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【珈琲☕化学】コーヒー豆の劣化防止に役立ちそうな化学

今回のNOTEは、コーヒー豆の劣化する原因と、劣化防止のために役立ちそうな方法を私が持っている化学知識の範囲で語ります。どうぞよろしくお願いいたします。

早速ですが、コーヒー豆が劣化する原因としては、次の3つのタイプに大別できます。それぞれについて有効な化学知識、用品を紹介します。

1.湿気
2.紫外線&酸素
3.保存温度

1.湿気には、シリカゲル!(できれば温湿度計も)

コーヒー豆は焙煎する工程で水分が抜けることによって、もともと水分があった場所に空洞ができます。見た目はあまり変わらなくても、拡大すればケーキのスポンジのようなスカスカな状態になっている、というとイメージしやすいかもしれません。そんなコーヒー豆を空気中にさらしておくと、空洞になった部分に湿気が再び入ってしまうので、それを防がなければいけません。

乾燥剤として使えそうな化学用品にはシリカゲルや塩化カルシウム、硫酸などが挙げられます。硫酸は危険物なので候補から外しましょう。残ったシリカゲルと塩化カルシウムは、どちらも日常生活で目にするものです。シリカゲルは食品包装に付属している青と透明のガラス玉です。その表面には無数の細かい穴が開いていて、そのスポットに水分を物理的にキャッチするシステムになっています。

また、塩化カルシウム(略称:塩カル)は橋や道路に降った雪を融かすためによく道端に置かれている土嚢のような袋の中身です。寒い地域では日中でも氷点下になって雪が融けないことがあるので、そういう時は塩カルを撒いて水が氷る温度を0℃未満にして凍結しないようにします。塩カルは水分に触れると化学反応を起こす(とはいっても、水に溶けるだけな)ので、こちらは物理的ではなく化学的に水分をキャッチしていると言えるでしょう。

乾燥剤としての能力は、3つの中で塩化カルシウムが圧倒的に上ですが使い勝手からするとシリカゲルがおすすめです。なぜなら、シリカゲルは単なるガラスなので人体に害がなく、環境に負荷をかけることもなく、また再利用が可能という利点があるからです。

とりわけ、青に着色されているシリカゲルは水分を吸って乾燥能力を失うと色がピンク色に変わります。その時はシリカゲルをレンジでチンしたり、鍋で炒って水分を飛ばします。そうすることで色は再び青く、乾燥能力を取り戻すので、また乾燥剤として使うことができます。

コーヒーマイスターの方に聞いたところ、単に湿気を除去すればいいわけではなく、コーヒー豆の保存に最適な湿度は30%~40%(最適温度は20℃)だそうです。それには、温湿度計を併用するのが良いでしょうね。

2.紫外線&酸素には、暗幕容器とドライアイス!

コーヒー豆は空気中の湿気だけでなく、太陽光や蛍光灯から出ている紫外線に当たったり、酸素に触れると劣化します。そこで、それらに触れないようにする工夫が必要となります。

化学用品の中には、この2つを同時に解決できるデシケーターという便利な保存容器があります。コーヒー豆に適しているのは、上のリンク先にあるような茶褐色をした紫外線を遮断できるデシケーターです。しかし、デシケーターは高価なのがネックなので、その代わりとして黒紙や暗幕を張った水槽やバット、タッパーなどを使うのが良いでしょう。深さと気密性のある容器なら尚良しです。

具体的な方法としては、下の模式図に示すように、まず容器の底に乾燥剤となるシリカゲルを敷き、その上に中板を置いてコーヒー豆を安置します。図ではコーヒー豆を裸で描いていますが、袋詰めしたものをイメージしています。なお、コーヒー袋の横に湿温度計を置いておくとコーヒー豆がどんな状態になっているかがより分かりやすくなります。

それから、容器内の酸素を追い出すために二酸化炭素を入れていきます。二酸化炭素は市販のボンベがありますが、ドライアイスを使う方がガスが暴れないのでおすすめです(図中の二酸化炭素の開閉弁はドライアイスの代わりとしてみてください)。二酸化炭素を扱う場合は、よく換気された部屋でやりましょう。

ドライアイスが昇華して二酸化炭素ガスになると、元々の何十倍の体積に膨れあがるので、実際の使用量は容器の何十分の一の量(少なくともコーヒー豆が二酸化炭素ガスに浸かる量)で事足ります。Amazonで大きなドライアイスを買わなくても、スーパーなどでアイスや冷凍食品を購入した際にもらえる量で充分賄うことができるでしょう。

ドライアイスを容器の隅っこ(=コーヒー豆が急冷して結露しないような離れた場所)に静置し、二酸化炭素ガスになるまで待ちます。この時、容器の中に風を吹いたり、仰いだりすると中のガスが暴れて逃げてしまうので注意しなければいけません。

二酸化炭素は水や空気(酸素・窒素)よりも重たい性質があるので、容器の底から溜まっていきます。すると、容器中にあった湿気や酸素・窒素は二酸化炭素によって徐々に上側へと押し出されていき、下図の水色の雲で示したように容器内は二酸化炭素だけで満たされます。そこに密閉性のあるフタをすれば、コーヒー豆は二酸化炭素に浸かった状態を維持できるので、論理的には通常保存よりも酸化を食い止めることができるはずです。

3.保存温度は、なるべく低く!

焙煎後のコーヒー豆は食べ物と同様、保存温度が高いほど劣化スピードが速くなります。2.の手順でコーヒー豆を密閉した容器は、なるべく冷暗所に置きましょう。必要な場合は、冷蔵庫に収めます。ただし、冷蔵庫に入れる際は急冷によってコーヒー豆に結露しないように注意を払う必要があります。具体的な数値としては、容器内の温湿度を20℃・40%か25℃・30%に保っておけば、冷蔵庫内の温度5℃でも結露は起こりにくくなるので、それらを目安に保存すると良いでしょう。

ちなみに、露点が何℃であるかを調べる方法は下のリンク先のグラフで確かめられます。グラフを見て頭がクラクラするような方は、ここは読み飛ばしてください。ここでやることは2種類の交差点探しです。

グラフ中の(横軸)緑色が温度を、赤色が湿度を、青色が露点を表しています。温湿度計で温度と湿度は分かるので、まずはその2つが交差する点を探しましょう。例えば、先ほど書いた20℃・40%と25℃・30%の交差点はグラフ中央のやや下あたりで同じくらいの高さにそろっていることが分かるかと思います。そして肝心の露点は、それぞれの交差点から真左に移動していった先(=一番左にある赤線にぶつかった点)と青線との交差点、つまり約5℃であるという見方をします。

これまで長々と書いてきた3点を駆使すると、主要な劣化原因からコーヒー豆を守ることができるのではないかと考えていますが、どれほどの効果があるのかやってみないと分かりません。時間があるときに自分で、実際にやってみようと思いますね ٩( 'ω' )و



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