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モノ書き

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記事一覧

人生カタログ本

分厚い本を渡された
ずっしりと重量感のあるそして、いい素材の紙を使っているであろう、固い本。

「この中であなたが望む人生を選んでください。その通りに歩むことが出来ます。」

冷たい笑顔で言い放つ。

ペラペラっと中をめくってみる

大きなソファに座って脚を組む男性。
いいスーツを着て優しい微笑みをしている。
一目でわかるお金持ち。

かと思ったら良い具合に日焼けをしたサーフボード片手に写る若そう

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ノートにみちびかれて

ハルコ
今日で結婚して14年が経つな。
君と出会ってからはもう20年か。
好きな絵は描けているか?
夫婦なのに離れて暮らすなんて不思議だと思ったがなんだかんだ慣れるんだな。
いよいよか。
頑張ろうな。
終わったら連絡する。

しんちゃん
メールありがとう!
もう14年が経つのね。
私の我儘で離れて暮らすだなんて無理を聞いてくれて本当にありがとう。
楽しく絵を描いています。
もう来年なのね。

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幸せの魔法使い

幸せの魔法使い

わしの友達には“魔法使い”おる。
その“魔法使い”が現れると、一瞬にしてその場が明るくなる。
蛍光灯が新しいものに変わった…わけでもない、その“魔法使い”が自ら光ってる…わけでもない。
ただ、その“魔法使い”を呼ぶ時は注意しなくてならないんじゃ。
“魔法使い”と言われることが嫌いだからなぁ。

なぜ、“魔法使い”かわかったかって?

簡単なことだぁ。

とてつもない威力があるかじゃよ。

人を笑の

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コドクお化け

コドクお化け

後ろからトントン、と肩をたたかれる。

後ろを振り向くと

あれ?

誰もいない。

気のせいか、ってまた前を向いたら

トントン

ん?

後ろは誰もいない。

前を向こうと思ったけど

誰か気になってうっすら後ろを見ようとしてたら

わぁーっ‼︎

肩を叩いてた犯人が目の前にいる!

いつの間にか僕の周りを囲い込んでいる

もっと友達と遊びたい

もっとお母さんのご飯が食べたい

もっとお話

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オトナとコドモ

オトナとコドモ

「あの子は大人ね。」

大人と子供の境目なんてわからないけど、言ってみた。

あー、なんだろう。
大人って。
子供って。

ぎゅうぎゅうに詰められたストックの中でおにぎりを貪りながら考える。
ケータイ片手に。
頭は大人と子供について考えて、
目はケータイの画面に向けられて
口はおにぎりをかじってる。

器用だなぁなんて感心してる場合じゃない。

そうやって頭と身体の不一致がストレスとなるのだ。

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帰り道

帰り道

駅に着く。
電車から多くの人が吐き出されていく。
暖かい電車の中とは違ってひんやりとした風を感じる。
この温度差が私の家路を引き締める。

家までは約20分ほど。
自転車を使っていたが、パンクという出来事をきっかけに歩いている。
行きは太陽の暖かさを感じ、夜は空を見上げ星の瞬きに心癒されている。

ふ〜。と、一息ついて歩き出す。
電車から吐き出された人はもうまばらで、前にはスーツ姿のサラリーマンし

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平成22年2月22日

平成22年2月22日

夜、連絡が来た。

「今、何してるの?」

その日は昼間にマラソン大会へと行っていて、疲れた身体をドーンとベッドへと投げ出しウトウトしそうな時だった。

「ん?今⁉︎なんもしてない!」

そんなに焦らなくてもいいのに。
電話の相手が彼と知ってから今日2回目のドキドキ感を味わっている。

「マラソンお疲れ〜。どうだった?」

「あー!まぁまぁ良かったよ‼︎」

「そっか!疲れてない?」

「ん?全然

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富士山

最後にあなたに会えたこと。

何か意味があるんじゃないかと思うの。

朝日に照らされて赤く染まった顔。

私も頬の筋肉がふっと緩んだわ。

こっちにいた時は当たり前すぎて、そばにいてくれるものだと思ってた。

けれど、少しでも離れてしまうとやはりそこには距離を感じるのね。

それでも、会いたいと思うの。

空を見上げた時に浮かぶあなたの勇ましい顔。
包み込むような優しい顔も好きよ。

最後に会えて

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海岸線

海岸線

颯爽と走る

右には穏やかな海が見え、左には大好きな君がいる。

窓を開けて風を感じながらお気に入りの曲を聴いて。

ここの道が好きになったのも君の
「鎌倉に行きたい。」
という一言からだった。
君は僕と出会う前からそっち方面にはよく行っていたようだし、1人でも行けるはずなのに、何度も僕を誘ってくれた。
そして、僕も虜になってしまった。
何も考えない、この海風が僕自信を包み込んでくれるようなそんな

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歩車分離信号。
スクランブル交差点ではない交差点。
斜めに渡ってはいけないけど渡ってしまう。
今朝、点滅しそうな信号を斜めに渡るか悩んでまっすぐ進む。
どこまでもスマートでいたい。
そんなプライド。
#いらないプライド #小説 #ショートショートショート

樹木希林
何か視線を感じる。ロフトからそっと視線を感じるその先を見てみる。
その先というのはなぜか閉めたはずのカーテンと窓が開けっぴろげになっているベランダ。
干した覚えのない洗濯物の隙間から樹木希林が私を覗いている。
#ホラー #今日の夢 #ショートショートショート

魔法の言葉

魔法の言葉

世の中には魔法の言葉が存在する。

その言葉は大半の人を納得させることのできる言葉。

そして、それ以上何も言わせないようにできる言葉。

私はこの言葉を幾度と無く使った。
これを言えば大人は「そうか」と、納得し、私の考えを尊重してくれることを知っていたから。

「いい経験ができた。」
「悔いはない。」
「次を見ている。」

言葉はその時々で変わるけど、だいたいこういったことを言えば納得してくれる

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大好きなアユミさん

大好きなアユミさん

私の名前は“アユミ”なのだけど
私が尊敬する人には“アユミさん”が多い。
アユミって名前がただ単に多いってだけかもしれないけど…笑

その尊敬している方の中で紹介させていただくのは茅ヶ崎にあるカフェを営んでいるayuさん。
とても素敵なお方です♪
お店の雰囲気もayuさん自身も、そこにいるだけで幸せな時間を過ごすことができます^ ^

カフェの名前は“cafe pipipi”。ある方のブログでpi

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春のあたたかさ

春のあたたかさ

澄み渡った青空。
手をどんなに伸ばしても届かない、綺麗な青空。

ソファに座りながら、外の風景を楽しんでいた。
手には読みかけの本。
テーブルにはまだカップから湯気が出ているコーヒー。
昨日、出張から帰って来たいっくんがお土産としてくれたクッキーも添えられている。
穏やかな土曜日。
隣に座るいっくんはまた難しそうな顔でパソコンを見ている。

ハー
大きく息を吐いて
思いっきり吸い込む。
隣のいっく

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