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#キャリア

【読書メモ】ドナルド・スーパーの入門書としても読める!?:『自己形成の心理学』(溝上慎一著)

【読書メモ】ドナルド・スーパーの入門書としても読める!?:『自己形成の心理学』(溝上慎一著)

一冊の書籍を読むだけで多くの心理学研究者のポイントをここまで理解できる書籍はなかなかありません。溝上先生の『自己形成の心理学』は心理学領域を学ぶ大学院生にとってありがたい書籍です。今回は、ドナルド・スーパーについて言及されている箇所をまとめてみました。

役割葛藤とアイデンティティ現代において私たちの社会は多様なものになっています。そのため、私たちが担う役割も多岐にわたります。こうした役割葛藤とア

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【論文レビュー】幸福感とライフキャリアの関連について:労働政策研究・研修機構(2021)

【論文レビュー】幸福感とライフキャリアの関連について:労働政策研究・研修機構(2021)

人が幸せを感じることと、ライフキャリアとはどのような関係があるのでしょうか?本論文では、さまざまな変数を用いて両者の関係性を具に分析してくれていて、ライフキャリアについて考察する上で一読の価値がある内容です。

男性より女性の方が幸福度が高いが。。。まず、日本人の男性と女性とを比較した場合、幸福度も人生満足度も女性が有意に高いという結果が出ています。まあ、そんなもんかなぁという気もします。(下表の

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【論文レビュー】準備型のキャリア vs. 適応型のキャリア:松本(2015)

【論文レビュー】準備型のキャリア vs. 適応型のキャリア:松本(2015)

キャリアを捉える概念はあまりに多く、それぞれの関連性や相違点が今一つわかりません、少なくとも私には。そのため、それぞれの概念の布置連関を整理しようと試みてくれる本論文のような存在は大変ありがたいものです。ただ、「これが唯一無二の正しい分類だ!」というものは本論文も含めてありませんので、「こういう切り口もあるのだな」というように観点の面白さを味読いただくとよろしいかと思います。本論文では、準備型のキ

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【論文レビュー】キャリア自律を促す企業は何が違うのか?:藤本(2018)

【論文レビュー】キャリア自律を促す企業は何が違うのか?:藤本(2018)

現在、大企業をはじめとした日本企業では、キャリア自律を浸透しましょー、というメッセージが発せられるようになってきています。しかし、どの程度キャリア自律がすすんでいるかは企業によってマチマチです。本論文ではキャリア自律促進企業がそうでない企業とどのような相違があるのかを明らかにしています。

キャリア自律促進企業とはキャリア自律促進企業とは、労働政策研究・研修機構(JILPT)の2016年の調査に基

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【論文レビュー】「決める」キャリア論とは何か:下村(2008)

【論文レビュー】「決める」キャリア論とは何か:下村(2008)

スーパーのキャリア発達論は、見方によっては役割や段階によって「決まる」キャリア論でした。しかし、環境変化が激しい現代においては個人と社会との双方向的なダイナミクスによって「決める」キャリア論が求められる範囲が広がってきたと言えます。

D・スーパー以降のキャリア論の前提発達論型のキャリア論は、D・スーパーで一つの極致に至ったとされています。たとえば、彼のライフ・キャリア・レインボーが有名ですが、お

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【論文レビュー】若年期の転職はその後の職業生活にどのような影響を与えるのか?:労働政策研究・研修機構(2022)

【論文レビュー】若年期の転職はその後の職業生活にどのような影響を与えるのか?:労働政策研究・研修機構(2022)

転職が増えつつも、まだ日本の雇用社会では浸透しきっていないと言われることがありますし、実際にそのような傾向があるとデータでは言われているようです。雇用に関するいくつかの報告書で言われていることを、転職に焦点を絞ってざっくりいえば、①全体として転職率は増えていない、他方で②若年層については転職率が増加傾向、というトレンドのようです。

若年期の転職は推奨できない!?詳細を知りたい方は、公開されている

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【論文レビュー】リモートワーク時代における能力開発支援の重要性:荒木(2023)

【論文レビュー】リモートワーク時代における能力開発支援の重要性:荒木(2023)

本論文では、リモートワークの導入が進んだ現状において、従業員が自己学習するための環境や影響要因について研究しています。結論から言えば、企業の能力開発支援に対する従業員の知覚(Perceptions of Developmental HR Practices:以下PDHRP)がプロティアンキャリア志向を部分媒介して、リモートワーク下の従業員の自己学習にポジティヴに影響を与える、ことを明らかにしていま

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【論文レビュー】人生100年時代のキャリア形成と雇用管理の現状について:労働政策研究・研修機構(2020)

【論文レビュー】人生100年時代のキャリア形成と雇用管理の現状について:労働政策研究・研修機構(2020)

キャリアは個人が主体となって開発する、という考え方が日本企業でも一定の市民権を得てきたようです。では、それに合わせて、企業側の雇用管理はどのように変化してきているのでしょうか?

異動配置の現状まず注目したいのは、異動配置です。何らかの制約がないケースであれば、企業には従業員に対する異動配置の権限はあるものです。だからと言って、企業が無制限かつ自由に従業員の異動配置を行うことは稀でしょう。なぜなら

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【論文レビュー】マッチング型・発達型のキャリア理論の系譜:坂柳(1990)

【論文レビュー】マッチング型・発達型のキャリア理論の系譜:坂柳(1990)

先日、ある勉強会に参加して対話する過程で、様々なキャリア理論を深掘りしたいなという意欲が高まりました。特定の概念の背景を知るためには理論の深い理解は必要ですし、キャリアって概念がたくさんあるのでそれぞれの関係性を考察するためにも必要かなという思いです。まずは日本語で見取り図を得ようとすると、やはり坂柳先生に辿り着くことになるわけです。

マッチング型・発達論型の見取り図本論文では、キャリア理論を内

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【論文レビュー】キャリア自律から離職への影響を和らげる組織の役割とは?:黒沢・下村(2023)

【論文レビュー】キャリア自律から離職への影響を和らげる組織の役割とは?:黒沢・下村(2023)

本論文では、個人がキャリア自律しているという感覚が高まると離職意向も高まる傾向があり、特に若年労働者ほどその傾向が顕著であるとしています。その上で、キャリア自律自体は個人にとって必要不可欠であるとした上で、働いている職場が快適であるという感覚を持ちながら働けるように組織が支援・整備することで、キャリア自律から離職意向への影響を緩和できるとしています。

自律的キャリア観まず、本書では自律的キャリア

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ハライチをお笑い界に誘った会社員の15年間

ハライチをお笑い界に誘った会社員の15年間

はじめに

こんにちは!
AKKODiSコンサルティングの國司です。

今日はお笑いコンビハライチとのことを書きます。
普段こういうことを書いたりしないので完全保存版です。
創作大賞を狙っていますので、タイトルにちょっといやらしさを感じますが、バズれバズれと思いながら書いていますのでご愛嬌ということでよろしくお願いします。笑

※大前提として、「ハライチをお笑い界に誘ったこと」には価値があると思っ

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【論文レビュー】組織社会化とキャリア・アダプタビリティ:Cai et al.(2023)

【論文レビュー】組織社会化とキャリア・アダプタビリティ:Cai et al.(2023)

中途入社社員や新卒入社社員が新しく組織にエントリーし、組織になじんでいくことを組織社会化と言います。組織社会化を促すものには、①組織が行う組織社会化戦術と、②個人が行うプロアクティブ行動の二つがあります。本論文では前者の組織社会化戦術が扱われていて、ジョブ・エンべディッドネス(Job Embeddedness)を媒介してキャリア・アダプタビリティに影響する、ことを明らかにしています。

組織社会化

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【読書メモ】日本型キャリア自律を考える。:『人材育成ハンドブック』(人材育成学会編)

【読書メモ】日本型キャリア自律を考える。:『人材育成ハンドブック』(人材育成学会編)

日本でのキャリア自律についてレビューする用件があり、色々と漁っていたのですが、「『人材育成ハンドブック』にはどのように書かれているのだろう?」と思い、読んでみました。人材育成学会が編集しているので半ば想像してはいたのですが、執筆者は花田先生で「キャリア自律への多様な支援」という項目で執筆されています。本自体は2019年出版なので、花田先生の更新された内容が書かれていると信じて、ポイントだけまとめま

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”らしさ”で仕事を変えろ。 ”らしさ”で関係を紡げ!(アーカイブ動画)

本当に簡単な、キャリア理論の基本に、お気づきですか?

あなたは、あなたの人生の主役です。だから、自由に人生を演じたい。ほとんどの人がそう考えるのは道理にあったことでしょう。

でも、あなたは誰かの人生のわき役でもあります。だから、やはり好き勝手に生きることはできません。

そして、人生を役者に例えるのであれば、あなたの最大のパトロンは会社であり、彼らは仕事という台本を用意しています。

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