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方舟/夕木春央(2022/09/08)【読書ノート】

「週刊文春ミステリーベスト10」&「MRC大賞2022」堂々ダブル受賞!
9人のうち、死んでもいいのは、ーー死ぬべきなのは誰か?
大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。そんな矢先に殺人が起こった。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー犯人以外の全員が、そう思った。タイムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない……
その他ミステリーランキングにも続々ランクイン!

この動画では、「箱舟」の魅力を紹介し、既に読んだ人も読んでいない人も、この作品を読みたくなるような紹介を目指している。まず、「箱舟」の設定とミステリーの完成度が非常に高いことを紹介したい。本作の冒頭では、主人公とその友人たちが山奥の地下建築「箱舟」を目指す。しかし、途中で奇妙な家族に遭遇し、さらには大きな事故が発生し、箱舟の出入り口が塞がれてしまう。全員が溺死する危機に陥った中で、脱出方法を探すが、その方法には大きな代償が伴うことが分かる。そして、ゆうやという人物が殺害され、一行は殺人犯を特定しようとする。このミステリー展開が、読者の倫理観を追い込みながら、極上の犯人探しを楽しめる作品だと紹介している。

次に、ミステリー作家有栖川有栖先生による「箱舟」の特別解説が面白いと紹介している。この解説はWebページ上でパスワード付きで公開されており、箱舟を読んだ人なら誰でも無料で読むことができる。解説は非常に詳細で、設定や登場人物たちの心理描写について書かれている。この解説を読むと、再度「箱舟」が名作であることを実感し、もう一度読みたくなることが保証される。また、解説を読んだ後に「箱舟」を再読すると、最後の展開を知っている上で読んでも鳥肌が立つほどの面白さがあることに気がついた。特に45ページと280ページには、面白さが凝縮されていると紹介している。

方舟の舞台は長野県の山奥、大学時代の友人たちと遊びに来た青年とその友人5人、そして週一で集まるいとこの正太郎の計7人が登場する。
友人の一人が廃墟となった巨大な地下建築の存在を告げ、興味を持った一行は軽い気持ちで訪れることに。しかし、目的地にたどり着く頃にはすっかり暗くなり、別荘に戻れなくなってしまう。仕方なく廃墟で一晩を過ごすことになったが、そこに迷い込んだ親子3人も加わり、不安な一夜が始まる。

この地下建築「方舟」は、地下に埋もれた巨大な3階建て客船のような構造をしている。入口は地面のマンホールからはしごを降りて入る。地下1階と2階は荒れているが泊まれる状態だったが、地下3階は完全に水没している。
ある夜、地震が発生し、激しい揺れと共に出入り口のドアが動かなくなる。大きな岩がドアを塞いでおり、外に出るためには岩をどかさなければならない。岩を動かすには、地下2階の小部屋にある装置を使う必要があるが、装置を動かすとその人は室内に閉じ込められてしまう設計になっている。地下3階が水没しているため、装置を動かした人は助からない状況に。そして、地下3階の水位が急上昇しているため、建物が完全に水没するまでには約1週間しかない。
この状況で、誰が犠牲になるのかという重圧が全員にのしかかる。一度は議論を止め、装置を動かすための工具を探し始めるが、その最中に一人が倒れているのが発見される。その人はすでに亡くなっており、閉じ込められた中でのこの事件は、犯人が彼らの中にいることを意味していた。犠牲者が出たこの状況で、犯人探しが始まり、犯人は生贄になるべきだという思いが強まる。

今回のポイントは、地下に閉じ込められた非常事態の中での犯行動機と、他人を犠牲にしてでも生き延びたいという人間の醜さがどのような結末を迎えるのか、という2点。この作品はクローズドサークルという状況の中で予想もしなかった結末を迎える。謎解きの面白さと、視点が一気に変わる瞬間の驚きを体験してほしい。続きはぜひ皆さん自身で確かめてほしい。

登場人物

越野柊一(こしのしゅういち):主人公。システムエンジニア

篠田翔太郎(しのだしょうたろう):越野柊一の従兄

西村裕哉(にしうらゆうや):越野柊一の大学時代の友人仲間。アパレル系勤務

野内さやか(のうちさやか):越野柊一の大学時代の友人。ヨガ教室の受付

絲山隆平(いとやまりゅうへい):越野柊一の大学時代の友人。ジムのインストラクター

絲山麻衣(いとやままい):越野柊一の大学時代の友人。幼稚園の先生。絲山隆平の妻

高津花(たかつはな):越野柊一の大学時代の友人。事務職

矢崎幸太郎(やざきこうたろう):電気工事士

矢崎弘子(やざきひろこ):矢崎幸太郎の妻

矢崎隼斗(やざきはやと):高校一年生。矢崎夫妻の息子



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