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映画「DUNE」は傑作だ


2021年に公開された映画「DUNE」
このSF映画、一度見て大ファンになりました。
以下「DUNE」の、夏の映画感想文です。

初作「デューン 砂の惑星」の悲しい記憶

この映画の原作は1965年発表の小説『デューン 砂の惑星』です。
その複雑な世界観から、映像化は不可能とされてきたSF作品ですが、1994年にデビッド・リンチにより「デューン/砂の惑星」として最初に映画化・公開され、当時話題を呼びました。

まだ10代だった私も興味本位で観に行ったのですが、かなり難解なストーリーと、お世辞にも褒め難い安っぽさを感じさせる世界観、そして特撮技術の限界を感じさせる粗い内容に些か興醒めしてしまいました… 壮大なSF作品なのに、砂漠に住む巨大な砂虫しか印象に残らなかったという、悲しい思い出があります(涙)。

まるで違う2021年版「DUNE」

そんな訳で、2021年に再制作された「DUNE」についても、観る前から(またあの、難解で退屈な長時間スペースオペラか…)という思い込みがあり、映画館には観に行くこともなくスルーしていました。
でも、ふとAmazon Primeで配信されていることを知り、じゃあ試しに観てみるかと覗いてみると、もう吃驚。その完成度に度肝を抜かれ、一度で虜になってしまった次第です。
何事も思い込みはいけませんね。

秀逸なコスチューム

原作ファンの方は、その物語展開に強い関心を寄せていると思いますが、私が感嘆したのは「DUNE」の全編、余すところなく徹底的に細部までこだわった、映像と美術デザインの素晴らしさです。
作品に登場する、架空の世界で暮らす登場人物の衣装がとにかく抜群に秀逸です。単なる装飾ではなく機能性にこだわり、一貫した世界観でデザインされたそのファッション・デザインに目は奪われ、もう物語を忘れてただただ見惚れてしまいます。

世界観を描く優れたデザイン

コスチュームだけでなく、物語の舞台となる世界描写がまた最高です。
公爵家の居間、墓地、皇帝からの使者を迎える礼装と儀式、砂漠の中に構築された石の建築物の空間。ヘリコプターの様なSTOL飛行が可能な、蜻蛉の様な飛行機のオーニソプターの構造と操縦席の各種計器に至るまで滲むディテール。

映像上に描かれるあらゆるものの形、構造、そして内部装飾の実に細かい部分に至るまで、何一つおろそかにせず緻密に設計され、丁寧に作り込まれ(CGに頼らず、登場する機械や空間の多くは物理的な実物のセットとして製作されています)、リアリティに富んだ独特の世界観を醸し出しています。

簡潔で深い哲学

この世界に生きる人の生き様と哲学が、また深い。
この物語は遠い未来の宇宙SFの形をとりながら、政治、宗教、民族、自然、技術が複雑に絡み合い、権力・階級・血統に纏わる陰謀と暗闘、本能的な欲望と嫉妬、救いへの羨望といった、私たち人類が共通に抱く神話的な要素により組み立てられています。
分かりやすく例えると、人気ドラマ「Game of Thrones」の世界によく似ています。

こうした個々の要素について言語化し説明しようとすると、この感想文の様にどうしても冗長になってしまい(ごめんなさい!)、難解で退屈なものになるのが通例です。
この映画ではそうした余計な説明は一切省き、登場人物の台詞も大胆に絞り込み、代わりに各所で詩の様な短い囁きを繰り返すことで、背景にある深い精神世界を想像させることに成功しています。
脚本家と監督の、その見事な手腕にはただただ脱帽です。

こうした全編に貫かれたこの秀逸なデザインと優れた表現が、映像を通して見る者の意識の中に、美しも厳しい謎めいた星の砂漠の世界を違和感なく展開させ、緊張感と深い没入感を与えてくれます。

日常を忘れ、SFの醍醐味をたっぷりと味わわせてくれる、これぞ傑作!と感じさせてくれる素敵な映画「DUNE」。
まだご覧になっていない方はぜひ、一度観てみることをおすすめします。
面白いですよ。

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