💁おくるということ〜4.逝き方Ⅰ
今回は「おくる」の前段階、「逝く」にスポットを当てる。
過去作は以下の通りだけれど、順番にお読みいただかなくても別に支障はない内容だと思う、知らんけど……
尚、拙作は2023/9/3 朝日新聞 Globe 第286号 最期を選ぶということ End of Life Choices 中井大助•宋光祐•辻外記子各氏の記事を参考•要約•引用して書き進める
先ずは用語の説明から
アドバンス•ケア•プランニング(ACP)
本人が望む医療•ケア•大切にしたいことなどを、家族•主治医•介護者らと共有する取り組み
人生会議とも呼ばれる
一度きりではなく、何度も対話や相談を繰り返す
本人の考えや状況が変われば、内容をアップデートしていく
リビングウィル(LW)
自分に死が迫ったときに、受けたい治療•ケアを明記しておく
事前指示書と呼ばれる
日本尊厳死協会では「死期を引き延ばすためだけの医療措置は希望しません」「緩和ケアは十分に行ってください」などと記されたフォーマットに署名する
市販の終活ノート•エンディングノートもある
安楽死
安楽死とは
助かる見込みのない人に対して、本人の希望に沿って、医師が苦痛の少ない方法で死に至らせること
積極的安楽死
医師が患者に致死薬を投与
オランダ•ベルギー•カナダの一部などで合法
医師による自死幇助
医師が致死薬を処方し、患者が自ら飲むなどして亡くなる
オランダ•ベルギー•カナダの一部•スイス•米オレゴン州などで合法
延命治療の不開始や中止
人工呼吸•栄養補給などの延命をしない
日本では尊厳死と呼び、安楽死とは区別している
亡父の場合
病状•体調
慢性心不全と末期的な間質性肺炎
治療不可
安静時に圧縮酸素を吸入していても、直ぐに息切れする
加齢黄斑変性症で見えにくい
脚は常時冷たく浮腫んでいる
室内はそろそろと伝い歩き
それ以外は携帯酸素+車椅子
食事•着替え•トイレは自立、入浴には介助が必要
生活環境
母に軽度認知症の症状が出現していた為、父のみ有料老人ホームに入所
夜間は看護師不在
看取り対応とのことだったが、大抵のご入居者は病院に搬送されていた
主治医
施設お抱えの訪問診療医
循環器•呼吸器の専門医でなかった為、他の医師にかかりたかったが、施設から許可がおりなかった
非常に高圧的な人物で、父が苦情を言うと「認知症になっている」と決めつけられてしまった(年齢なりの物忘れはあれど、クリア)
医師から私が招集されたときには、終始「弟さんはご立派な職業(確かにね)に就かれているけれど、あなたに言ってもお解りにならないでしょう……」と言われた
最後まで信頼関係は築けなかった
「死ぬときは息ができなくて苦しくて、溺れ死ぬような感じですよ」と笑顔で言うような悪魔
エンディングノート
書きやすそうな市販品を両親にプレゼント
基本情報(氏名•連絡先•血液型)などは記入
医療•ケアの希望や葬儀•お墓など死後のことは考えようとしなかった
向き合う必要性を感じていなかったのだと思う
施設転居⁇
主治医を変更できないならと、違う施設を探した
軽度認知症の母は、いくら止めても毎日父を訪ねる
母が通いやすい場所に適合施設はなかった
因みに今月末で退職する私の職場(デイサービス生活相談員に異動する前は有料老人ホーム介護職員だった)は、看護師は24時間、通院•救急搬送の際は看護師か介護職員が付き添う
もちろん居室内での看取りもOK
訪問診療医は穏やかな人気者
但し、毎月の利用料は約50万円也
従業員割引きでもあればねぇ……
人生会議①
内服では苦痛を除去できない父は、モルヒネパッチを常用するようになった
弱った父に「死」を話題にするのは勇気が要ったが、誰かが訊かなければ父が自力でエンディングノートを書くとは思えなかった
人生会議②事前に父に伝えたこと
死が間近に迫っているから話すのではないこと
父の死を願っているワケではないこと
できるだけ父の希望に沿いたいと思っていること
時間が経つほど話題にするのが難しくなること
今ならじっくりと考える時間があること
私が質問する形式に答えるだけでいいこと
人生会議③
信頼できる医療従事者•介護者がいないので、父と私のふたりで行った
父から聞き出した内容は、私から弟と妹に伝えた
母は未だ充分に一人暮らしができる程度の認知症ではあったが、時として記憶や思考が行きつ戻りつすることがあったし、新興宗教の熱心な信者であった為、混乱を回避したくてこの時点では伝えなかった
内容①
苦痛をできる限り取り除く
経管栄養(胃ろうなど)不要
水分補給目的の点滴不要→タン吸引をして苦しまなくて済むし、脱水で枯れるように死ぬのが自然で楽(らしい)
心配蘇生不要
以上について父に知識がなく、私が誘導したような気がしなくもない
内容②
葬儀は任せる→葬儀屋さんに「お任せします」と依頼はできない
会葬者を呼ぶのか?家族だけでするのか?普通でいい→「普通」なんてない
父は8人きょうだいの末子
郷里の親戚は高齢なので呼ばない
お経なんか聴いても解らん→無宗教、お寺さんは呼ばない
戒名不要
位牌不要
連絡不要→遠方•高齢なので
お墓はどうでもいい→郷里のお墓は山
お参りしやすいお寺に合祀
人生会議後記
父は疲れたようで、これ以上は訊けなかった
私は子ども時代に父と親しく話した経験がない
孫(私の子ども達)のことは、甘々に可愛がってくれた
その程度の間柄なのとデリケートな話題なのとで、私は抜け殻になりそうなほど緊張した
それでも、このときに訊いておいて良かった
転倒
居室内の洗面台の前で転倒(推定15時頃)
コールボタンには届かない位置
居室玄関まで這い、父なりに声を上げたが誰も気づかなかった→介護職員は居室を巡回していないのか?
主治医(最低な内科医)より、手に負えないので受診するよう指示→施設看護師や介護職員は、父の痛がり方や腫れ方から骨折を疑い受診を考えなかったのか?
何故主治医と連絡がつく夜間まで指示を待ったのか?
時間外受診•入院
大腿骨骨折
入院中にせん妄症状が出る
手術(置換術)•リハビリで歩行を目指すか?
保存治療し、終生車椅子生活をおくるか?
オペ時の全身麻酔は、父の場合かなりの高リスク
整形外科主治医
地獄に仏とはこのことか
お若いのに穏やかで優しいイケメン医師
たまたま父と誕生日が同じ
オペか保存かを決めかねていた(本人は気弱になり判断力低下)が、「お父様が歩く姿を僕も観てみたい」と言ってくださりオペを決意
急死
オペは成功、経過は良好、間もなくリハビリ開始予定
入浴できていないので看護師2人が清拭
途中で息をしていないことに気づく
清拭前、リハビリを頑張りましょうと声をかけた主治医には、元気に悪態を吐いていたらしい
勿論、家族は誰も立ち会えず
「苦しんで溺れ死ぬ」と言われていたのに、誰にも気づかれないほど静かに逝ったことは、父にとっては幸いだったのではないか?
看取り可能な施設に入ってはいたが、父自身が死に場所と死に時を選んだのではないか?と思っている
骨折は予想外だったが、最低最悪な内科医のもとで逝かせなくて本当に良かった
『💁おくるということ〜4.逝き方Ⅱ』につづく
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