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ぐん税ニュースレター vol.44 page03 -マーケティングコンシェルジュ-

今回も企業の戦略策定について書いていこうと思います。
以前にSTP分析の解析で登場したマーケティング論の学者コトラー氏は競争地位別に企業が取るべき戦略を提唱しています。業界内での競争における自社の立ち位置によって取るべき戦略が異なるということです。

では競争地位とは何か。大体どの業界もいわゆる業界1位と言われるトップシェアを持つ企業とそれに追随するある程度のシェアを持った業界2位、3位の企業があります。そして上位企業の隙間を狙って独自戦略などを取る企業が残りのシェアで競争します。マーケティング関係でこの手の話になると大体自動車メーカーが例に持ち出されるのですが、馴染みがあって誰でもわかりやすいので、ここでも自動車メーカーの例を使いながら解説します。

競争地位の種類

コトラーはこうした企業の競争地位を4つの階層に分けて説明しています。

・リーダー

これは文字通り業界トップの企業です。説明するまでもなく自動車メーカーで言えばトヨタ自動車が該当します。リーダー企業は業界トップシェアを持っていますので、シェアを維持しながらその業界の市場が大きくなれば市場規模が大きくなった分の恩恵を受けることができます。そのためには市場と同質化を図ることが重要です。簡単に言えば自動車市場=トヨタ自動車の製品という状態に持っていくことです。具体的にはフルライン戦略を取ることになります。フルライン戦略とはユーザーのニーズを満たす車種を全てラインナップするということです。例えば新たにEVや自動運転のニーズが出てきてそれに注力するメーカーが現れたとしても、トップ企業には財力とリソースがありますので、すぐにそうしたニーズにも対応し新車種をラインナップすることができ、またそうして市場との同質化を図っていきます。以前にマーケティング・ミックスの解説で差別型マーケティングの話をしましたが、これはトップ企業だからこそ取れる戦略と言えます。

・チャレンジャー

リーダーに次ぐ業界シェアを持つ企業をチャレンジャーと言います。お察しの通りホンダや日産がこれに該当します。次点の企業ですのでリーダー企業に追いつこうと挑戦し続けるためチャレンジャーなわけですが、リーダー企業のようなシェアを持っていないため財力もリソースもリーダー企業には劣ります。リーダーと同じことをしても勝算がないためリーダーの商品とは差別化した戦略が必要になります。その差別化した商品でリーダーよりも優位性のあるセグメントで競争するなどが考えられます。

・ニッチャー

ニッチとはマーケティングではスキマ市場と言われています。ニッチ戦略と言われることもあります。スキマ市場なので業界シェアを持つ企業が注力しないような分野を狙って独自の地位を確立していきます。リーダーやチャレンジャーと比べても経営資源を持っていないため、その特定の分野に持っている経営資源を集中的に投入することになります。自動車メーカーでは軽自動車に注力しているスズキやダイハツがニッチャーです。車両自体は他社製ですが独自のデザインで根強いファンを持つ光岡自動車もここに該当します。

・フォロワー

フォロワーは和訳どおりリーダー企業やシェアを多く持つ企業を追従するような戦略をとる企業です。リーダー、チャレンジャー、ニッチャーにも属さない企業はフォロワーとして他社を追従、つまり模倣することで低価格帯戦略や生き残り戦略、あるいは代替品戦略を取ります。上位の企業と比べてブランド力や経営資源が劣っているのでこうした戦略は価格でしか勝負できず収益性が低いことが多くなります。この状況を打破するためには、まずは独自の技術や得意分野でニッチャーになる、または他社と協業するなどが考えられます。フォロワーについては自動車メーカーでこれといった例は無いのですが、一般的には売れている商品を模倣した廉価版のような商品を製造するような企業が該当します。○○に似てるそれっぽい商品などはその典型です。電子機器のアクセサリー類や日用雑貨品などに多い気がします。

いかがでしたでしょうか?
これらの競争地位は階層になっているので、よほどのブレイクスルーがない限りは自社の地位の一つ上の地位を狙って戦略策定することになるケースが多いと思います。ニッチャーやフォロワーがいきなりリーダーになるのが難しいのは想像できますね。まずは自社がどの競争地位にいるのかを設定し、その立場で戦略を考える必要があります。

例えば流通業において近くに大手スーパーがあるとして、そこから徒歩圏内に小さな八百屋を開店して真っ向勝負しても市場で生き残るのは難しいです。フォロワー戦略で安売りしてもジリ貧になるだけです。ニッチャー戦略とすれば何かに特化した専門店として営業し、その商品においては大手スーパーに負けないような戦略をとることが考えられます。
この説明で思い浮かぶのは群馬県前橋市にあった「梅田のバナナ」です。バナナ界ではかなり有名店だったのですが知ってますか?店主の高齢化により惜しくも既に閉店していますが、他店よりも決して安くはない価格設定でバナナ専門店として人気を博していました。大儲けしていたとは思いませんがバナナを売ることについて優位性があったことは間違いありません。創業92年の老舗ということで開店時に競争地位といったような市場原理まで考えていたとは限りませんが、ニッチャーの戦略としてはまさに教科書通りです。

このように自社の経営資源と競争地位を把握し、効果的な戦略を策定していきましょう。

マーケティング 原


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