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テロリストのパラソル/藤原伊織(1995/09/14)【読書ノート】

『テロリストのパラソル』は1995年に江戸川乱歩賞を受賞し、翌年直木賞も受賞した作品。これは日本の文学界において、同一作品がこれら二つの賞を受賞した唯一の例とされる。審査員全員からの絶賛を受け、日本のハードボイルド小説市場における最高傑作を生み出したと評されている。
物語は1994年の東京を舞台にし、過去に学生運動に参加した経験を持つ40代のバーテンダーが主人公。彼は新宿の小さなバーを経営しており、客との交流は少ないが温かい人柄で周囲から好かれている。ある日、彼の日常は新宿中央公園での爆破事件によって一変し、物語が展開する。

あらすじ

アル中のバーテンダー島村は20年前の事件をきっかけに名前を変え、過去を隠して生きていた。新宿中央公園での穏やかな秋の日、ウイスキーを飲みながらウトウトしていると、突然の爆音が響き渡る。何らかの爆発物が爆発し、多数の死傷者が出る。この事件の被害者の中には、かつて学生運動で共に闘った友人桑野や、3ヶ月だけ同棲した女性優子も含まれていた。
桑野と島村は過去に爆弾事件を起こし、警察に追われた経験がある。爆発現場に置きっぱなしにしたウイスキーの瓶から指紋が割り出され、島村は今回の事件にも関与している疑いをかけられる。島村は否応なく事件に巻き込まれ、犯人探しを始める……

登場人物

島村 圭介(しまむら けいすけ):アルコール中毒。バー「吾兵衛」のバーテンダー。バーには酒類とホットドッグしかメニューがない。旧名・菊池俊彦。東大在学時に、友人らと学生運動に興じた。その後、大学を中退し、ボクシングを始め、そこそこ実力を付けた。
タツ:20代後半のホームレス。事件の約2カ月前に島村と知り合った。事件後、島村に寝ぐらを提供する。
浅井 志郎(あさい しろう):興和商事社長。暴対法施行直前に株式会社に鞍替えしたヤクザ。経済などに詳しい。爆発があった日の夜に、「吾兵衛」を訪れ、島村に忠告する。元警官という異色の経歴を持つ。
松下 塔子(まつした とうこ):20年前、まだ島村が本名で過ごしていた頃に、3カ月だけ共同生活を送った園堂優子の娘。21歳。母親が爆弾事件で亡くなったことを島村に知らせに来る。祖父は現職の国会議員。
桑野 誠(くわの まこと):学園紛争時はノンセクトラジカル随一の論客として新左翼党派からも一目置かれていたが、学生運動の退潮と共に活動から退きアパレルメーカーに就職する。1971年、島村(当時は菊池)と共に車爆弾事件を起こしたとされているが、実際は事故に近かった。今回の爆発事件で死亡が報道される。
望月(もちづき):浅井と共に島村の元を訪れた、浅井の手下。
岸川(きしかわ):ホームレス。法医学関連の本を英語の原書で読んでいる。
宮坂 まゆ(みやさか まゆ):父・徹と共に公園を訪れており、爆発の直前、島村と会話を交わした6歳の少女。本人は奇跡的に軽傷で済むが、父親が死亡してしまう。





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