想的な雑草の条件の1つです。

他個体とも受粉するが、自己の花粉を受粉しても結実する。
他家受粉の場合は、風媒。虫媒の場合も昆虫を特定しない。

強いのではなく、むしろ弱いからこそ生き残るために様々な戦略を持つ雑草たちの戦略に、驚きの連続でした。

この本のからもう

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