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記事一覧
【短編】チョコチップクッキーと双子宮
※前回のお話→「ティースプーンと処女宮」
「このお姉さん適当なこと言う」
「僕の考えではリネンは無いな」
寝坊した朝だった。
テレビからのニュース番組の音声にはっとする。ああ、やってしまった……テレビをつけっぱなしで寝てしまったらしかった。飛び起きたが、休日だと思い至り、再び枕に埋もれた。
「月子、朝ごはんまだ?」
「おはよう、月子さん」
若い声がふたつ同時に飛んできて、月子はげんなりとふとん
二人展書下ろし短歌「ステージの下から四首」紹介
ここまでの顛末について4/4(日)から西院夕方カフェにて開催していた、絵と短歌の二人展「陸離たる日々」ですが、感染防止対策で会場が臨時休業になり、二人展は西院のライブハウスである和音堂さんに一時お引越ししております。ライブもBAR営業もできないなか、夕方カフェに戻れる日までギャラリーとして営業していただけることになりました。
5/1(土)も当初の予定通り、感染症対策下で在廊いたしますので、ご無理の
【短編】牛を追う男の話(古今東西古典事情・壱)
なぜ世の中は失恋や別離の歌が多いのか。
幸せなとき、楽しいとき、また怒っているときも、歌なんて詠もうという気にならないからだ。
今日は第七の月の七番目の日。
君が来るまであともう少し。
身分違いの恋。よくある話だ。男は牛飼い。女は天帝の娘。けれど二人は結ばれた。
喜びのあまり仕事を忘れてお互いに熱中してしまうのもよくある駄目な恋人たちの話。
男は牛を追わなくなった。だけど君は織姫だ
【短編】ティースプーンと処女宮
※前回のお話→「キャベツと金牛宮」
満月にしても明るすぎる月明かりの下で、誰かの隣を歩いていた。
知り合いだと思う。知り合いどころじゃない。
夢の中の月子は、確かに彼に好意を寄せていた。
「もう、指が、動かないんだよね」
彼はぽつりと言った。彼はピアニストだった。定期的に演奏を聴くことがあった月子は、そのことに気付いていた。
彼は身体が徐々に石になってしまう病に冒されていた。手足から動
【短編】宝石になったお姫さま
砂漠の大きなオアシスに、ある王国が栄えていました。
立派な宮殿には王さまと八人の姫が住んでいました。名前をそれぞれ柘榴石に葡萄石、玉髄に紅玉髄、琥珀に翡翠に真珠、そして瑠璃といって、宝石のように美しい、王さまの自慢の姫君たちです。
あるとき、王宮に宝石商を名乗る者がやってきました。王宮には年に数回、きちんとした通行証を持つキャラバンが出入りしておりますが、その者はターバンを目深に被り、身なりも
【短編】キャベツと金牛宮
月子の朝は早い。
午前3時49分。だいたい日の出の1時間前くらい前にアラームをセットして、顔を洗い、1杯の水を飲み、ベランダに出る。この時期ならカーディガンを羽織ればいいけれど、真冬でも震えながら出る。真冬なら、6時過ぎで良い。
月子のホロスコープはおばあちゃんが作ってくれたものだ。おばあちゃんは月子に、「昔からのやりかたなのよ」と言って、ぬか漬けをつけるやりかたを教えるみたいにして、星占い