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窓際従業員、世にはばかる

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ある若い窓際従業員が、窓から外の世界をのぞいてみた。 窓の外は、広かった。
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#市民派

反「市民」の運動論-こたつぬこ(木下ちがや)の『「社会を変えよう」といわれたら』を読む

 twitterでは、こたつぬこというアカウント名で知られ、3.11以後の国会前における社会運動シーンにおいて奮闘した、新進気鋭の社会学者で民医連の事務員でもある木下ちがや氏の『「社会を変えよう」といわれたら』を遅ればせながら読みました。

 最初、読んだときは、社会運動本にありがちな人々の語りに基づいた濃厚かつ克明な記述は乏しく、肩透かしを食らったような気がしました。一般的に社会運動の本はどう

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『ドイツにおける原子力施設反対運動の展開』より気になった点

 たいへん、面白い本を読みました。

 この本の面白いところは、活動家ありがちの「素晴らしい市民意識の高いドイツ人」という描き方をしていないところです。いかにヨーロッパが進んでいて日本が遅れているかというのは、「自虐史観」だな、と思います。

ビュルガーイニシアティブについて
 日本の社会運動の議論では、「住民運動」と「市民運動」は違う意味合いを持って語られてきました。前者が地域に閉じたもの、後者

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歴史になるということ

 歴史という営みは、どの時代まで扱うのだろうか。明治維新以前までだろうか、アジア太平洋戦争の終結までだろうか、冷戦の終結までだろうか、もしくは昨日までだろうか。

 歴史上の人物との関係はどうだろう。徳川慶喜は教科書の中の人物であって、現在を生きる個々人が様々な感情を伴って評価する対象ではないだろう。それでは、小泉純一郎の場合であったら。構造改革の是非、ポピュリズムか否か人々が思い思い語るかもしれ

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政治の終わりを生きて-忘却の淵から立ち上がる

 「政治の終わり」と言われると、保守政治家が権力を私物化したり反動的な政策を施行したりすることだと思う人もいるだろう。また、ある人はアニメ銀河英雄伝説から「政治家が賄賂を取っても、それを批判できない状態」と言うかもしれない。

 この世にはそれなりに経済力のある人で、まじめで比較的社会的な事項に関心があり、勇敢な人がいる。お金持ち全員が自分のことだけを考えている訳じゃない、利他的な人もいる。そのよ

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「コンプライアンス」社会と「脱政治化」

社会調査での明確な権威主義傾向こんな社会調査の結果は枚挙にいとまがない。

 NHKが2014年に1593人を対象に実施した社会調査、ISSP国際比較調査(市民意識)によれば、良い市民であるために重要なこととは何かという設問で「法律や規則を守ること」という項目を重要だと答えた回答が一番多く(83%)、10年前の調査に比べ、4%上昇した。世代別に見るならば、10代後半から20代の回答の増加が大きく6

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「小金井モデル」という困難(4)

  この記事を書こうとしたきっかけは二つであり、一つは立憲民主党の東京のパートナー達は小金井の選挙戦に注目し「小金井モデル」と呼び研究しようとしているらしいということである。もう一つは、同じく立憲民主党の東京のパートナー達から聞いた話だがどうも彼ら彼女らがSNSを過信しているようだということである。これまで書いてきたように小金井モデルはSNSだけで成り立つ話ではなく、また、そのことが、この連載のタ

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何が起こったのか-「小金井モデル」という困難(3)

 この連載の冒頭にも書いた通り、山岸氏と塩村氏の得票率の差は2%である。小金井での取り組みがなければ、隣接する三鷹市や武蔵野市と同じく五分五分であったと推測されるため、市民の取り組みで1%ほどの有権者を動かしたこととなる。では、どのような取り組みがされたのか。

 今回、小金井では山岸一生を高く評価し応援したいと考えた市民達が呼びかけ人となり「チームいっせい@小金井」が結成された。山岸一生を熱烈に

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「市民」というアイデンティティ-「小金井モデル」という困難(2)

 この選挙戦で重要なキーワードは「市民」である。最近の選挙運動では「市民と野党の共闘」という言葉がよく用いられるが、日本の政治・社会運動において「市民」とはどういう思想背景を持ってきたのかをきちんと理解することが、小金井の選挙を理解するうえでとても大切だ。

 ここでいう「市民」はただ住民であることを意味しない。市民とは一つの人間像、ただ地域や地域横断の社会問題に関心があるだけでなく、当事者として

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票を割ることのできない東京・立憲民主党-「小金井モデル」という困難(1)

票を割ることのできない東京・立憲民主党-「小金井モデル」という困難(1)

 立憲民主党の東京都内のパートナーの中では、参議院選挙を振り返り「小金井モデル」というものに注目が集まっているらしい。この連載では小金井モデルについて解説していく。

 立憲民主党は、参議院選挙で以下のように地域ごとの票割を行っていた。

塩村あやか・・・23区(板橋区・豊島区・杉並区・中野区・新宿区を除く)・伊豆諸島・小笠原諸島

山岸一生・・・三多摩・23区の一部(板橋区・豊島区・杉並区・中野

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