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国家試験前日に心が壊れた話

「先生、もう無理です。」

彼女は、翌日に国家試験を控えている大学4年生。

実習や沢山の課題を乗り越えて、やっと受験資格が得られた。

いよいよ、明日は国家試験。今までの勉強の成果を出し、気持ちよく合格を勝ち取りたい。

しかし、彼女は試験を受けるどころか明日も生きていられるか分からないという精神状態だった。


時をさかのぼること数ヶ月。

約1ヶ月の実習を終えて、ひと段落していた時。やらなければならないことは沢山あるのに、彼女は魂が抜けたように生活していた。

2週間近くまともに外出せず、お風呂も入れず、寝る時間もバラバラ。

料理をしていると、包丁を自分に刺したい衝動に駆られた。

彼女が久しぶりに学校に顔を出すと、友人たちは彼女の変貌ぶりに言葉を失った。

幸い、彼女の大学は先生と生徒の距離が近く、困った時はすぐ相談できる環境だった。

友人から先生に相談することを勧められたが、彼女はあまり話したことのない人に自分の身の上話なんてされても先生も困るだけだろうと思い、相談しなかった。

だがそんな状態にも限界を感じ、国家試験の約1ヶ月前、先生に泣きながら相談をする。

先生は彼女の様子を見てただごとではないと思い、精神科の受診を勧めた。

病院で薬を出され一時的に安心したが、不安定になることも少なくなかった。

「死にたい」

この思いでいっぱいになり、絶望していた。

国家試験前日、主治医に今の状況を話し「国家試験、受けられる?どうする?」と聞かれる。

心身共にボロボロだが、今まで乗り越えてきたものを無駄にしたくない、と受験を決意する。

受診後、帰ろうとしたら主治医が彼女を追いかけてきた。

彼女は何か忘れ物でもあったのかと思ったが、主治医が発した言葉は、

「自殺しないって、約束して。」

その一言だった。

彼女はハッとした。そんな言葉をかけられるほど自分は危うい状態だったのかと気づく。

また、主治医がわざわざ追いかけて言葉を掛けてくれたことに彼女は胸を打たれた。

精神状態が最悪な中、受けた国家試験。

受からない可能性もあることを覚悟すると、自然と緊張感が抜け冷静に問題を解くことができた。

そして、1ヶ月後に合格通知を手にした。

〜あとがき〜

もうお分かりだと思いますが「彼女」は私のことです。

今思い返しても、よくあの状況で受験できたなあ、、と思います。そして、自分が弱っている時はどれだけまずい状況か意外と気付かないものだと実感しました。

だから今苦しんでいる人、辛さを1人で抱えてる人にはどんな方法でもいいからSOSを出して欲しいです。

「助けて」というのに抵抗があるなら、とにかく自分を知ってる人に会って欲しい。
身支度を整えられなくても、お風呂に入れていなくても、食事を摂れなくて痩せこけていても。

あなたの様子を見たら、誰かが必ず適切な言葉を掛けてくれます。あなたの命以上に大事なものはありません。誰かの心に、この言葉が届くことを願って。






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