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薄楽歌集

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短歌を中心にまとめていきます。
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記事一覧

【短歌】花はマリリン 5首

【短歌】花はマリリン 5首

五十年筋の通らぬ世を生きてさくらさく頃の我が身なりけり

解せぬこと云いておんな花にきゆ夢のあさせに残るうきはし

斉加年のトロフィーモフがあらわれかたる午前三時のはなびら

見上ぐればはなびらはなびらマリリンの笑みがきらめく洛北のそら

  行く春を近江の人とおしみける 芭蕉 「猿蓑」
友なくも天守は花に浮かぶらむ近江にくだる春はたけなわ

  ※斉加年・・・米倉斉加年、俳優(1934年ー201

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【短歌】長い橋のある町 5首

【短歌】長い橋のある町 5首

夏からちょっとおかしくなりましたふっくらかわいいお尻よりとメールあり

あの店を右に折れれば長い橋城への道を教えて菊の香

猫ふりかえる石畳 のぼれば島々見ゆる城の丘 彼の地は浜菊の頃なり

ゆく秋のわが城下町ホォーホォーとパン屋過ぎゆく托鉢の雲水

年の瀬に老舗がふたつ店たたむ諸行無常の鐘は西空
#短歌 #現代短歌 #今日の短歌 #短歌連作 #自由律俳句 #菊 #城下町 #ゆく秋

【短歌】ずぶ濡れの少年ジャンプ 5首

【短歌】ずぶ濡れの少年ジャンプ 5首

夏空に打つ音弾むテニスコートもれ出づる君の歯にときめきぬ

地異ありて今日という日の濃紺の水着干しけり列島の果て

朝市の野蛮人が売る蛇苺 謎ひとつ買う半島の旅

雨がザーザー工事現場の昼休みここでしばらく真夏の深海魚

公園のベンチに読み捨てられた少年ジャンプ 土砂降りの雨
#短歌 #現代短歌 #今日の短歌 #短歌連作 #自由律俳句 #少年ジャンプ #朝市 #能登半島 #テニス

【短歌】読みかけのゾラ 5首

【短歌】読みかけのゾラ 5首

沼地に潜む蛇の舌の舐めしアヤメの咲いてる夢の水際

白ければ哀し赤ければ辛し 肌も唇も奪う夏の強さなければ

Tシャツと短パンの君が作る野菜炒めのような工場の夏だ

彷徨えば彷徨うだけの浜の足跡この恋に咲く昼顔という花

苺食みひとりが楽と寡婦笑うハンモックには読みかけのゾラ
#短歌 #現代短歌 #今日の短歌 #短歌連作 #ゾラ #ハンモック #自由律俳句

【短歌】ブルージーンブルー

【短歌】ブルージーンブルー

制服を着せられておはようございます ゼリーみたいね私達たちの朝は

峻別するようなあなたがたの目 媚びるようなあなたがたの目 嫌です

選択肢に答えなしと記し職員室で叱責された放課後のあかあかとした夕日

君のため息がバラ色にみえたときは必ず空模様が怪しくなるほらいなびかり

私は私よ関係ないわ少女Aがスキなこを好きだったああブルージーンブルー
#短歌 #現代短歌 #今日の短歌 #短歌連作 #少

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【短歌】初夏まで 5首

【短歌】初夏まで 5首

筒井筒幼なじみの訃ありてぬばたまの夜のカザルス鳥の歌

燃やした裸婦画と資本論 ゆく春の あの日あの頃の訣別

エイプリルフルーツガムのような恋をして
               五月銀紙に包んでさようなら

アネモネをよくあることではあるんだが君に変える指先のジャム

雨の降らない真昼の縁側の姉のむき出しになった足の小指 初夏なりき
#短歌 #現代短歌 #今日の短歌 #短歌連作 #カザルス  

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【短歌】日々のアポリア 5首

【短歌】日々のアポリア 5首

君に似るひとのいてざわざわとざわめく細胞のイクラ五〇〇グラム

かゆいところにてのとどかない愛のままに君のしたたる春の夜の夢

眠るからだを掻いている妻の手は生きものを生きてリラ香る午

街にレモンを 月日に花瓶を 夕焼けて 妻一輪咲いている

妻孕む二階のまどを春の雲 うるわしき倦怠日々のアポリア
#短歌 #現代短歌 #今日の短歌 #短歌連作

【短歌】花はちりぬるを 5首

【短歌】花はちりぬるを 5首

書き取りし修羅の文字を消してまた書くずる休みの午後の春の修羅

春は君の乳房に受肉し ジュピターとフランスパンと草枕あり

花はちりぬるをかくならではとバイブルを読む君の舌のエロス

謎だらけの草書のこゝろよこの恋は散るなら散れよ花のごとくに

裏切るは裏切るだけの訳ありとさとししひとに手向ける花一輪

【短歌】二十歳の頃 5首

【短歌】二十歳の頃 5首

文庫本の十代は病むこともなく東にも下らず春を解約せり

今日は来ない ふともれたわが言葉にきらめく五月の君の有限

悲しみの丘のてっぺんまで登った先輩二人ほどの毛死する秋

冬の夜の桃の実をもぎ取る知恵も力もあらざるままにわが二十歳

さよならは目と目でおしまい 駅まではいかず降れ降れ春の雪

○ 高校時代は文庫本中毒。もっぱら新潮、たまに角川。岩波は敷居が高かっ
 た。大学は東京へはいかず地方大

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【短歌】冬の記憶 5首

【短歌】冬の記憶 5首

埠頭 入り江 河口 城 冬カモメ そしてぼく 無為なる 反復 
夕焼けの壜の欠片の流離の果ての極東の入り江のこの冬ざれ
いきよりもひくくものをいふひとのゐてしばらくはかんつばきさひてた
紙コップよ冷や酒よ友よ夜よ冬よ哀しみよ 安下宿よ
雪 髪に、睫に、頬に、肩に、清らかに受肉する君なりき

1.少年期の冬はこんな感じ。一日に二度やったこともある。意味の無い行
  ったり来たり。何も目指すでなく、な

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短歌  冬の埠頭 5首

短歌 冬の埠頭 5首

1.「カモメのジョナサン」五木寛之の翻訳でした。高校2年の時、校長先
  生が全校朝礼で絶賛。それで読みました。求道的なはぐれカモメのはな
  しです。埠頭には青春時代からたまに行きます。
2.ガラス壜の欠片が冬ざれてました。
3.せっかく待ち合わせしたのに、妻はなぜか不機嫌。理由はこわくて尋ね
  ませんでした。妻は木枯らし。ぼくは冬ざれ。
4.能面のような美しいひとが昔いました。「草枕」はわが

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短歌 冬の湯呑 5首

短歌 冬の湯呑 5首

妻のいぬ 土曜の午後の初しぐれ。くすぐってみる三毛の脇腹

 薄日さす 海に沿ひたる城下町。知る人の訃ひとつ 冬に入る

 ほのわびしとはこのことか。冬の湯呑の牛乳の皮膜

 窓の外 木枯がいう。別れよと。漱石みたいねマスターの髭

 すべてはなにもなかったごとくに冬紅葉 散るも散らぬも

初冬の無聊からやや恋への展開

短歌 すみれ色の臍 5首

短歌 すみれ色の臍 5首

ありがたき日常のあるおそろしさ。沖縄茶化しにゆく 人もいて

湯上がりの 妻は剥きたてゆで卵。
             「今日は何の日?」「・・・・・・・」

家の戸を 開けてまつ夜の磯は荒れ。越えじと告げた逢坂の関

自由という孤独 孤独という自由 ムスタキの教え。わがしるべなり

清らかな肉欲を感じて 朝の君の おなかのすみれ色の臍