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「出会い、生まれる、じてんしゃ旅」 世界36カ国90000km を旅してきた自転車冒険家が、今回目指すのは生き 方の冒険。 財布を持たず、見通しを持たず、持つのはコーヒー… もっと読む
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#コーヒー

ひとはシステムをまわすために生きるのか。

ひとはシステムをまわすために生きるのか。

左手にせまる山はどこか不揃いで、けれどそのまばらで色の濃さの違う緑がかさなりあう姿がかえって自分の心を落ち着ける。山の斜面に並ぶ瓦屋根がどこか懐かしい感じがする。右手に見える島には2基の風車がまわっていて、きっとあの先には祝島があるのだろう。

数年前にSNSで知った山口県・上関町。いつか訪れたいと思っていた場所。patagoniaスタッフから「上関」の言葉が出たときに、ピンとくるものがあって現地

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思いを交換することで、人は生きてきた。

思いを交換することで、人は生きてきた。



思いのほか、濃い時間を過ごした青森を離れ岩手へ。
「東北はみんなシャイなんじゃないか説」は僕のなかではすっかり消滅した。盛岡に到着して駅前通りを流す。ずーっと続いていく商店街を抜けたそのさきにお堀があって、この石垣をバックにコーヒー淹れようとセッティング。さあどんな出会いが待っているだろうか。

・・・・・。
誰も止まってくれない。確かに人は行ったり来たりするんだ。
けど、挨拶してもこちらをチ

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通りが違えば出会いも違う。

通りが違えば出会いも違う。

青森にやってきた。
函館からのフェリーを出るともう日は傾き、建物の片側にだけ赤っぽい日が差している。今日の夜は、ここの大学で教える大先輩のところでお世話になることになってるから、ちょっとコーヒーやってみようかと駅前を目指した。

線路を跨ぐ大きな歩道橋を越えたところで駅前通りに出た。思ったよりも人通りがあるけど、ぼんやり歩いているというよりかは、みんな家路に向かう感じ。
さあどうするかな、と駅前を

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いのちと、いのちが繋がるとき。

いのちと、いのちが繋がるとき。

「あぁ、美味しい。ほんとに嬉しい。」
青森駅前。会社帰りにコーヒーを飲んでくださった彼女はこう言った。
「じつはずっとごはんが食べられなかったんです。」
そう彼女が続けたとき、赤ちゃんを抱いた若いお母さんがこう返した。

「もしかして拒食症でした?実はわたしもそうだったの。」

堰を切ったように話し始めたOLの女性。ひとつひとつに、分かるよと返すお母さん。僕ができることは、一歩うしろに下がって、た

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居場所と役割が人を輝かせる。

居場所と役割が人を輝かせる。

「まだもうしばらくここにいますか?」
いるよ。待ってるね。そう伝えると、ちょっと内気そうなそのあんちゃんは目の前の建物に入っていった。まぁ、あとで帰ってきてくれるだろう。こなくても何かを感じてくれたならそれでいい。

ついに函館までやってきた。長くいさせてもらった北海道の終着点。
星型をした五稜郭のすぐちかく、若者が行き交うシエスタハコダテという建物の前の交差点で、ぼくはdailylife bic

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被災地で僕が見つめていたこと。

被災地で僕が見つめていたこと。

この夏の北海道胆振東部地震。
いまの自分だからできることはなんだろう。
停電のなか、被災地に向かいながら考えた。やっぱりコーヒーだった。

Facebookでの呼びかけに全国からコーヒー豆が集まった。
たくさんのお手紙とともに。
被災地に入ってからのイメージはまだない。
こんなにも空が青くて、日差しがまぶしい。
どこかまだ現実じゃないような、いのちの重みのようなものを想像することもできないまま被災

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地域の人がまじわる場所、映画館。

地域の人がまじわる場所、映画館。

サラブレッドが育つまち、北海道のひし形の右下にあるのが浦河町だ。
この町には前回の南米から帰国したタイミングで講演に呼んでいただいた。そのときの真っ白い世界と道路脇に積もった雪の壁はすっかり無くなり、夏空が広がっている。キラキラと光る波が行ったり来たりする姿は、僕が山あいで生まれたことに関係あるのかないのか知らないけれど、すごく懐かしさを覚える。

本屋さんをしているお友だちのお宅にお世話になる。

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ひとと会わない日のお話。

ひとと会わない日のお話。

ひとと全く会っていないわけじゃないんだけれど、なんだかそんな気持ちになったのでこのタイトルにした。なので写真や本文とは関係ないのかもしれない。

アイヌの家族とともに過ごした阿寒湖をあとにした僕は、今回の北海道地震の被災地に向かってルートをとる。そのあいだの写真たちだ。

どこかのレンガ倉庫。北海道にはこういった古い建物がたいして直されるわけでもなく、そのまま使われていたりして残っているのがどの町

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アイヌと家族とコーヒーの物語。

アイヌと家族とコーヒーの物語。

旅というのは不思議なものだ。
そのときどきに見つけた小さなカケラをたどっていくうちに、いつの間にかおおきな一筋の物語が浮かび上がってくるような。

予定をたどること。
空白を埋めていくこと。

それが日常なら、旅はこうかもしれない。

心地よい空白を持ち。そこに入ってくるものを受け入れるもの。
どんな絵になるかは分からない。けどあとから振り返るそこに、自分の人生にとっての必然性のようなものが生まれ

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避難所でのコーヒーが生み出すもの。

避難所でのコーヒーが生み出すもの。

電気が無くなった。
信号はただ交差点に何もあかりを照らさず立つ。

ホームセンターやスーパーの前には行列ができ、ガソリンスタンドの前には車が並び、つなぎを着たスタッフが手押しポンプなのかハンドルのようなものをグルグルと回しながら給油をしていた。

コンビニはどこもドアに大きく「臨時閉店」と張り紙をしていて、セイコマートや少数のコンビニだけがお店を開いて、小さな端末を使ってレジを打ちながら営業してい

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地震が起き、明かりが無くなった。

地震が起き、明かりが無くなった。

僕の頭のなかは「台風」のことでいっぱいだった。
下川町を出たころ、会う人会う人に「台風来てるから気をつけてね」と声をかけていただく。今年の西日本豪雨をはじめとした水害はまだ終わる気配を見せない。本来、梅雨がないと言われている北海道も今年は「蝦夷梅雨」といって雨ばかりの夏だったそうだ。

台風が来るのは今晩。自分のいる場所からオホーツク海にぶつかる興部町の道の駅にも、列車の車両が旅人の宿泊用に開放さ

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行き当たりバッチリでいこう。

行き当たりバッチリでいこう。

親友のリョータ家族の暮らしに、僕も借りぐらし。
そこで垣間見たおおらかさというよりも、どっしりとしていて、その都度起こることをしっかりと受け止められるような安定感。このままいたら、まだまだ彼らから受け取るものがたくさんあるだろうなぁという名残惜しさを残してペダルを踏みはじめた。

さぁどちらに向かおうか。当日の朝まで決めず、ゆきちゃんの「なんとなく東でしょ!」をサッと受け入れ稚内ではなく下川を目指

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僕は君たちに出会って【家族】に憧れた。

僕は君たちに出会って【家族】に憧れた。

一度しか、それもたったの1、2時間しか会っていないのに、心に何か余韻のようなものが残る出会いがときどきある。徳島に家族と里帰りしていたリョータとその家族がそうだった。カラダもおっきいけど、その佇まいから懐の大きさを感じるリョータ、赤ちゃんを抱きながらおっきな口をあけて笑う奥さん、そしてオチンコチーン!と父ちゃんのちんこをたたく娘。

「昭和の時代はこういった家族がどこにでもおりました」とキャプショ

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コーヒー屋の娘と写真

コーヒー屋の娘と写真

茨城の名店SAZA COFFEEの焙煎士・黒澤さんからうかがっていたカフェが旭川のお隣、東川町にある。YOSHINORI COFFEEを目指して自転車を走らせる。

旭川の市街地を抜けると一気に田畑が広がる風景に。目の前にまっすぐ伸びる道路も頼りがいがなく、これから店があらわれるのであろうかと不安になるようなところ。えんえん続く畑の向こうには、いくつか山が連なっていて、ときおり軽トラが景色の向こう

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