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椿の花が咲いていた。

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短編恋愛小説「椿の花が咲いていた」前編と後編。上から読んでくださいませ。 それぞれ単発でも読めるようにギリなってます。
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椿の花が咲いていた。(短編小説)

椿の花が咲いていた。(短編小説)

3年ぶりだというのにそれほど懐かしさを感じないのは、年々と人混みに勢いが増しているように見えるからだろうか。

近隣の三県も含めて最も大きなこの夏祭りの目玉は二万発もの打ち上げ花火だ。

実家から自転車で迎える距離のそれには、小学生の頃は同じ地区に住む友達と、中学は部活動の仲間と、高校は一緒にバカやったいつメンと、県外に移った大学時代でさえ地元に残った彼女と毎年来ていた。

かれこれ12年間は皆勤

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椿の花が咲いていた。完結篇(短編小説)

椿の花が咲いていた。完結篇(短編小説)

*こちらは前回投稿しました作品の続編ですが、これだけでもギリ成り立ちます。

「どうかされたんですか?」

俺は思わず声を掛けた。
何も考えもなしに身体が勝手に動き出し、口が滑った。
喧騒の中、俺とその花だけが透明な何かに包まれているようで静かに思える。

「え? あ、あの」

その椿の花は、振り向いてもやはり不安げにこちらを見上げていた。
一縷の望みもかけていなかったといえば嘘になるが、椿の花を

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