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銀と金 【竜の仔の物語−序夜異譚−】

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虐げられた者たちの、それでも屈することのない意思の話。 【完結済】
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銀と金【縦書き版】

銀と金【縦書き版】

こんにちはギーの代筆者ナマケモノです。

かねてよりベラゴアルドクロニクルの「縦書き版」を制作していまして、その第四弾となります。現在の公開バージョンに加筆、修正、ルビ表現を加えての【完全版】となっております。

とはいえ縦書きをnoteさんで公開するのは不可能なので、ファイルのアップロードという形になります。様々な方々から、しっかり動作したというご報告を頂いているので安心してはおりますが、それで

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銀と金  −前編

銀と金  −前編

竜の仔の物語 −序夜異譚−

 ルグは、はじまりを思い出そうとしていた。いつからここに居るのか。どうしてここに居るのか。少しだけこの場所に嫌気がさしてくる時には決まって、はじまりを思い出そうとした。

 特に今夜のような蒸し暑い夜。格子窓から湿気った南風が吹き、牢の四隅に積った糞尿の臭いをかき混ぜる時などは、ここに来たはじまりを、彼は必死に思い出そうとするのだった。

 自分の名が『ルグ』だという

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銀と金 −中編

銀と金 −中編

 ミルマが去ると、ルグは牢の隅へしゃがみ込む。藁をかき分け、傷の付いた床を見つけると、床を剥がし、石の隙間に並んだ小瓶を取り出す。

 彼は小瓶のふたを開け、まず匂いを嗅いでみる。腐った匂いがする。違う瓶も試してみるが、どれも同じ匂いがする。ようやくひとつだけ違う匂いの小瓶を見つけると、彼は少しだけ舐めてみる。

 もの凄い刺激臭と酸味が舌の上を伝わり、身体中が痺れる。一口飲んでみると、頭の奥がぎ

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銀と金 −後編

銀と金 −後編

「そういうことか」

 アイカレが杖で痩せた細ったミルマを小突く。彼女は何の反応もしない。すでに気力が尽きてしまったのだ。

 「お前がたぶらかしたのか」アイカレはもう一度彼女を小突き、そうして杖を振り上げる。

 そこで反射的にルグは前へ出る。しかし、彼はなぜそうしたのかが自分でもわからない。

 ぼんやりと佇むルグを見ると、魔法使いは安心し、ルグの肩を強かに打ち付ける。そして何やらぶつぶつと呪

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