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【読書】日本とユダヤの古代史&世界史 その4

出版情報

本稿の構成

本稿は下記のような一連のシリーズの4. ユダヤ人と日本人のこれからです。

  1.  ユダヤ人とは何者か

  2.  ユダヤ人と日本人の関わり

  3.  ユダヤ人と日本人の関わり キリスト教関連

    • 古代日本にユダヤ人が来ていた!そのうち第5波

    • 大航海時代と改宗ユダヤ人

  4.  ユダヤ人と日本人のこれから

  5.  次なる探求へのヒント

著者のひとりである田中英道の方法論 フォルモロジー(形象学)に関しては、2-1 古代日本にユダヤ人が来ていた!そのうち第1波〜第2波まで に記載しています。

ユダヤ人と古代日本人との関わり

 田中は古代ユダヤ人は5波に分かれてきたという。

  • 第1波 前13世紀 出エジプト|縄文時代・日高見国・スサノオ

  • 第2波 前722年以降 アッシリア捕囚と失われた10支族|日本建国

  • 第3波 前3〜2世紀 秦の始皇帝・徐福と3千人|秦氏各地に渡来

  • 第4波 3〜4世紀 弓月国から秦氏2万人|応神天皇が受け入れ

  • 第5波 431年以降 エフェソス公会議・ネストリウス派|蘇我氏


世界を席巻するグローバリズム

ウォール街:アメリカに拠点を移したユダヤ人

 米国ウォール街といえば誰もが知る世界的な金融街だろう。だがその前は英国シティが世界No1の金融街だった。ロスチャイルドなどが活動し始める前からシティはシティとして存在した。最初はユダヤ人居住区だったのだ。一方、アメリカに拠点を移すユダヤ人たちも出始める。

茂木:19世紀半ばにはドイツ統一の混乱がありました。ドイツ人のナショナリズムが強まる中、ドイツ系ユダヤ人のアメリカ進出が加速しました。この時やってきたのが、
ゴールドマン・サックス社の創業者マーカス・ゴールドマン
リーマン・ブラザーズ社の創業者ヘンリー・リーマン
クーン・ローブ商会の創業者ソロモン・ローブ
…彼らは生まれつきの富豪というわけではなく、才覚と努力で、地位を築いた新興財閥です…その後、1880年代にロシアでポグロムがあり、迫害されたユダヤ人がたどり着いた先もNYでした。彼らはボロをまとった難民集団で、最下層の肉体労働から始めました。しかし…「俺もいつかは」と思うはずですし…息子や孫たちは、稼げる金融業界で働くようになります。

日本とユダヤの古代史&世界史 p256

人口から見ても、米国内ユダヤ人はイスラエルに次いで多い

茂木:現在、世界のユダヤ人の人口はおよそ1500万人いますが、国籍別にみると約半数がイスラエル、半数がアメリカにいます…イスラエルが700万人、米国が600万人となっています。いずれにせよ、アメリカの人口の2%にも満たないユダヤ人が、世界の金融を動かす力を持っているというのは、もの凄いことだと思います。

日本とユダヤの古代史&世界史 p257

 実は古代日本でも、この状況が生じていた。(田中史観を受け入れるとしたら)古代日本に5波に渡ってユダヤ人たちが渡来していた。例えば応神天皇は2万人の秦氏を受け入れた古墳時代の日本全国の人口は540万人。2万人というのは0.3%だ。古墳は当時、石を積み上げ大きな埴輪を飾ったハイテクな公共事業。その古墳を16万基も全国に作り上げた。現在のコンビニの件数は6万軒弱なのでその数の多さがわかるだろう。0.3%の人数で残りの人々の同意を得て、労働力として動員しなければ、これほど多くの古墳を築造することはできない。しかし、これだけグローバリズムによるマネー主義が席巻し、多くの人々が振り回されている今日とは違って、古代日本を秦氏たちが支配し牛耳るようなことはなかった

田中:…日本では縄文時代から共通の常識や道徳感といったものが、人々の間ですでに根付いていました。だからユダヤ系秦氏の場合は、イデオロギーの宣伝がうまくできなかった。その点アメリカは真っさらなマネー第一の世界として、彼らが思う存分活躍できる地盤があった。アメリカでは完全に支配することができたが、日本ではそれができなかった

日本とユダヤの古代史&世界史 p257-p258

現代アメリカはまさにユダヤ金融資本の牙城と化しアメリカではグローバル ユダヤが完全に支配することができた」が、古代の日本ではそれができなかった」。(また別の例を挙げると、和同開珎の流通を目論んだ多胡羊太夫。朝廷を巻き込み鳴物入りで法令などのシステムを整えたが流通は成功しなかった。米でも絹でもない銅のおもちゃに当時の日本人は価値を見出せなかったのだ)。

フランクフルト学派

 ユダヤ人たちは、政治に無関心ではない。アメリカに関しては、

茂木:アメリカは移民を受け入れすぎた結果、中西部や南部のイギリス系(WASP)の開拓民の子孫と、19世紀にNYやカリフォルニアに住み着いたユダヤ系、イタリア系、アジア系など新しい移民の子孫とに国が分断されてしまいました。共和党は基本的に開拓農民の政党ですから、これ以上の移民の受け入れに反対です。ですからユダヤ人などの新移民は民主党を支持します。

日本とユダヤの古代史&世界史 p259-p260

グローバリスト ユダヤ人は、階級闘争史観によるマルクス思想という分断の思想も生み出した。マルクス自身はロスチャイルドの親族であり、なんらかの援助を受けていたのが想像に難くない。また、ロシア革命には大勢のユダヤ人が関わっていたことが史実として明らかになっている。この計画経済を用いた古典的マルクス主義の終焉はソ連邦の崩壊と共にやってきた。1988年から1991年にかけてのことだ。(その一連の流れの中に1989年のベルリンの壁崩壊もあった)。
 田中はチャイナの社会主義も失敗するという。

田中:…社会主義とはつまり、”革命のグローバリズム”ですが、中国のこれから到来するであろう失敗で、その実態が明らかとなるでしょう。何故なら社会主義というものは、経済を運営できないのです。経済というのは需要と供給で成り立ちますから、そこにはイデオロギーは必要ないのです。利益を得る人が決まってしまう構造がある計画経済…は、必ず”汚職”を引き起こします。…経済は人間の必要性とともにある。

日本とユダヤの古代史&世界史. p263

一方で、すでに20世紀前半には階級闘争史観によるマルクス主義は時代遅れであるとして、フランクフルト学派が誕生した哲学、科学、芸術等近代全般にわたって根底的な批判を行う」 「社会の近代化によって人間が自然(人間を含む)を支配し、搾取する」。こういうものの見方そのものが分断を生む。それゆえ、フランクフルト学派は「文化マルクス主義」とも呼ばれている。文化を蝕み破壊する考え方だからだ。フランクフルト学派の考え方は、批判的人種理論自虐史観行きすぎた性嗜好の強調(昨今のLGBTQ問題など)に結びついていく。ただし、現在はwikiなどでは「文化マルクス主義陰謀論」と陰謀論扱いされ、田中は、その陰謀論を担ぐひとりであると認識されているようだ。少し長いが田中の論考「文化を破壞する左翼「批判理論」の根源 ――アドルノとフランクフルト学派批判4 3」などを読んで、陰謀論かどうか自身で確認していくきっかけにするのもいいのかもしれない。

田中:…マルクスもそうだけれども、グローバルユダヤ、左翼ユダヤは、そろそろ限界にきていると私はみています

日本とユダヤの古代史&世界史. p263

経済のみならず政治も志向し、さまざまに画策するユダヤ人。それは決して悪いことではない。だが、

田中:…ロシアのポグロムの状況というのが、根底的にどこから出てきてどうなったのか。最終的にナチスに向かったといいつつ、スターリンの社会主義あたりからも反ユダヤ心理が出てきているのはなぜか…こういう錯綜したユダヤ問題というのは、世界人類にとって避けてはならない話です。

日本とユダヤの古代史&世界史. p275-p276

現在続いているウクライナ戦争。ポグロムを起点とし米国に渡ったユダヤ難民の子孫によって、「ロシア憎し」そして隠れた「ウクライナ憎し」という気持ちから、ある程度長期にわたる計画や画策や工作がなされ始まった、と見る向きもある。だがこれは、ロシア人やウクライナ人のみならず、ウクライナという地にとどまらざるを得なかったユダヤ人同胞たちに苦しみを与える結果にもなっている。
 日本人にとって、縁遠いと考えられている「ユダヤ問題」であるが、そうも言っていられない、と田中は警鐘を鳴らしている

イスラエルという国

 上記 茂木の言説にもあるように、グローバリズム ユダヤ対極イスラエル ユダヤがある。世界のユダヤ人の人口は約1500万人。そのうちおよそ半数がイスラエル半数がアメリカにいる。具体的な人数ではイスラエルが700万人、米国が600万人というp257。
 今まで本稿では、本書『日本とユダヤの古代史&世界史』にそって、ずっとユダヤ人のディアスポラ=離散の歴史を振り返ってきた。いわばグローバル ユダヤの歴史とそのありようをずっと追ってきた。『1. ユダヤ人とは何者か』でその歴史の概観を、『2.ユダヤ人と日本人の関わり』『3.ユダヤ人と日本人の関わり その2 キリスト教関連』によって、古代日本にやってきたグローバル ユダヤ人と、その時々での日本人との関わりを、また近世において改宗ユダヤ人たちが宣教師となって日本に渡ってきたので、それについても見てきた。
 本稿では、グローバル ユダヤの対極にあるイスラエル ユダヤの歴史を概観し、イスラエルという国の現状をざっと見ていこう。

イスラエル建国

 フランス革命以降、フランスではユダヤ人は解放されたが、反ユダヤ感情には根深いものがあった。パリでユダヤ人軍幹部に対するスパイ冤罪事件(ドレフュス事件)に遭遇したハンガリーのジャーナリスト ヘルツルは、ユダヤ人の国家建設の必要性を痛感した。彼はその後1897年に第1回シオニスト大会を開催し、それがひとつの政治勢力になった。ロスチャイルド家はシオニズムを財政的に援助した
 第一次対戦中、オスマン帝国と戦っていたイギリスは、ロスチャイルドなどユダヤ人富豪の援助を引き出すためパレスチナの地にユダヤ人国家建設を約束した。その結果、多くのユダヤ人がパレスチナに移住した。
 第二次対戦後、イギリス、アメエリカの支援を受けて1948年にイスラエル共和国が成立し、シオニズムは目的を達成した。しかし、そこに住んでいたアラブ人たちはパレスチナ難民となり、ユダヤ人との間に激しい対立を起こし、深刻なパレスチナ問題として現在も続いている。(以上 世界の窓「シオニズム」の項より要約)

 現在のイスラエルは、右派ネタニヤフ首相に率られ、アラブの盟主サウジアラビアとの国交正常化を果たしたい旨、報じられている。民族構成はユダヤ人74%、アラブ人21%、そのほか5%。2000年以来凹凸はありながらハイテク・情報通信分野を中心に輸出が好調。現在の主な輸出品目は機械類、化学製品、ダイヤモンド、医療精密機器、農産品などである。コロナ後の2021年の経済成長率は8%を超え堅調な経済状況がうかがえる(以上 外務省資料)。また2022年のイスラエルの一人当たり名目GDPは54,710ドル。日本は33,822ドルであり、日本の約1.6倍となっている。
 公式な首都はエルサレムであるが、実質的に首都機能を持っているのはテルアビブである。日本に比べると物価は2〜3倍ほどか。旧市街は美しくホテルなども充実している。エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地となっている。嘆きの壁が有名。国営エルアル航空のセキュリティチェックはテロを警戒して、かなり厳しいものがあり、各旅客機にレーザーによる対ミサイル迎撃システムが備えられているという。
 人々の暮らしについては、観光会社のサイト以上のことは調べられなかった。とても残念ではあるが今後の課題としたい。
 旅動画などを見た印象であるが、パレスチナ自治区は「素朴で途上国っぽい」。イスラエルは「真面目でリッチ」。食べ物の感じは中東に似ているようだが、イスラエルでは飲酒ができるところが大きく異なるようだ。単なるパッと見た目での判断なので、間違っていたらいろいろご容赦願いたい。あるいは教えていただければ幸いである。

新しいユダヤ人像

土地持ちのユダヤ人(イスラエルに住むユダヤ人)とグローバリズムのユダヤ人(米国など他の国や地域在住)。今両者の人口は拮抗している
 米国内のイスラエル人も、割れている。

田中:今のアメリカは、イスラエルと建国したシオニスト・ユダヤをサポートするトランプ共和党と、グローバル金融ユダヤのバイデン民主党の戦いでもあるのです。
茂木:それはつまり…世界中に離散した恨み節満載の個人主義グローバルユダヤと、イスラエルで頑張ろうとする民族意識の高い愛国ユダヤがいて、トランプ共和党の方は、イスラエルで頑張るユダヤの方とくっついていると…

日本とユダヤの古代史&世界史 p261

イスラエルで頑張ろうとする民族意識の高い愛国ユダヤ」。残念ながら、具体的なイメージとして、愛国ユダヤの人々はこういう人々だ!と理解し、本稿で描くことはできなかった。それでも、ネタニヤフ首相などはそういう人なのでは、と想像する

田中:…これからは過去の怨念を捨て、イスラエル・ユダヤ(シオニスト・ユダヤ)でいかないとしようがない、新たな未来を築いていかなければいけないのだ…

日本とユダヤの古代史&世界史 p260-p261

これからは過去の怨念を捨て」これは、本当にそう思う。一方で今でもパレスチナ自治区で砲弾などにより負傷する人々が、いる。米国務省にいるグローバル ユダヤの典型ヌーランドなどは、恨み骨髄できっと今も陰に陽に各種作戦や工作を続けているのでは、と憶測してしまう。痛みを抱えていることは理解できるし、寄り添いたいと思うが、それにより戦争を引き起こす…日本人にはなかなか理解し難い、また許容し難い考え方だ。
 逆に日本人は、どうやって「過去の怨念」という痛みを乗り越えてきているのだろう?例えば原爆の痛みを。忘却によって?左翼プロパガンダによって?それとも、災害死史観によって?恨みのような負のエネルギーを持つことは虚しいから?ひとりひとりが向き合い、言葉に紡いでいくときがきている…。それは、例えばヌーランドに届く言葉だろうか?

田中:…今はもう、左翼のユダヤ人だけではなくなり、イスラエル国というものができて、”一つの国を持っている人たち”という意味が出てきています。常に犠牲者であり、ディアスポラであり、難民である可哀想な民族…というような感じで接するのではなく、そこに帰る国があり歴史と誇りがある民族なのだ…といった態度で接するべきです。

日本とユダヤの古代史&世界史 p274

 ぜひ、そうしていきたいものだと願っている。

樋口季一郎の功績と日本精神

歴史の変わり目である現在

茂木:グローバリズムとは、「国境をなくして、ワンワールドをつくることだ」ということに多くの人が気づいていません。
田中:そうすると、文化が生まれてこない

日本とユダヤの古代史&世界史 p262

田中:今、いろんな意味で、歴史の変わり目に入っていると感じています。我々は何とか頑張り抜かないといけない…グローバリズムは徐々に死んでいくでしょう。賢いものなら、まず不可能であるということに気づかなければいけない。それから、今回のコロナウイルスで多くの人が気づいたでしょう。ウイルスは世界中、同じように平等にまかれるものです。これは悪いグローバリズムの証拠で、それを避けるためには、やはり国単位で防いでいかなくてはならない。そういった各国各人が自立する感覚も出てきているのではないでしょうか?

日本とユダヤの古代史&世界史 p265

茂木によると、日本人とユダヤ問題の出会いは戦前にさかのぼるという。

茂木:日本語版『シオン賢者の議定書』が出版されたのは1919年、シベリア出兵の時です。陸軍の安江仙弘(やすえ のりひろ)大佐が、ロシア人から議定書を入手すると、早速持ち帰り翻訳しました。…この安江大佐が面白いのは、「ユダヤにはもの凄い力があるらしい」からユダヤは敵だ、とはならずに、「ユダヤが欧米を支配しているということは、我が大日本帝国がユダヤと組めば世界戦争に勝てるのではないか」と考え、ユダヤ研究を始めたという点です…のちに…満州におけるユダヤ人難民の受け入れ計画である「河豚計画」を立案します。

日本とユダヤの古代史&世界史 p276-p277

 『シオン賢者の議定書』は「ユダヤ人が裏で世界を牛耳っている」という陰謀論の定本だ。
 当時ドイツはユダヤ人から公民権を奪い、ドイツからソ連経由で満州にユダヤ人難民が逃げてきていた。

茂木:当時満州でハルピン陸軍特務機関長だった樋口季一郎中将は「受け入れろ」「満洲通過を認めてやれ」と即断し、東條英機首相もそれを追認するということになったわけです…

日本とユダヤの古代史&世界史 p277

では、こういう人道的な決断が即決できた、樋口季一郎という人はどういう人物だったのか? 次項で見ていこう。

樋口季一郎という人物

 樋口は上記の通り「ユダヤ人を救った」ことのほかに、もうひとつ英雄的な働きをした。北海道をソ連占領から守ったのだ。

田中:…8月15日の終戦後にソ連が攻めて来て、なんと19日まで戦っているのです。しかも独断で。千島列島の一番北にある占守島(しゅむしゅとう)での激戦です。孤軍奮闘、断固として日本を守った
茂木:それがなければ、北海道の北半分までソ連に獲られていたでしょう。

日本とユダヤの古代史&世界史 p279

まさに日本の英雄だ。教科書で学ぶ必要があるような。

田中:彼の「ユダヤ人を救って、日本を守った」というこの2つの事象は、彼にとっては異なる問題ではないのです。この素晴らしい、ある種の普遍主義といいますか「人間を守る」ということを、常にナショナリズム、あるいは民族共同体と結びつける考え方は、優れた外交の一つの精神として、大変重要であると思います。樋口季一郎の精神というのは、「戦争」という動乱の中で判断する、軍人の考え方だと私は見ているわけです。この”軍人の考え方”というのは、”本当の戦争の考え方”につながると思っています…「守る時は守る」…「支援する時は支援する」という、軍人の責任ある態度のことです。この「責任ある態度」というものを現代人は学ぶべきだと思います。

日本とユダヤの古代史&世界史 p279-p280


日本人とユダヤ人へのメッセージ

 では、樋口はどういう考えに基づいてユダヤ人を守ったのか。1937年のハルピンでの《第1回極東ユダヤ人大会》の来賓挨拶が掲載されていたので転載する。

 歴史的にユダヤ民族に対して何ら恨みを持たない日本人の目には、ユダヤ民族の長所がより明確に見えるが、ヨーロッパ、特に中欧、東欧では重大なユダヤ問題が散見される。彼らが指摘するユダヤ民族の難点は、物質的であり、国際主義的ないし社会主義的であり、非同化的であるとする。仮にそれが事実であっても、それはユダヤ民族が数千年もの長きにわたって、国家を失い、各民族の間で苦しんできたことによる後天的現象であり、先天的な性質としては宗教的影響ないし、強い民族性による非同化性であると信ずる。
 我々日本民族も非同化性の理由で、在外移民として非難されてきた。この点は、日本・ユダヤ両民族とも反省すべきである。したがって、もしユダヤ民族の強い民族精神が、祖国復興によって満足させられるか、各民族間にあってユダヤ民族が、客分として主に経済的ないし科学分野において、天分を発揮するように考慮すれば、世界において、いわゆるユダヤ問題は解決するだろう。
 こうした見地から、われわれはユダヤ民族だからといってどう扱うか、というような偏見は持っていないばかりか、他民族と同様に十分に抱擁し、共に手を携えて、世界平和と人類の幸福に貢献したいと願っている。日本こそは、ユダヤ民族の唯一の天国といってもよく、この事実は各位も日常に体験されておられるだろう。

日本とユダヤの古代史&世界史 p281-p282
樋口季一郎による《第1回極東ユダヤ人大会》の来賓挨拶

この挨拶文をどのように受け取るかについては、各人に委ねよう。
 ドイツは圧力をかけてきたが、樋口も、その上司の東條も「当然なる人道上の配慮である」として、見事にスルーしたp282。日本はほかにも、上海のユダヤ難民について、ドイツから圧力をかけられたが、ゲットーに収容し、敗戦まで日本軍の保護下においたp283。

茂木:東條さんは敗戦後、「A級戦犯」、「極悪人」の烙印を押されました。確かに批判すべき点はありますが、ユダヤ難民を救った英断についてまったく語られないのは不公平です。

日本とユダヤの古代史&世界史 p282-p283

日本人自身によって、先の大戦は、もっともっと詳細に見直す必要があるのではないだろうか。

ユダヤ人と日本人のこれから

ユダヤ人についてオープンに語る時がきた!?

 田中は次のようにいう。

田中:戦後は、フランクフルト学派が代表する左翼の力が非常に強くなったために、”反ユダヤという思想”が語られることもなくなってしまいましたが、それはある意味で少し歪んでいるのではないかと思います。結局、真実は両方の立場を知るべきであって、少し反ユダヤの説を言っただけで、今のドイツでは犯罪になるようなこともあるのです。言論的にそれは「すべきじゃない」と思いますね。自由な歴史研究というのは、たとえ対象がユダヤ人であろうとそうでなかろうと、やるべきです。

日本とユダヤの古代史&世界史 p272-p273

その通りだと思う。「ユダヤ民族の問題は、客観的な視野でやらなくてはいけない時代にきている」p274

田中:日本人が日本人の立場で、こういう問題をもっと論じるべきだと思っています…日本の立場や日本人の道徳観から、世界の情勢を語る必要があると思うのです。

日本とユダヤの古代史&世界史 p275

グローバリズムやマネー主義は悪いことばかりではない。

田中:今だってある種のグローバリズムとして、日本人は積極的に西洋を受け入れ、それだけの物質的な豊さを得たわけです。

日本とユダヤの古代史&世界史 p284

ユダヤ人の「違う文化と文化を引き合わせるという商人的な関係性の中で生きる」特性。「彼らの良さ、面白さを引き出すということ」「外の文化に影響されることによって、その国や民族の文化がさらに引き出される」そういう相乗効果。

田中:外の文化を持ち込む。違う文化が共通な場所で初めて出会う。そしてそこにある種の競争関係をつくることによって、世界が和を持って保たれ、新しいものが生み出される。そういう世界こそが平和と結びついていくのではないだろうか…

日本とユダヤの古代史&世界史 p285

また、田中はこうもいう。

田中:ユダヤ人はディアスポラを決めた唯一の民族ですから、そういう理想を持ち続けるべきです。ユダヤ人の役割をより高める方向に、世界が気づく必要があると思います。それはグローバル文化とはまた違うものです。受け入れる主体が日本のように長い伝統で培われているところでこそ可能となるのです。

日本とユダヤの古代史&世界史 p285

田中:自由と平等というこの矛盾する二つの価値観を、誤魔化さずに冷静に語られる時代がくるべきです。ユダヤ陰謀論も悪いが、ユダヤを絶対化するような考え方もよくない。そのことをユダヤ人自らがもっと自覚すべきだと思います。

日本とユダヤの古代史&世界史 p287


一神教から多神教へ、そして「自然道」へ

 日本人の精神とは何だろうか?

田中:何より人命を大事にするということ、つまり、ユダヤ人の命も日本人の命も大事にするのだ、という精神です。天皇絶対主義とか、民族絶対主義ということではなく、軍人という縦の命令が絶対の場所であっても、人間を守ことを最大限に大事にすることが、逆に国家を守ることだと教えてくれています。

日本とユダヤの古代史&世界史 p288

多分、これが日本人が持つ共通した価値観なのでは、と思う。田中はこれを”日本人の精神”と呼んでいる。樋口中将のようなことを誰もができるわけではないかもしれない。だけれど、「人間を守ことを最大限に大事にすることが、逆に国家を守ること」だといわれれば、多くの日本人が肯首するのではないだろうか。それは普段は言葉で語られないけど、日本人が共通して持つ価値観のように思うのだ。

茂木:ある意味、世界の対極にある日本人とユダヤ人というのは、《自然》を神々として祀ってきた日本人と、《唯一神》という人工的な宗教をつくり上げたユダヤ人…といえると思います。そのユダヤ人が、あちこちの国々で追われ、最終的に流れ着いてきた日本列島において、結局は日本に同化してしまい、そして多神教的日本文化を受け入れていった…。これは世界史的に見ても、ものすごい皮肉でもあり、しかし何か2000年の歴史がぐるっと一周して「やっぱり多神教だよな、自然神だよな」という、人類の壮大な歴史の流れを感じます。
田中:日本では多神教=自然信仰です。

日本とユダヤの古代史&世界史 p290

日本の多神教は、インドやチャイナのものとは違う。「自然道」なのだ。神という言葉を使うとそこに人間のエゴが投影されてしまう。

田中:人間という存在、動物や植物、自然そのものを産んだ”自然”というのは奇跡です。…ところが、そこに神を介在させ、神が人間をつくった、自然をつくったのだと、ユダヤ人が発明してしまったために、神の絶対性が出てきてしまった…人間や動物やあらゆる生物をつくった自然のもの凄い力というのは「いったいなんなのか?」という尽きぬ探究心にもなると思うのです。

日本とユダヤの古代史&世界史 p292

日本人だけがユダヤ人を同化させた。

田中:日本人にとって、人道的な道徳感というのは、偉い人も貧しい人も、みんな等しく持っています。だから日本は、ユダヤ化しない。ユダヤ化している輩(やから)もまぁいるのですが、しかし「化」であって、決して日本人の本性は縄文時代から変わらないのです。それこそが日本民族の証なのです。

日本とユダヤの古代史&世界史 p259

ユダヤ人が進む道はユダヤ人が決めていくのだろう。その上で、そして日本とユダヤの2000年間の関係を見た上で、田中は以下のように提案をしている。

田中:ディアスポラのユダヤ人たちが世界に対して何をやるべきかというこ
とは、平和な場所の文化に貢献するということだろうと思うのです。伝統と文化を保つことに貢献するということも大事です。…ユダヤ教徒にとってはユダヤの神を捨てたということにはなってしまうけれども、その国や土地に「同化」するということは、ユダヤ人にとっても良いことだと私は見ているわけです。

日本とユダヤの古代史&世界史 p295

では、私たち日本人は?

「自然道」という道徳心というか信仰心というか、そういう心を持ち、命に区別をつけず、大事にする

それができているかどうかは別にして、そういうことを確かに「志向しているらしい」と自覚した上で、自分の目でいろいろ確かめていく

まずは身近な、古墳でも、埴輪でも、神社でも…
そういうところから始めてはどうか、と提案されていると
私は受け取った。

みなさんは本書を読んで、何を感じるだろうか?


引用内、引用外に関わらず、太字、並字の区別は、本稿作者がつけました。
文中数字については、引用内、引用外に関わらず、漢数字、ローマ数字は、その時々で読みやすいと判断した方を本稿作者の判断で使用しています。本文内『「」pページ』の「」中は、pページ内文章をそのまま記述していることもありますし、pページ内に記述されている重要部分を本稿作者により要約していることがあります。


おまけ:さらに見識を広げたり知識を深めたい方のために

ちょっと検索して気持ちに引っかかったものを載せてみます。
私もまだ読んでいない本もありますが、もしお役に立つようであればご参考までに。

現在のイスラエルについて、また国民の生活について書かれているサイトがなかなか探せなかった。英語で検索すればよかったのかな?
図書館にも適切な本がなかった。『イスラエル=古代聖書の世界』という感じの本ばっかりだった。アマゾンで検索すると、いくつかイスラエルに住む人々の様子がわかる本があった。

まさにこういう本であれば、実際に住んでいる人々を理解する手助けになる。

防衛大学名誉教授の人が書いたエリア・スタディの本。エリア・スタディってなんだ?昔は地誌研究とか言ったのかな?いやエリア・スタディと地誌学の違いみたいな論文もあったりして、よくわからないな。地域研究エリア・スタディ地誌学地理学の一分野出そうだ。

これも現代のイスラエルがよくわかるのでは?

ご存知、地球の歩き方。

こういう視点も必要なのかもしれない。

観光旅行会社のサイト。

旅するVLOGerのイスラエルレポート



茂木誠のyoutubeチャンネル

田中英道のyoutubeチャンネル


wikiによると、田中英道のyoutube番組で面白そうなのは、コレらしい。


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