亡くなる前の接し方に答えはない?末期癌と知らずに逝った母

母が50代で亡くなってから、今年で丸25年

私自身が母の年齢に近づいてきました。
会えるものなら幽霊の姿でもいいから会いたいです。そして、心からお礼が言いたい!

お嬢様育ちで、のんびりした性格の母だったそうです。
お見合いの席で父が一目惚れだったとか……
(「笑顔がかわいかった」と父が言っていました)そして結婚しました。

結婚後、母の生活が一変!


私の祖父が社長で、父の姉夫婦と一緒に商売をする家に嫁いだからです。

夫の両親と同居、近所には意地悪な小姑が二人、
そんな中、商売を手伝いながら、母は三人の子供を育てました。
親戚やお店の従業員さんとの付き合いもこなしていました。

母はいつも歯を食いしばるような怖い顔をしていましので、私は甘えたくても甘えられませんでした。今から思えば、無理をして必死で生きていたのがわかります。


祖父に土下座をした外祖父、それでも母は実家に帰らなかった…


私がまだ小学校に入学したばかりのある日、家の中で、もめ事が起こりました。内容は当時の私には全く理解できませんでしたが、祖父と両親、隣に住んでいる父の姉夫婦も加わり、激しく言いあっています。

私はその時初めて、いつもは強い母が泣いているのを見ました。

「これはただ事ではない!」と、私は幼いながらに感じ、息を殺して隠れてのぞいていました。やがて母の実家から、母の父親である私の外(がい)祖父が家にやってきました。

外祖父は土下座をし、額を畳にすりつけながら祖父(父の父親)にこう言いました。「今日は娘を連れて帰らせていただきます。」

土下座されたほうの祖父は、黙って頷(うなず)きました。

ところが…!母が強い口調でこう言うのです。
「実家には帰りませんから!お父さんは帰ってください。」

私はビックリしました。
「せっかく迎えに来てくれているのに、なんでお母さんは一緒に帰らないの!?」と、心で叫びました。

子どもの学校や幼稚園もあるし、舅のご飯の事や、他の家事も商売もある…そう、母は思ったのでしょうか?その場を離れようとはしませんでした。
お手伝いを頼める人もいたので、母はあの時実家に一時的に帰ったとしても、全然悪くなかったのに!


そして、次の日からは何事もなかったように毎日が過ぎていきました。
何が起こったのかは今となっては永遠の謎です。


苦労が続く母、ストレスが体をむしばんでいった

それから約20年後、母の義理の兄(父の姉の夫)が、勝手に知人の保証人になり、結局騙されて多額の借金をつくってしまいます。一緒に商売をしている父母にも、そのしわ寄せが大きくありました。

借金の半分を押し付けられる形になり、母はストレスで顔面神経痛になりました。顔半分がダラーっと垂れ下がるほどになってしまいました。

父の姉夫婦とは、その後絶縁しました。

私は妹と協力して毎月実家に送金しましたが、スズメの涙ほどしかできませんでした。父母の頑張りでなんとか借金を返し終わり、家業を立て直しました。

因みに父の姉夫婦のほうも借金を返すことができました。
なぜなら家を売って長男一家の家に転がり込み同居した時期に、
三男(私が一番仲良しだった従兄弟)が事故で亡くなり、たくさんの保険金が入ったからです。

これからという時に!がん宣告を受けた母

母の顔面神経痛が治り、落ち着いた生活が戻ってきた頃、
今度は母はがん宣告を受けてしまいます。

私たちは末期であることを母には伝えませんでした。本人は絶対に治ると信じていましたし、退院して仕事に復帰することばかりを考えていたからです。

事実を母に悟られまいとして、私は病室に行くときはいつも明るく振る舞っていました。しかし病室を出たとたんに涙がどっと溢(あふ)れ、打ちひしがれていました。


母に初めて本音を言えたのは、母との最期の日


ある日、私は母を励まそうとして、
「顔色がいいね!これなら大丈夫やね。」
と言いました。すると母はすねた顔で、甘えるようにこう言ったのです。

「私のことを全然わかってくれてない!しんどいのに!」
その言葉が私の心をえぐりました!

あ~、私は間違っていた!!
苦しいなら苦しい、悲しいなら悲しいと、母にもっと自然な心を出させてあげるべきでした。もっと私は寄り添うべきでした。

母が「死」の恐怖や不安を感じてしまうのを避けたい!その一心で私は無理に明るく振舞っていたのですが、母にとっては苦しみをわかってくれない、冷たい態度に見えたようです。

私はベッドで横になっている母に覆いかぶさるようになって、抱きしめました。

「お母さん、ごめんね!しんどいね?!私もつらいわ~!!」
一緒に声を出して泣きました。

病室を出る時です。
母はいつもになく、やわらかい笑顔に変わっていました。
そしてこれが母との別れになりました。

もっと長生きしてくれていたら、色々と親孝行ができたのに!
お返しが何もできなくて、本当にすみません!
ありがとうございました。

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