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読後感

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本を読んだ感想を書く。洞察力を磨きたい。
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【読後感】小野純一『井筒俊彦:世界と対話する哲学』慶應義塾大学出版会、Kindle版、2023年

【読後感】小野純一『井筒俊彦:世界と対話する哲学』慶應義塾大学出版会、Kindle版、2023年

 小野純一の井筒俊彦論。小野は井筒の経歴だけでなく、井筒哲学を直接解釈して論じている。真っ向から井筒と向き合っている。本書では井筒の『言語と呪術』を皮切りに論じる。「あとがき」にもあるように、著者は井筒を言語哲学者としている。井筒のイスラム思想、老荘思想、仏教、井筒の日本語主著『意識と本質』といった事柄を彼の哲学的言語観を通して著者は語る。そして、著者は井筒の言語を通した自由な思考を考察する。

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【読後感】ソシュール『一般言語学講義』影浦・田中訳(東京大学出版会)

【読後感】ソシュール『一般言語学講義』影浦・田中訳(東京大学出版会)

 ソシュールの言語学の講義録。ソシュールはスイスの言語学者。1857年に生まれ、1913年に亡くなった。ソシュールの思想は彼の講義に出席した学生のノートで知られてきた。中でも、バイイとセシュエが編集し出版された『一般言語学講義』は、近代言語学の確立に大きく貢献し、近代言語学の祖と言われている。だが近年、この講義録はバイイとセシュエがかなり大胆に編集したので、ソシュールの考えの流れを忠実に反映してい

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【読後感】中野信子『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版)

【読後感】中野信子『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版)

 中野信子『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版)をKindle版で読んだ。
 運のいい人を科学的に書いているようなので、本書に興味を持った。私も強運の持ち主になりたいため。
 読みやすかった。運のいい人の共通点を科学的な事実で説明。運は生まれ持ったものではなく、考え方次第で良くなるとの事。意外だったのは、科学を標榜しているのに、祈ることも大切だと書いていること。それによって、運

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【読後感】カント『純粋理性批判』中山元=訳・解説(光文社古典新訳文庫)

【読後感】カント『純粋理性批判』中山元=訳・解説(光文社古典新訳文庫)

(2013.3.15 読了)

 哲学に興味のある人にとって、避けて通れない本がカントの『純粋理性批判』です。カントの代表作です。
 この書名にもある「批判」について触れたいと思います。一般的に批判というと、人の欠点をあげつらい攻撃するイメージがあると思います。ですが、カントの「批判」は違います。「明らかにする」という意味です。人間の理性と感性を明らかにすることです。この人間の存在の基本的な条件の

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【読後感】廣松渉『世界の共同主観的存在構造』(岩波文庫)

【読後感】廣松渉『世界の共同主観的存在構造』(岩波文庫)

 本書は廣松渉の主著の一つ。人間を「共同主観的存在」と見る立場から、認識論の乗り越えと再生を目指した廣松哲学。1972年に書かれた。彼は戦後日本を代表する哲学者の一人。
 本書は大きく前半と後半に分かれる。その前半は、「主観ー客観」図式の閉塞感から始まり、認識論の現象的世界、言語的世界、歴史的世界へと辿ってゆく。
 後半は、共同主観性に触れ、判断の認識論的立場、デュルケーム倫理学説の批判的継承、と

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【読後感】山本芳久『100分de名著:アリストテレス:ニコマコス倫理学』

【読後感】山本芳久『100分de名著:アリストテレス:ニコマコス倫理学』

 山本芳久『100分de名著:アリストテレス:ニコマコス倫理学』(NHK出版)を読んだ。
 本書は山本氏がアリストテレスの著作を解説した。「100分de名著」のシリーズは入門書になると思う。ニコマコスとはアリストテレスの息子の名前で、この名著をまとめたのでその名がついた。

 アリストテレスは古代ギリシアの哲学者。彼はアレキサンダー大王の家庭教師もしていた。二千年ほど前の古代ギリシアで、ソクラテス

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