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文月悠光 詩と朗読ムービー

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詩の朗読の音声・動画をまとめています。YouTubeに再生リストがあるので、併せてどうぞ⇒https://www.youtube.com/playlist?list=PLnijS… もっと読む
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2021年4月の記事一覧

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綿毛に包まれた種たちは
土のぬくもりを知っているから、
風のなかへ飛び込むのだろう。

 *

だれに受けとられなくてもいい、
わたしは差しだす。
どこに届かなくてもいい、
わたしは差しだす。
踏みつけられてもかまわない、
わたしは差しだす。
痛みを差しだすことが唯一
伝える手段なのだから。
声もなく 足音もたてずに
わたしは差しだす。

光に守られた綿毛はひとつの星雲。
日々の重さを綿毛にのせて

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きみとひとつになれなかった、
わたしを壊されそうで。

互いの傷あとを包み合って
そとへ 手放せたなら
砕けてもいい。
わたしは軽くなる。

 *

割れない泡のようなこころ たずさえて
ふくらむのにまかせていたら
いつしか重くなっていた。
ふるえる輪郭は、鼓動のあかし。
潰さないで 潰れないで、と
願いつづけて今を見る。
行き先はまだわからない。
それでも恐れず
青い風にのりたい。

つめたい鏡

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