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奈良クラブを100倍楽しむ方法#0
奈良に住んで40年。生まれも育ちも奈良である。小学1年生からサッカーを始め、5年生のときにJリーグが開幕。それまで日陰者のサッカー部が一躍スクールカーストの上位になるという革命的事件を経験した身である。しかし、奈良には致命的な弱点があった。そう、奈良にプロクラブがなかったのである。大阪には大きなチームが二つあり、どちらもスポンサーも太く優勝争いも経験するほどの実力がある。日本代表に選ばれるほどの
もっとみる奈良クラブを100倍楽しむ方法#013 第14節対FC岐阜 ”Get Me Away From Here, I’m Dying"
物事がうまくいかないときというのは、往々にして人間は2パターンの行動をとる。簡単に言うと、これまでしてきたことAを強化したA’という行動をとるか、Aとは全く違うBという行動をとるかである。国民性などもあるが、日本ではA’を採用して自滅するパターンをよく見る。もともと、Aでうまくいっていた時期があれば尚更Aをやめることはできない。Aでうまく行っていた時期にAに割いたリソースを回収しきっていないと考
もっとみる奈良クラブを100倍楽しむ方法#012 第13節対福島ユナイテッドFC ”ブルース”
まだ「春一番」の余韻が身体中を巡っている。出演者全員がお目当てなフェスだったが、なかでも一番は友部正人さんだ。サポートに僕が最近では一番推しているおおはた雄一さんがつくということで、ものすごい組み合わせだなと思っていたが、そのパフォーマンスは思った以上だった。名曲揃いのラインナップのなかで、心に響いたのは割と最近の曲で「ブルース」という曲だった。
この歌詞を延々とリフレインしながら、曲は進ん
奈良クラブを100倍楽しむ方法#011 第12節対FC今治 ”Peace, Love And Understanding”
愛と、平和と、理解 歴史的な勝利となったFC今治戦がロートフィールドで繰り広げられているのに、僕はそこにはいかなった。この日はどうしても「春一番」という関西フォークの野外フェスに行きたかったのだ。チケットを取った時点で、まさかこの日の試合がこんなにも重要になるとは思っていなかった。ごめんよ、奈良クラブ。それほど、かなり重要な一戦だった。
「春一番」コンサートでは僕の好きなアーティストが続々と登場
奈良クラブを100倍楽しむ方法#010 第11節対YSCC横浜 “Man In The Mirror
フットボールを見るのは楽しい。しかし、最初はなにをしているのかわからないと言われることが多い。11人がピッチでごにょごにょと動き回りながら、ボールを取り合いしているだけに見えてしまうのも無理はない。ここに一貫性を持たせようとするときに必要となるのが「戦術」である。これがなかなかに難しいと言われるので、今回は奈良クラブとYSCC横浜の試合を題材に、「戦術」について見ていこう、という回である。スタジ
もっとみる奈良クラブを100倍楽しむ方法#009 第10節対松本山雅 “それはスポットライトではない”
試合終了後、メインスタンドで観戦していた僕は、急ぎゴール裏へ移動した。近くで選手たちの表情を見て、彼らを鼓舞しなければならないと考えたからだ。チームの主将である都並選手は先頭で全員の労をねぎらい、鈴木選手の目には汗ではないものが確認できた。ゴール裏で出迎えた奈良クラブのファンたちは、彼らが死力を尽くしたこと、それでも試合前に期待した結果を得られなかったこと、そして彼らの目は全く死んでいないことを
もっとみる奈良クラブを100倍楽しむ方法#008 第8節対テゲバジャーロ宮崎 “プロバンスの風”
サッカーが好きだというと、「どのサッカーチームが好きなのですか?」という質問が常套句だ。本当はスペインのアスレチック・ビルバオというチームが一番好きなのだけど、それを大真面目に答えると「???」という表情をされる。めんどくさいので「バルセロナです」と答えるようにしている。「ああ、メッシのいるチーム」などという会話になればこっちのものだ。アスレチックの場合はめんどくさい。「スペインにはバスク地方と
もっとみる奈良クラブを100倍楽しむ方法#007 第8節対ツェーゲン金沢 “I Shall Be Released”
1週間と少し前の水曜日、僕はロートフィールド奈良にいた。春分の日だというのに、気温は上がらず、雨、みぞれ、雪、暴風という真冬日と言っても過言ではない天候のなかで、奈良クラブの今期初勝利を見届けたのだった。まさに、命の危険を感じながらの観戦だった。その分喜びは爆発したのだが、「正直、もうしばらく、こういうのは勘弁してよ」という気持ちもあった。
3月最終日、かの天候が嘘だったかのような春の日である
奈良クラブを100倍楽しむ方法#006 第6節対カマタマーレ讃岐 ”恋はいつでもいたいもの”
「サッカーのどこが面白いの?」と聞かれると、みなさんはどうお答えになるだろうか。すごい選手のスーパープレー、戦術の読み解き、推し選手…それぞれに答えが返ってくるだろう。僕の考えるフットボールの魅力、それは「不条理さ」である。フットボールというスポーツは、潜在的に不条理さを内含している。もちろん、どのスポーツにも不条理なことは起こる。しかし、フットボールほど不条理なものはない。むしろ、フットボール
もっとみる奈良クラブを100倍楽しむ方法#005 第5節対ヴァンラーレ八戸 ”Forever young”
今回はまずは結果から先に述べよう。1対0。奈良クラブは今期初勝利を見事に飾った。会心の勝利だった。どの勝利についても、そしてどの敗戦にもそれぞれの物語があり、「ああ、あの時はこんな風だった」と回想できることがスタジアム観戦の素晴らしい部分であり、まさに記憶として語られる部分なのだが、今回ばかりはその中でもトップレベルの試合だったと言える。それは試合後の選手たち、声を枯らして応援したファンたちの表
もっとみる奈良クラブを100倍楽しむ方法 #004 第4節 対大宮 ”マーチ・スカイブルー・ドリーム”
奈良クラブにとって前半戦の一つの山場である大宮戦がやってきた。あのJ1常連だったチームがなぜこんなところで奈良クラブと試合をしているんだ、という驚きと共に諸行無常という言葉もよぎる。僕が少年の頃にヨーロッパのカップ戦を席巻したスペインの古豪デポルティボも今は3部相当のリーグにいる。色々なものが変わっていくのだ。
できればここまでにそれなりに勝ち点を稼いだ上で大宮と対峙したいところであったが、0
奈良クラブを100倍楽しむ方法#003 第3節 対カターレ富山 "Come rain(snow) or come shine"
J3第3節。奈良クラブの相手はカターレ富山である。
昨シーズン、富山は3位、奈良は5位でフィニッシュし、両チームとも昇格を現実的に見据えていること、今シーズン移籍や怪我で得点が課題であること、今期はまだ勝ちがないこと、ホームのユニホームが青基調であること、などなど、いろんな意味で似た境遇の両チーム。一番の違いはホームで強い富山、アウェーで強い奈良クラブ、という対比である。開幕からのアウェー2試合を
奈良クラブを100倍楽しむ方法#002 第2節 対長野パルセイロ
さて、第2節。相手は長野パルセイロである。昨年の結果は2勝でシーズンダブルを達成している相手なので、目標は勝つことのみである。しかし、長野は開幕戦、奈良と同じく黒星スタートなだけに、お互いに「内容よりも勝ちたい」というマインドでの一戦である。
試合前の狙い 長野は前節の琉球と同じく3バックで布陣するため、ここの修正を奈良クラブがどのようにするかが一つのチェックポイントであった。フリアン監督は後
奈良クラブを100倍楽しむ方法#001〜第1節 開幕戦〜
開幕戦である。ホームでの開幕とあって、嫌がおうにも高まる期待。ついにやってきた2024シーズン。緊張感のなかキックオフのホイッスルは鳴らされた。
奈良クラブの昨年度との変更点は両エースの浅川選手と酒井選手を移籍と怪我で欠いていることである。彼ら二人の役割は非常に大きなものがあった。そこをどのように埋め合わせるのか、あるいは別のロジックを組み込むのかが最大の見どころである。
停滞する前半注目のF