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私にいちばんちかいところ
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dream

dream

思いが強かったり、期待していたことほど、結果がついて来なかったり、うまくいかないとこころに波が立つ。最初は小さな波だったのに、さまざまなこころの突起した岩にぶつかるたびに、またすこし、またすこしと大きくなる。大きな波は、最初確実に握っていたはずの自信や確信を、かんたんに引き離す。正確には自ら手を解くのだと思う。握っているにはあまりに痛むから。

私は「ずっと思うように勉強できなかったことが悔しかっ

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雨と鮪と子猫の夏

雨と鮪と子猫の夏

空が泣けばすこしは心が落ち着くかと思った神様が善意で流したような長雨は、人の心もこの土地も川も、水の力で大きくえぐって行ってしまったように思う。一方では無かったことにするために、一方では無かったことにしないために。

それでも待ちわびていたものと違う、夏が来た。
決して「人はどうして生きるのか?」なんていうことを考えたくない、むさ苦しくて、汗がしがみつくように流れて、電車の中に人の匂いがむんとかお

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カーテンの向こう

カーテンの向こう

誰かがひとりで死んだと聞くと、息が、胸がつまる。

触れたくなかった古い額縁に触れなければならないような感覚。勝手にその人が最後に見た、あるいは思い浮かべた景色を考えて、どんな色だっただろうか、どんな姿だっただろうか、と考えて勝手に悲しくなる。そして勝手に、私は私としてまだ悲しめているのだと知り、少しだけ安堵するのだ。

死とはなんだろうか?
その方法はたくさんある(それでいて全てが自分の問題とは

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やさしいかぜ

通いなれた場所へ向かう電車の中、私はとてもゆったりとした気持ちで席に座っていた。今日は平日だけどまだ2時前。学校や会社も終わっていない時間の電車は混み合うこともなく、すんなり座ることができた。持病で立ち続けることが出来ない私には最適の時間帯。これは目的地の駅までの約20分間の話。

地元の駅から3分の2ほど乗ったところで制服姿のメガネをかけた青年が乗ってきた。青年は数個空いている席には座らず、出入

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Good by Summer

Good by Summer

「平成最後の夏」と世の中が騒いだ夏も、暦の上では終わった。私はずっと家の中にいたように思う。

"殺人的な暑さ"と連日のニュースで取り上げていた。それほど亡くなった人が多いのだと思うけど、どんな夏にも人は死ぬ。

平成生まれである私の、平成最後の夏は花火大会にもいかず、近所のお祭りにもいかず、"インスタ映え"なかき氷も食べずに終わりを迎えた。
だけど、確実に私は夏を生きたのだ。

深夜3:30まで

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AM4:30

AM4:30

いつもいつも見上げる天井

体を布団に沈め 見上げる天井

エアコンの影はしかくく

ランプの灯りはまあるく

いつかそう遠くない未来に

私はこの天井の模様を忘れてしまうだろうか

この天井の影のなりかたを忘れてしまえるだろうか

カーテンの外はいつだって厚い生地に埋もれた青

清く不気味な青

何度も見て何度も見ないことにした朝

この天井とともに忘れてしまえるだろうか

陽炎のたつ日

ことばというものは
いつだって誰かからもらったものである
あるいは誰かから盗んだものである

しかしたいていは
誰かのことばをいちど咀嚼し飲み込み
腹の中でぐつぐつと煮込み
来るべき時に新たなものとして生み出されるもの

だから真っ当な人の口から出る
ことばには血が通っている

ことばがもともと誰かのものだったとはいえ
誰かのことばをひと噛みもせず
飲み込みもせず
ぐつぐつと煮込むこともせず
その

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私があなたの力になれなくても、救うことができなくても、あなたの手を握る存在でありますように。そしてあなたが手を離すときには、私はゆっくりと手を離すでしょう。

ときどき考えること、私たちは今生きる私のために生きた方がいいのか、遠くて近い明日を生きる私のために生きた方がいいのか。希望は外にはなくて、私の中にしかない世の中でどう生きていくことが私のためになるのだろう。

deeper

deeper

例えるなら、

鼻腔に冷たい空気がゆっくり流れるようなしんとした暗闇の中。少し身体を動かすたびに軋むベッドの上、今にも脳が真っ二つにかち割れそうな頭痛で目覚めて、涙目になりながらころげ落ちて、床の甘さのない冷たさにもう一度傷ついて、ただ苦しんで、もがいて、前が見えない恐ろしさに心底恐くて、掴んだもの全て私以外の場所に投げた。かるい音、おもい音、はじく音、われる音。どこかに当たった音だけが空間に返

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かみさまだと思っていた人には、さらにその先に願うようなかみさまが居たとして、私がとうとうそのかみさまのかみさまを見つけてしまったのだとしたら、私が特別に思っていたあの絵やあの音、あの感情は誰のものだったのだろうか。私のものだったのだろうか。

処方箋

処方箋

「こころ」について学んでいくたびに思う。

こころに処方箋はないのだと。

言葉や薬さえも処方箋にはならない。
ただ祈りであるだけ。

パン生地を練って作り、発酵させてから型にはめる瞬間。型にはめる前の生地は伸びやかでどこまでも純粋だ。
でも、1度でも姿を歪め、型にはめてしまえばたちまち乾燥して動かなくなる。ゆっくりと引き伸ばせば動くようになるが、2度とあの純粋には戻れなくなる。

泣いてつめ

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