イメージの奔流と苦痛・陵辱─『グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉』

書籍詳細


仮想リゾート〈数値海岸〉の一区画〈夏の区界〉。南欧の港町を模したそこでは、ゲストである人間の訪問が途絶えてから1000年、取り残されたAIたちが永遠に続く夏を過ごしていた。だが、それは突如として終焉のときを迎える。謎の存在〈蜘蛛〉の大群が、街のすべてを無化しはじめたのだ。わずかに生き残ったAIたちの、絶望にみちた一夜の攻防戦が幕を開ける――仮想と現実の闘争を描く〈廃園の天使〉シリーズ第1作。

見たことないけど想像してしまう(できる)風景がある.
その風景はおよそ現実からかけ離れているのに,私たちはその風景にリアリティを感じてしまう.

おそらくその場所には現実では出会うことはないだろうし,この世界に一度として生まれることもないだろう.それでも私たちは想像してしまう.そして,その「想像」という力こそが私たち人間が持ちうる最大の力なのだ.

この本から溢れ出てくるイメージの奔流は私たちの想像力の遠大さを教えてくれる.文字として描かれた風景(イメージ)は文字でしかない.しかし,だからこそ,その風景は無限の解釈を許す.
おそらく,この本は読むたびに姿を変えるだろう.私たち自身の変化と共に.

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